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『ベルリンは晴れているか』感想|紺碧の青空を見上げる少女と戦争の物語
1942年のドイツを舞台にした三つ編みの少女・アウグステの視点で描かれる戦争の悲惨さ、切なさ。 そして、音楽家であるフロレンツを殺したのは誰なのか、という謎が冒頭に提示され、読者に疑問を抱かせた状態でこの物語は進んでいきます。 本当に、アウグ... -
『とおるがとおる』感想|単純そうで奥が深い、谷川俊太郎の世界。
『とおるがとおる』という全く予想が付かないタイトルと絵に、いろいろ想像しながら手にとってみた小学生の頃、あれから30年近く経った今でもなお印象深く残っている絵本です。 とおるくんというごくごく普通の小学生がごくごく普通の毎日のなかで、疑問に... -
『星の子』感想|信じるものを自分で選んでいくこと
家族は、生まれたときからそばにあるもの。自分で選ぶことができないものです。 だからこそ、家族の違和に気づくのは、外の世界と関わりを持ってからになることが多いもの。 自分では普通だと思っていたことが、実は普通ではなかった経験をしたことのある... -
『極悪鳥になる夢を見る』感想|貴志祐介の頭の中が全て見える初エッセイ集
ホラー、ミステリー、SFなど幅広いジャンルの作品で活躍されている「貴志祐介」さん。 映像化された『黒い家』『悪の教典』『新世界より』『鍵のかかった部屋』などは特に有名で、ベストセラー小説となっています。 『極悪鳥になる夢を見る』は、そんな貴... -
『号泣する準備はできていた』感想|悲しみを抱いて未来を見渡す強い女性たち
他の女と寝てしまった、と隆志が私に謝ったとき、私は泣くべきだったのかもしれない。私の心臓はあのとき一部分はっきり死んだと思う。さびしさのあまりねじ切れて。 あらゆる女性たちのありふれた恋愛たちは、私があなたが、未来のどこかで出会う、あるい... -
『アフターダーク』感想|たどり着いた先は深夜の街、迎え入れるのは鈍い光
私たちが眠っているあいだ、世界は、街がは、どのようにしているのでしょうか。 深夜は大多数の人たちが眠っており、外の様子を知る者はそう多くはいません。 深夜にしか開かない店や、深夜にしか見られないもの、深夜にしか会えない人がきっといます。 行... -
『ふたつのしるし』感想|ふたりのハルは出会うべくして出会った
この人と出会うために生まれてきた。 あなたには、そう感じられる出会いがあるでしょうか。 人生は人との出会いによって紡がれていきます。 当たり前でありながら忘れがちなことを、あたたかく柔らかい文体で描いていくのが、この『ふたつのしるし』です。... -
『みずうみ』感想|傷ついた魂を再生させるためにふたりは歩き出す
生きることの孤独さ、寂しさ、そして他人と関わることのあたたかさ。 この本は存在をもってしてそのことを伝えてくれます。 心に傷を持つ登場人物たちの生き方、話、そのなかに見えてくる吉本ばななが言いたいこと……。 どうしようもなく孤独である人間の人... -
『鹿男あをによし』感想|奇想天外な青春歴史ファンタジー
『鹿男あをによし』は、『プリンセス・トヨトミ』や『鴨川ホルモー』などで知られる「万城目学」さんの歴史ファンタジー小説です。 第137回直木賞候補にもなり、2008年には玉木宏さん・綾瀬はるかさん出演でテレビドラマ化もされているので、目にしたこと... -
『鉄道員』感想|やさしい奇蹟が降りかかるのは大切なあの人たち
奇蹟を信じますか? 一般的に言う奇跡と〈奇蹟〉では意味がちがいます。 奇跡とは理屈などでは説明ができない不思議な現象のことで、〈奇蹟〉とは神が意思を持ち起こしたとされる自然現象のこと。 そしてこの短編集に限ってはすべてが〈奇蹟〉のうえに成り...