著者の柴田トヨさんは90歳を過ぎてから詩の執筆をはじめ、この本はその処女作です。
読んで誰もが驚くのは、著者の感性のみずみずしさ。
NHKのラジオ深夜便「列島インタビュー」で紹介されたり、産経新聞の「朝の詩」で注目を浴びたりと、徐々に人々の間に評判が広まっていきました。
そして著者自身の人生を元にした映画「くじけないで」も製作されています。
このように多くの人の心を動かしたのは、何歳になっても明るい未来を見ている言葉の数々。
まさにタイトルにあるように
- くじけそうになったとき
- 少し気持ちが落ち込んだとき
- なんとなく自信がなくなってしまったとき
- 将来が急に不安になってきたとき
そんな時にこそ彼女の言葉に触れて、少しでも明るい気持ちを受け取って欲しいと思います。
飛鳥新社
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『くじけないで』の概要
出典:Amazon公式サイト
タイトル | くじけないで |
著者 | 柴田トヨ |
出版社 | 飛鳥新社 |
出版日 | 2010年3月17日 |
ジャンル | 詩集 |
本書には著者が詩を書き始めた平成15年から、平成22年までの作品が収録されています。
産経新聞の「朝の詩」に掲載された35点と、下野新聞に掲載された3点の作品、そして未発表だった4点の作品、計42作品による処女詩集です。
『くじけないで』のあらすじ
この詩集には執筆された年月順に作品が収録されており、初期の作品から新しい作品へと読み進める構成になっています。
表題作の「くじけないで」はちょうどその真ん中くらいに掲載されています。
繰り返しテーマとなる「母」や「倅」
全体的に誰かに宛てたタイトルになっている作品が多く、特に「母」と「倅」や、「わたし」と「あなた」に向き合う作品が何度も登場します。
タイトルも言葉選びも非常にシンプルですが、だからこそ胸を打つ言葉になっています。
「老人ホームに
母を訪ねるたび
その帰りは辛かった
私をいつまでも見送る
母」
情景がありありと思い浮かぶからこそ、心にじんと響くものがあります。
何歳でも前を向いて生きる言葉
タイトル作品もそうですが、率直で前向きな言葉が多く読者を励ましてくれます。
「九十二歳の今
目を閉じて見る
ひとときの世界が
とても 楽しい」
「九十を越えた今
一日一日が
とてもいとおしい」
こうした言葉を読んでいると、段々とこんな年齢の重ね方をしたいなと感じてきます。
最後に綴られる著者の軌跡
詩の後に、著者の人生と想いを綴った「朝は必ずやってくる」という文章が載っています。
明治から平成までの約一世紀を振り返り、詩と出会ってから人生を改めてどのように捉えなおし、振り返って見ているのかを語ります。
著者にもたくさんの苦労や辛く悲しい経験がありました。
しかし、詩を書くことを通して、人生はそれだけではないのだと再認識していきます。
「くじけないで」も、読者に対して以上に、著者自身を励ますための言葉でした。
そうして自分自身に言い聞かせながら、毎日を生きています。
「人生、いつだってこれから。だれにも朝は必ずやってくる」
『くじけないで』を読んだ感想
やさしく励ます言葉だけではなく、時々はっとさせられるような言葉があるのもこの詩集の魅力だと思います。
年齢を重ねたからこそ見えている世の中を、とても率直な言葉で捉えていると感じます。
世の中への鋭いまなざし
やさしい中にも時々、目が覚めるような鋭い世間への指摘が垣間見えます。
「私ね 人から
やさしさを貰ったら
心に貯金をしておくの
(中略)
あなたも 今から
積んでおきなさい
年金より
いいわよ」
「断ると 猫撫で声が
不機嫌になって
ガチャリと きれる
楽しい話ばかり
つないでくれる電話
どこかにないかしら」
この世の中をどうしたらもっとよくできるのか、考えることをやめない姿勢。
今の社会で生きることに真っ直ぐ向き合う視線が感じられる詩も多くあります。
目の前の幸せを大事にする
過去に縋ったり感傷に浸るのではなく、今目の前にある幸せをしっかり見ていることが感じられ、それこそが充実して長生きをしていく秘訣なのではないかと感じます。
誰かが自分のためにしてくれること、褒めてくれること、それらを素直に嬉しいと受け取ります。
そして同時に、忘れることの大切さを語っています。
人はどうしても忘れてしまうものだと潔くあきらめて受け入れていく、忘れることによる幸福もまた存在するのだと著者は言います。
素朴だからこそ届く言葉
この詩集が処女作であり、90歳を越えてから詩作を始めたという著者。
技巧や専門知識に頼らない、ありのままの言葉で綴るからこそ万人に届く詩になっています。
日々の生活に根差した言葉や描写。
どのキーワードも暮らしの中に自然と取り込まれており、生活をそっと支えたり、ほんの少し気持ちよくしてくれるものだったりします。
自分の毎日にどこかで楽しみや快適さを与えてくれるものが、実はたくさんあるのだと気づかせてくれるでしょう。
『くじけないで』はどんな人におすすめ?
詩集というと学校でしか触れたことが無かったり、難解な内容なのではないかと尻込みしてしまう人もいるかもしれません。
しかし柴田さんの言葉はどれも読者に寄り添ってくれるやさしい言葉です。
- 今まであまり詩になじみがなかった人
- 自分の人生をもう一度振り返ってみたい人
- 素敵な年の取り方を見習いたい人
これから素敵な詩に出会ってみたい人にも、これまで様々な詩を読んできた人にもおすすめしたい1冊です。
おわりに
日々の生活とその時の気持ちを率直に表現した言葉は、多くの人に共感と気づきを与えてくれます。
- 目の前の些細なことの中に実は幸せがあるのだということ
- どんなに辛いことがあっても人生はそれだけではないということ
- 誰にでも寂しくてどうしようもないときはあるということ
- 人生はいつでもこれからを変えていけるのだということ
柴田さんのやさしい言葉はどれもきれいごとなどではなく、人生経験を通した実感がこもった言葉だからこそ説得力があります。
読んでいると、自分もこんな年齢の重ね方をしたい、こういう感性を持ち続けたい、と感じる部分がたくさんあるでしょう。
人生の大先輩として、また1人のお母さんとして、見習うべきところ満載です。
詩を読むことに慣れていなくても、まずは暖かいおばあちゃんの言葉に耳を傾けるような気持ちで、この本を手に取って頂ければと思います。
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