今なお多くのファンから愛される作家、星新一。
『ショートショートの神様』と呼ばれ、多くの作品を世に残していきました。
時代を超えて愛される作家、星新一の作品『ボッコちゃん』を今回ご紹介したいと思います。
タイトルのボッコちゃんをはじめ、50もの短編が詰め込まれた今作。
50と聞くと、かなりの数ですが、一つ一つの話のクオリティーは非常に高いです。
この記事を読んでいただいた後、『ボッコちゃん』だけでなく、星新一が描くショートショートにも興味を持っていただければ幸いです。
著:星 新一
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『ボッコちゃん』の概要
出典:Amazon公式サイト
タイトル | ボッコちゃん |
著者 | 星新一 |
出版社 | 新潮社 |
出版日 | 1971年5月25日 |
ジャンル | SF・ホラー等の短編小説 |
『ショートショートの神様』星新一。
今作を読めば、なぜ星新一がそのように呼ばれているのか、その理由がわかるかと思います。
星新一の作品を読んだことのない人にとっては、名刺代わりの一冊になるのではないでしょうか。
『ボッコちゃん』のあらすじ
50話も収録されている今作。
今回はその中から個人的に面白いと感じた3話をご紹介したいと思います。
ホラーテイストのものや、メッセージ性の強い作品になっています。
ボッコちゃん
バーのマスターによって作られたロボット、ボッコちゃん。
趣味で作られたロボットですが、外見は完全に人間でかつ美人です。
受け答えは少ししかできませんが、お店に置いたところ、ボッコちゃん目当ての客が増えていきます。
その中の一人の青年はボッコちゃんへの恋心が高まって、ある行動を起こします。
果たしてその結末は…。
マネー・エイジ
あらゆる物事がお金で解決できるようになった世の中。
なんて人間味のない世界なんでしょうか。
ですが、それで世界が良く回るのならどうでしょうか。
『マネー・エイジ』はすべてがお金で解決できるようになった世界のお話です。
社会生活の面だけでなく、家族間の問題もお金で解決可能。
あなたはそんな世界どう思いますか。
読み終えた後、その答えが出ていればいいのですが…。
最後の地球人
人口の増加が止まらない世界が舞台のお話です。
どれだけ科学が進歩してもその問題を解決することはできませんでした。
ある現象の発生により、奇跡的にその問題は解決していきますが、それは果たして良い結果をもたらすのでしょうか…。
『ボッコちゃん』を読んだ感想
3つの話のあらすじをご紹介しましたが、ここでそれらの話の感想をお話しします。
3つともニュアンスが異なる物語りですが、それだけに違った見方ができます。
短編ながらも多様な作品作りができるという意味で、星新一の作家としてのレベルの高さを改めて実感しました。
ボッコちゃん 想像力が駆り立てる怖さ……
マスターの趣味から作られたボッコちゃん。
店に来る客はロボットであることを知らず、お店の女の子として接していました。
ボッコちゃんの存在は間違いなく店にとってはプラスなはず。
ですが物語の結末を知れば、その考えは消え去るでしょう。
私はこの話を読んで恐怖を感じました。
可愛い女の子のロボット。
ではなく、彼女は死神では?
そう思わざるをえなくなりました。
想像力をフルに働かせて読んでみてください。
そうすればあなたも恐怖を感じるはず…。
マネー・エイジ どんな夢を見ているのだろうか?
この世界の在り方について考えさせられました。
このお話は「私」という少女の一人称で、物語りが展開されます。
純粋な子供という存在を通じて、知る歪な世界(小説上の)。
物語りの中で少女は、昔の子供はどんな夢を見ていたのか、そして未来の子供たちはどんな夢を見ているのか、ふと疑問を抱きます。
価値観や社会の在り方なんて時代によって変わってしまう。
このお話のお金がすべての問題を解決できてしまう社会、それはいずれやって来るかも。
いや、もしかしたら知らないところでもう始まっているのかも。
そんなことを思わざる得ませんでした。
最後の地球人 最後に変化球が…!
全50話の最後の話はまさかの変化球。
50話目まで寓話、風刺、SF、ファンタジー、サスペンス要素の話がメインで、最後の最後で全くニュアンスの違う話が出てきました。
SF要素がベースにはなっているものの、この話は明らかに他の物語りと一線を画しています。感動すら覚えました!
タイトルの最後の地球人はこれからどうするのか!?
一瞬続きが見たいと思いましたが、それは野暮な考えでした。
ここで終わるからこそ良い。
そんなショート・ショートの魅力を再確認できました。
『ボッコちゃん』はどんな人におすすめ?
50話の中から3つをピックアップしてご紹介しましたが、その3つ以外にも面白い作品が収録されています。
そのことも踏まえて、この本はどんな人におすすめしたいのかというと…
- 長編小説を読むのに疲れた人
- 必ずしもハッピーエンドを望まない人
- 人間の黒い部分を見たい人
いざ長編小説を読もうとしても、結末を知るまでの道のりは長いです。
中には読み疲れて途中でリタイアすることもあるのではないでしょうか。
ですが短編小説なら途中でリタイアすることは少ないかと思います。
それに加え、星新一の短編集は起承転結の質が高く、たとえ2ページ程の話でも長編小説1冊分のクオリティーがあります。
しかも必ずしもハッピーエンドではありません。
どちらかというとバッドエンドの方が多いです。
ですがそこが『ボッコちゃん』、星新一の描くストーリーの良いところで、人間の黒い部分をシンプルに表現しています。
愛や友情などの人間の陽の部分を見飽きたなら、本作を通じて陰に触れてみてください。
おわりに|人間は醜い。けれども可能性と希望を持っている!
全体を通して考えると、今作は
それらを通じて人間の黒い部分を掘り返すような話の集まりかと思いきや、『最後の地球人』では、人間は可能性と希望に満ちていることを訴えかけているように感じました。
そんな暗くも明るい今作『ボッコちゃん』。
興味を持たれた方はぜひ一度読んでみてください。
読んで「面白い」と思っていただければ、星新一ファンとしてとても嬉しいです!
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