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『少年と犬』の感想|傷ついた人間に静かに寄り添ってくれる最良のパートナー

「人の心を理解し、人に寄り添ってくれる。こんな動物は他にはいない」

これはある登場人物の言葉ですが、この物語がどのようなものかを表すにはこれほど適切な言葉はないでしょう。

愛犬家としても知られる作者、馳星周さん。1996年に『不夜城』にてデビュー、当時のベストセラーとなりました。以後何度も直木賞候補作を生み出し、7度目のノミネートとなる今作にて163回直木賞を受賞されています。

どちらかというとダークな世界観を得意とされている馳星周さんですが、今作はその世界観を犬への愛情の中に少しばかりのスパイスとして盛り込み、見事な群像劇として見せてくれます。

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『少年と犬』の概要

出典:Amazon公式サイト

タイトル少年と犬
著者馳星周
出版社文藝春秋 
出版日2020年5月15日
ジャンル現代群像劇

「不夜城」に代表されるように暗黒社会の闇を描いた小説を数多く発表されてきた馳星周さんですが、年に愛犬との生活とその幸せについて描いた小説「ソウルメイト」を発表されます。

これは自身でも「ぼくの転換期」とおっしゃられる作品となっています。

老犬となった愛犬のために軽井沢への移住も決意されるほど愛犬家の馳星周さん。

「ソウルメイト」を得て満を持して執筆された犬への愛に溢れた「少年と犬」、愛犬家の方だけでなく心が疲れた現代日本人すべての人におすすめできる一冊です。

『少年と犬』のあらすじ

ある一匹の同じ犬と共に暮らした人間たちの目線から描かれる6つの短編小説からなる群像劇。

人間たちはそれぞれ心に傷を抱えており、静かに寄り添ってくれるその犬と過ごすことにより変化が起きていきます。

犯罪に手を染めるもの

6つの短編の内3つの主人公が犯罪に関わっています。

家族のために犯罪の片棒を担ぐもの、生きるために日本へ渡り窃盗を繰り返すもの、どん底の人生の中で殺人を犯してしまったもの。

それぞれさまざまな理由や思惑があり犯罪に手を染めているのですが、そんな彼らもその犬と共に過ごすうちに心情に変化が起き、それぞれの結末に向かって自らの足で歩み始めることができるのです。

人生の方向性を見失うもの

6つの短編のうち2つの短編は人生の方向性を見失っている人々のお話です。

昔は正しいと信じていた自分の選択に今になって後悔を感じ寂しさや孤独に対面しています。

そうして彼らも一匹の犬に出会い、自分自身の心と改めて向き合っていきます。

あまりにまっすぐで美しいもの

そして最後の物語は、これまで誰かの支えとなってきた犬自身の物語となっています。

とはいえやはり一人称は人間であり、我々はその人物の目線で犬の素性や目的を知っていくことになります。

そうして描かれる真実や結末はあまりにまっすぐすぎる美しいものでした。

『少年と犬』を読んだ感想

それぞれの物語に大きな展開はありません。

悪魔が現れて戦うわけでもなく戦争が起こるわけでもなく隕石が降ってくるわけでもありません。

しかし、犬と過ごすうちに現れる心の変化の描き方は静かでありながら繊細で見ごたえがたっぷりです。

身勝手な人間たち

短編は犬を拾った人間の一人称で綴られていきます。そのため読者からは犬の気持ちはその主人公のフィルターを通したものとなります。

この犬には実はある目的があるのですが、各主人公はもちろんそれを知るすべはありません。

本来ならこの犬は自分の目的の為ならその人間を見捨てて旅立つことができるのですが、決してそうしようとはしません。

それぞれの人間の傷ついた心をさまざまな形で癒してくれるのです。

心の成長と癒し

ではこの犬が人間たちに何をしてくれるのか。実のところ犬はただその人間と「共に居てくれる」だけです。

しかしこの「ただ共に居てくれるだけ」がなんとも得がたく尊いものか。慰めの言葉をかけることもなければ何かをアドバイスするわけでもありません。

ただ、傷ついた人間の傍にいてくれる。

それにより各主人公たちの心や環境には変化が訪れます。心の支えを得た人間は自らで心を癒し成長していけるのだ、この本はそんな勇気を得ることが出来ました。

無償の愛

この物語には2つの大震災が大きく関わっております。それにより犬自身も傷つき、頼るべき飼い主を失い、被災しているのです。

しかしある目的のために遠い地に向かって旅を続けています。

短編から短編へ。各主人公たちに寄り添い、心の支えとなり、生きる道しるべとなりながら、簡単には行かない旅路を続けています。

そんな彼女の人生、いや犬生も最後の短編で決着を迎えます。ぜひ、ご自身の目でお確かめください。

『少年と犬』はどんな人におすすめ?

愛犬家である馳星周さんの犬への愛が詰まった本作であるため、犬を飼っている人には間違いなくおすすめできます。

また、それだけでなく犬を飼うことを迷っている人にも是非読んでもらいたい一冊です。

  • 犬を飼っている人
  • 犬を飼うことを迷っている人
  • 時間がないが物語が楽しみたい人

 「人の心を理解し、人に寄り添ってくれる。こんな動物は他にはいない」

表紙をめくればすぐに目に飛び込んでくるこの一文、これが全てを表しているといっても過言ではないのです。

 また、この本は短編小説としても優秀です。

一編の起承転結がはっきりしておりそのお話単体で読み進めることが出来ます。そのため一気に読み進める必要がありません。

一編ずつ読破していき、しかし最後の物語を呼んだ瞬間に長編小説を読み終えたかのような読了感を得ることのできる仕掛けがあるため、時間がないが物語自体を楽しみたい人にもおすすめの一冊と言えるでしょう。

おわりに

現代は空前のペットブームが到来しているともいわれています。少子化や核家族化の影響もありペットを飼っている人も多いでしょう。

そして相次ぐ震災に感染病など、心が疲れている方も多いのではないでしょうか。

まさにそんな現代だからこそこの本を必要とする人が多く、直木賞を受賞したのかもしれませんね。

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