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『マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ』感想|疲れた心をそっと癒やしてくれるお守りの一冊
人は、いろいろな悩みを抱えています。 「がんばっているのに報われない」「このままでいいのか?」「あの人が羨ましい・・・・」 そんな心のモヤモヤを抱えたとき、「そんなあなたでも大丈夫だよ」「みんなおなじ悩みを抱えてるよ」そう言って励ましてく... -
『さみしくなったら名前を呼んで』感想|すべての女の子に捧げる宝石箱
さみしいとか悲しいとか切ないとか、そんなのを感じる心のひだが、全部なくなればいいのにー 切実な心の叫びを表現する痛々しくも瑞々しい文章は、すべての女の人、いやすべての女の子たちに捧げられたものです。 映画化された『あの子は貴族』の著者であ... -
『卵の緒』感想|瀬尾まいこが描く家族の絆は、優しくて少しせつない。
僕は捨て子だ。子どもはみんなそういうことを言いたがるものらしいけど、僕の場合は本当にそうだから深刻なのだ。 こんな文章で始まる『卵の緒』は、小学生の男の子とその母親の絆を描いた心温まる物語。 何やら深刻な話なのか、と思いきや、快活な母親と... -
『凍りのくじら』感想|孤独を抱える全ての人へ。少し不思議な青春小説。
白く凍った海の中に沈んでいくくじらを見たことがあるだろうか。 冒頭、こんな文章で物語は始まります。 孤独で、助かることはないそのくじらの映像を、じっと見ている少女がいました。 この物語の主人公は、周りに本当の自分を見せることを極端に嫌がり、... -
『マチネの終わりに』感想|平野啓一郎による哀しくも美しい大人の恋愛
「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?」 平野啓一郎さんの『マチネの終わり... -
『むらさきのスカートの女』感想|滑稽かつユニークな筆致で綴られる静かな狂気
この作品はむらさきのスカートをよく着用している変わり者の女性と友達になりたい「わたし」の一人称で綴られる物語となっています。 「わたし」は友達になるためにひたすら紫のスカートの女の生活や言動を観察しているだけという一風変わった不思議な物語... -
『滅びの前のシャングリラ』感想|世界が滅亡する前だからこそ訪れた理想郷
これは一ケ月後に小惑星が落ちてきて人類は滅亡する、そう宣告されてからの4人の人物の物語です。 一ケ月後には人類が全員死んでしまうのですから、日本も社会の秩序は崩壊し、食糧や物資をめぐっての暴力や殺人が当たり前となる殺伐とした世界とな... -
『空飛ぶ馬』感想|謎は日常にあり。名探偵は「私」の憧れる師匠でした。
謎解きを題材にした小説は数多く存在しますが、これほど爽やかに謎を解く物語は他にありません。 殺人や多くの人が悲しむような事件が起こらなくても、日常に目を向けると、そこにはささやかな謎が存在します。 主人公の「私」は、とても気持ちのいい性格... -
『阪急電車』感想|阪急今津線の”何とも言えないほのぼの感”を楽しむことができる
関西圏では大きな私鉄グループとなる阪急。 えんじ色の車体に、レトロな内装となっており、鉄道マニア・若い女性・観光客から高い人気を得ています。 阪急宝塚駅は、大阪梅田駅へ直接向かう宝塚線と、西宮北口で神戸線へ連結する今津線が”人”の形に合流し... -
『小さなスプーンおばさん』感想|怖いものは、もう何もない。
もしも、自分の体がティースプーンくらいの大きさに縮んでしまったら、 あなたならどうしますか? 『小さなスプーンおばさん』は、その名の通り、突然体が小さくなってしまうおばさんの物語です。 おばさんは、小さくなっても、特に慌てることはありません...