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『ぼくの小鳥ちゃん』感想|劇薬のように寂しく、砂糖菓子のように甘い小さな物語
絵本は基本的に子供が読むものですが、もちろん大人だって読んでもかまいません。 最近は大人向けの絵本だってあるくらいですから。 でも、たとえば”絵本のような小説”があったならば……? 中身も子供向けのようにわかりやすい構成や文章ではなくて、大人向... -
『号泣する準備はできていた』感想|悲しみを抱いて未来を見渡す強い女性たち
他の女と寝てしまった、と隆志が私に謝ったとき、私は泣くべきだったのかもしれない。私の心臓はあのとき一部分はっきり死んだと思う。さびしさのあまりねじ切れて。 あらゆる女性たちのありふれた恋愛たちは、私があなたが、未来のどこかで出会う、あるい... -
『間宮兄弟』感想|仲のいい兄弟の毎日に小さな幸せが詰まっている
『間宮兄弟』は、2004年に単行本として出版されたあと、2006年に映画化もされ話題となった作品です。 兄弟も大人になると一緒に出掛けたりすることも少なくなり、家族のもとを離れ一人で暮らす人も多いですよね。 そんな中、いつまでたっても子どものよう... -
『きらきらひかる』感想|異質なふたりはただ純粋に恋をし愛を求める
純愛とは、ひたむきな愛のことを言うそうです。 それの定義は人によって異なるとは思いますが、辞書の言う通りだとすればこの物語は紛れもなく純愛小説でしょう。 痛々しいくらいの純度をもって他人を愛し、信じ、そうして暮らしていく。 どこにでもいるご... -
『つめたいよるに』感想|10ページ前後で創られる美しく不気味な世界は江國香織にしか書けない短編集
世界は広い、とはよく言いますがあまりピンとこない人も多いのではないでしょうか。 わたしもそのひとりで、この本はそんなわたしに世界の乱雑さと美しさ、そしてそれがいかに狭いかを教えてくれました。 ひとつのお話がたったの10ページ前後、そのため話... -
『ウエハースの椅子』感想|江國香織による歪んだ宝石箱のような人生
天気の良い昼間、バスタブにお湯と冷水ともつかない生ぬるい水を張ってただぼうっとするだけのような時間を過ごしたことがありますか? それはとても居心地がよくて、世界の時間が止まったような錯覚にさえ陥りそうになる、そんな空間です。 江國香織の『...
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