自由律俳句、と聞いてもピンと来ない人も多いかもしれません。
昔、学校の教科書で種田山頭火の俳句を目にしたことはあるのではないでしょうか?
俳句といえば五七五の音律に沿うものというイメージがあると思いますが、それに囚われずに、まさに自由に表現した句のことを言います。
この俳句集は、文筆家のせきしろと、お笑い芸人のピース又吉直樹の合作です。
といっても単なる俳句集ではなく、写真や短い散文も多く混じっています。
例えるならば、
- 大喜利の答えにしては文学的すぎる一言
- ネタ帳の肥やしにするにはもったいない台詞
- コントの台本にするには演劇っぽい散文
- 散歩の途中で発した風流過ぎる戯言
著者が撮った写真もあいまって、素朴な日常生活の中にある面白い発見をいくつも味わうことができる1冊です。
著:せきしろ, 著:又吉 直樹
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『カキフライが無いなら来なかった』の概要
出典:Amazon公式サイト
タイトル | カキフライが無いなら来なかった |
著者 | せきしろ×又吉直樹 |
出版社 | 幻冬舎文庫 |
出版日 | 2013年10月10日 |
ジャンル | 俳句集 |
せきしろさんはエッセイや小説をはじめ、独特な文体で表現をなさる作家として活動しており、その延長上で自由律俳句も創作している文筆家。
一方の又吉直樹さんはお笑いコンビのピースとして活動され有名になりましたが、芸人として活躍する傍らでエッセイや雑誌のコラム、ブログ記事などで独自の文章表現が話題になっていました。
そんな2人が出会い、意気投合し、せきしろさんが又吉さんに自由律俳句を教える形で始まったのが本書の製作です。
『カキフライが無いなら来なかった』のあらすじ
まるで気ままな目的のない散歩を楽しみながら、日常風景の中で見つけた面白いと感じるものを写真や文章で切り取っているような作品集。
挿絵の代わりに載っている写真も、文章の魅力と引き立て合っていて効果的です。
全体で物語を織りなしているというわけではありませんが、読み終えたときにはどこかふらっと街中へ出掛けて来たような独特の読後感が味わえます。
2人の作家が織りなす自由律俳句
ユーモアセンスたっぷりに日々のちょっとした風景や感情を詠んでいます。
- 二日前の蜜柑の皮が縮んでいる
- 手羽先をそこまでしか食べないのか
- 蚊に刺されるために生きたような日だ
- 阿弥陀くじで決めたことをキャンセル
読者が共感してクスッと笑いが出るような、ほんの少し哀愁を感じるような作品ばかり。
文章に添えられた作者が撮った写真の数々
- 道端にあるよく見ると面白い文章の看板
- 意図がよくわからない注意書き
- 庭先の面白い置物
- 奇妙な形の木々や電線
本当に散歩道での発見を撮りためたような写真ですが、それが作品の内容や雰囲気と合っているのがまた面白いです。
短編小説よりも短い散文作品
自由律俳句を詠んだ後にそれに関連する文章が続いていたり、別の作品だったり。
コントにするには短すぎても、文章で読むと面白い内容。
エッセイと言うにも短いけれど、その中にぎゅっとユーモアと感傷が詰まっている。
そんな独特なセンスの文章作品も俳句と並んで所々に挟まれています。
『カキフライが無いなら来なかった』を読んだ感想
笑いと哀愁が同時に訪れる不思議な感覚。
面白いと思って読みながらも、なんだか共感を抱いて感傷的な気分になることもある。
独特な読書体験がくせになって、ついつい読む手が進んでいきます。
どこからどう読んでもいい
一般的な小説や評論、エッセイなどはページの前から後ろに向かって読んでいくものです。
しかし本書は俳句集なので、どこから読んでも大丈夫。
その日の気分でぱらっとめくったページで目に止まった作品を楽しむ、なんてこともできます。
自分も散歩がしたくなる
読んでいると気軽に散歩に出かけているような感覚になれるため、自分も少し散歩してみようかなという気分になれます。
同様に、
- 自分も少し気軽な気持ちで俳句を詠んでみようかな
- ちょっとしたものでもいいから写真に撮ってみようかな
- 起承転結なんてないけど思いついた文章を書いてみようかな
というように、読後になにかやってみたくなるところも本書の魅力です。
俳句の敷居がいい意味で下げられる
俳句というと季語や文字数など、決まりごとが多いのではないかと思って敷居が高く感じている方は多いのではないでしょうか。
しかし、自由律俳句にはそうした制限はほとんどありません。
本書はもっと俳句のことを身近に感じられるきっかけになれると思います。
『カキフライが無いなら来なかった』はどんな人におすすめ?
この本は次のような人におすすめです。
- お笑いが好きな人
- 俳句に興味がある人
- 軽くて面白い文章が読みたい人
俳句に詳しくない人でも、親しみがない人でも、この本であれば気楽に読むことができます。
文字も大きくてページ毎の作品数も多くないので、ストレスなく読むことができるでしょう。
また、全体が物語になっているわけではないので、好きなところを好きなだけ読めるのは嬉しいところ。
例えば、少し長い散文は飛ばして、俳句だけの拾い読みでも大丈夫。
あくまで楽しく、気ままに読める作品集です。
おわりに|言葉遊びの散歩に読者も出かけてみたくなる一冊
表紙やタイトルに惹かれて、ふと手に取って読んでみる。
この本はそれくらい気ままに触れてみるのがちょうどいいのではないかと思います。
俳句だから、と肩肘を張るような必要はどこにもありません。
普段あまり親しみのないジャンルだなと思うかもしれませんが、書いてある内容は非常に日常的で、庶民的で、共感できる部分が1つくらいはあるはず。
普段エッセイやお笑いを楽しんでいる人には特に読みやすいのではないでしょうか。
読みながらちょっと笑えたり、昔を思い出してなんだか感傷的になったり、ちょっとしたことに背中を押されて前向きになれたり。
短い言葉の中には、たくさんの要素が詰め込まれています。
この本を読んでみて、何か自分でもやってみたい、書いてみたいと思ったなら、ぜひ挑戦してみてほしいです。
著:せきしろ, 著:又吉 直樹
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