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『こころ』感想|人生の悲劇を目の当たりにする近代文学の代表的名作
夏目漱石の代表的な名作、『こころ』を読んだことはありますか? 授業で読んだことがあったり、読んでいなくても名前を知っていたりするかもしれませんね。 有名な作品ですが、意外と「読んだことがない」「途中で読むのを辞めてしまった」という声を聞い... -
『図書室』の感想|思い出すのはセピア色の時間
老いを意識することはあっても、生活にこれといった不安もなく一人暮らしをしている50代の女性。 ある雨の日曜日。 ぼんやりとしながらコーヒーを淹れていると昔のことが目に浮かんできます。 母のこと、猫たちのこと、図書室であった少年と地球の終わり。... -
『推し、燃ゆ』感想|「推し」の炎上が少女にもたらす変化とは
"推しが燃えた。" そんなセンセーショナルな一文から始まる小説『推し、燃ゆ』。 第164回芥川賞を受賞したことでも話題となったこちらの作品は、「推しの炎上」という現代的なテーマを扱った小説でもあります。 身近な話題である「推し」が、純文学的な文... -
『楽園のカンヴァス』感想|アートを堪能できる珠玉のミステリー
アンリ・ルソーの『夢』という作品を知っていますか? この原田マハさん原作の『楽園のカンヴァス』の表紙になっている絵のことです。 深い緑の熱帯雨林の中に横たわる女性の絵。 わたしはファンタジックで可愛らしい絵と感じました。 とても、一つ一つの... -
『終末のフール』感想|地球滅亡が迫る世で、わたし達はどう生きるのか。仙台のとある団地で暮らす人々の終末の過ごし方
『終末のフール』は、2006年3月に刊行された連作短編集です。 著者は伊坂幸太郎さん。 伊坂さんの作品はどれも人気が高く、読書好きなら誰もが知る日本を代表する作家のお一人です。 『重力ピエロ』や『ゴールデンスランバー』など、多くの小説が映画化さ... -
『舟を編む』感想|きっとあなたも言葉の大海原に魅せられる
ここ最近、辞書を引いて言葉の意味について調べたことはありますか? 仕事や勉強などで辞書を使うとき、今はネットで調べる方が多いかもしれませんね。 また、辞書を引くという行動は、子どもの時以来していないという方もいるかもしれません。 しかし、辞... -
『新参者』感想|日本橋人形町を舞台にした刑事加賀恭一郎シリーズ第8弾
新しく日本橋にやってきた刑事、加賀恭一郎。 加賀は、まだ全く知らないこの土地をまずよく見ることから始めます。 この小説を読んでいると、日本橋人形町という町の生き生きとした情景が目に浮かび、お店の佇まいやそこに暮らす人たちの声が聞こえてきそ... -
『ひらいて』感想|女子高生の溢れる自意識を生々しく描いた青春小説
“いつの間に私の「青春時代」は終わりを迎えていたのだろう。” “鋭い感性で世界を見ていた危なっかしい私はどこに消えたのだろう。” 誰の心の中にもある、若さ故の痛々しい記憶とほろ苦くリンクする綿矢りささんの小説『ひらいて』をご紹介します。 【『ひ... -
『ウエハースの椅子』感想|江國香織による歪んだ宝石箱のような人生
天気の良い昼間、バスタブにお湯と冷水ともつかない生ぬるい水を張ってただぼうっとするだけのような時間を過ごしたことがありますか? それはとても居心地がよくて、世界の時間が止まったような錯覚にさえ陥りそうになる、そんな空間です。 江國香織の『... -
『そして、バトンは渡された』感想|「幸せ」の形の多様性
この作品は、血のつながらない大人の間をたらいまわしにされながら育った女の子の物語です。 このように書くと、非常に悲惨な境遇の女の子の」可哀想な物語なのだと感じるかもしれません。 しかし実際は、主人公の出だしの言葉である「困った。全然不幸で...