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『孤島の鬼』感想|江戸川乱歩の考える愛とはなんだったのか
「まあ初恋といっていいのは、十五歳の時でした。(中略)それが実にプラトニックで、熱烈で、僕の一生の恋が、その同性に対してみんな使いつくされてしまったかの観があるのです。(後略)」 これは、日本の探偵小説の祖とされる江戸川乱歩の言葉です。 ... -
『ひだまり』感想|名作を更新する新たな愛と死の物語
「愛と死」というものは何であるのか、言葉として理解することはとても難しいと思います。 考えたところで、ボンヤリとしか浮かばず、言葉にして説明することはできない。 それが多くの人の共通した認識ではないでしょうか。 そんな「愛と死」という... -
『ノルウェイの森』感想| 純粋な愛とその喪失の中に描かれたものとは
村上春樹の代表作でもあり、彼を世に知らしめるきっかけとなった作品が、今回紹介する 『ノルウェイの森』です。今作品では、「生と死」という根源的なテーマのもとに、大学生の恋愛が描かれています。 多くの人は、恋愛あるいは死によって大切な人を失う... -
『いちご同盟』感想|命の儚さと尊さを描いた青春小説
どこからともかくピアノの調べが聞こえてきそうな繊細で透明感のある物語、いちご同盟。15歳の主人公が、1人の少女との出会いを通じて命の儚さと尊さを知る青春小説です。 タイトルに「いちご」が入っていますが、物語に苺(いちご)は出てきません。 良一... -
『少年と犬』の感想|傷ついた人間に静かに寄り添ってくれる最良のパートナー
「人の心を理解し、人に寄り添ってくれる。こんな動物は他にはいない」 これはある登場人物の言葉ですが、この物語がどのようなものかを表すにはこれほど適切な言葉はないでしょう。 愛犬家としても知られる作者、馳星周さん。1996年に『不夜城』にてデビ... -
『冒険者たち』感想|勇気、友情、切ない恋、小さなねずみ達の冒険活劇
今回ご紹介する『冒険者たち~ガンバと十五ひきの仲間』は1975年にアニメ化され、その後も長年にわたり複数のアニメ映画が製作され続けている児童文学です。 他にも劇団四季によってミュージカル化されるなど、約半世紀にわたり愛されてきました。 しかし... -
『コンビニ人間』感想|自分を貫くことの難しさ、そしてその尊さを教えてくれる
第155回芥川賞を受賞した『コンビニ人間』は、2016年7月末に単行本として刊行されてから、爆発的な売り上げをみせた大ヒット小説であり、多くの読者に衝撃を与えた作品です。 物語の舞台は、今や私たちの生活に必要不可欠となったコンビニエンスストアです... -
『一千一秒物語』感想|奇抜なユーモアと乾いた文体が今でも新しい
月夜の晩にステッキを持って散歩に出る紳士。空を見上げると箒星(ほうきぼし)がスッと流れて消えていった・・・。 こんなシーンが出てくるとまるでメルヘンのようにも感じますが、『一千一秒物語』はメルヘンから遠く離れた星で書かれたような短編です。... -
『ツバキ文具店』感想|小川糸が綴る代書屋をとりまく人々の思念
人のあたたかさ、つめたさ。 ふとそういったものに触れたくなることはありませんか? 小川糸さんが綴る鎌倉での物語『ツバキ文具店』はそんな些細な心の穴を埋めてくれます。 人々の想いを受け取り代わりに届けることを仕事とする主人公、そんな主人公と友... -
『十二国記』感想|『月の影 影の海』から読む〝生きる〟強さ
「十二国記シリーズ」は異界にある十二国での出来事について記した小野不由美先生によるファンタジー小説です。 記念すべき第一作である『月の影 影の海』は、至って平凡な日常を送っていた女子高生・陽子(ようこ)がケイキと名乗る謎の男に異界《十二国...