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『ベルリンは晴れているか』感想|紺碧の青空を見上げる少女と戦争の物語

1942年のドイツを舞台にした三つ編みの少女・アウグステの視点で描かれる戦争の悲惨さ、切なさ。

そして、音楽家であるフロレンツを殺したのは誰なのか、という謎が冒頭に提示され、読者に疑問を抱かせた状態でこの物語は進んでいきます。

本当に、アウグステが毒殺したのか? 

いや、殺したのは、別の誰かなのではないか? 

だとしたら誰だろう? 

疑惑のタネがどんどんと大きくなった状態で、読者はページを捲るごとに、冒頭の話の裏にあった衝撃の真実を知ることになるのです。

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『ベルリンは晴れているか』の概要

出典:Amazon公式サイト

タイトルベルリンは晴れているか
著者深緑野分
出版社筑摩書房
出版日2018年9月25日
ジャンル歴史・ミステリー

1945年、ナチス政権にあったドイツのお話です。

アウグステ・ニッケルという名の少女も、悲しき戦争の被害者でした。

戦時下を生き抜き、アメリカ軍の兵員食堂で働く彼女の視点で語られる戦争の真実とはなんだったのでしょう。

そして、毒を含んだ歯磨き粉で殺害された男を殺した真犯人は誰なのか、という気になる構成です。

『ベルリンは晴れているか』のあらすじ

海外文学のような筆致で、その場所と時代に降り立って実際に目にしてきたかのような描き方をするのが、深緑野分作品の魅力です。

今までの彼女の作品でも、西洋を舞台にした小説を描いてきました。

今作『ベルリンは晴れているか』でも、戦争の地として有名なベルリンを舞台に、少女を主人公として、現場から見てきたような緻密な描写で鮮やかに心情と背景が描かれています。

アウグステの正体

本作の主人公は、アメリカ軍の兵員食堂で働くアウグステ・ニッケルです。

だが、序章ではアウグステがなぜアメリカ軍の兵員食堂で働くことになったのか、その経緯が描かれていません。

何故、彼女が兵員食堂で働くことになったのでしょうか。

そして、序章でアウグステが警察に尋問されることとなる理由となる音楽家のクリストフ・ローレンツの存在。

その二つの謎が問いかけられ、物語の幕が上がります。

クリストフは、毒入り歯磨き粉で不審な死を遂げています。

その犯人として容疑がかけられたアウグステが、警察に真相を語り始め、物語は過去を回想する形で進んでいきます。

カフカという名の友人

アウグステの次といっても諍いがないほど、重要人物として描かれるのは、泥棒で元俳優のファイビッシュ・カフカという青年です。

深緑先生の本作にまつわる講演会を聞きにいった時に、「自分はチャラい男を描くのが好きなのかもしれない。カフカのように」とおっしゃっていた記憶があります。

本作のカフカは確かにアウグステに対し、年頃の青年として馴れ馴れしかったりする印象がありますが、過去に戦争の悲惨な場面を目にしてしまったというトラウマがあります。

 

そして、彼も終盤で本当の正体が明かされる。それを楽しみにしていてほしいです。

効果的に挟まれる幕間

本作は「本当は何が起きていたのか」という真実が、読み進めるごとに明らかになる構成となっています。

それを楽しみに読むのが醍醐味でしょう。

時系列は、序章がアメリカ軍の兵員食堂で働くアウグステ→それに至る経緯(少し過去のこと)となり、最後に再び序章の時間軸に戻るのですが、その間に「幕間」としてアウグステの両親が健在だっときに何が起きていたのか、を明らかにする過去編が途切れ途切れに挟まれています。

この方法により、読者に、彼女自身がこの行動をするにあたった経緯はなんなのかを気にさせるところまで高めていって明らかにする、といった手法がとられています。

 

『ベルリンは晴れているか』を読んだ感想

『ベルリンは晴れているか』を読んだ後、しばらく呆然としてしまいました。

それは、世の中にはこんなにすごい小説を描く人がいるんだという想いからでした。

数年経って2週目を読みましたが、初週に感じた衝撃と同レベルか、それ以上に衝撃を再び受けた作品でした。

あまりそういった作品に出会える経験は、人生にそれほど多くはないと思います。

日本人作家が描く、海外文学

本作を描いた作家、深緑野分氏は紛れもなく日本人作家です。

ですが、彼女自身、海外文学を愛し、海外文学で描かれているような世界観や描写を目指そうとして努力している工夫が小説の中で大いに見られ、文章も美しく、読んでいて気持ちがいいです。

どういう技術で書いているのかわからないほど、映像が目に浮かびます。

私は、ドイツに行ったこともないのに。

戦争によって傷つけられた人間が起こす悲劇

本作で描かれる登場人物たちは、みんな何かしら戦争が起きたことによって傷つけられています。

それは敵味方関係なく、彼らの背景が、アウグステの視線によって丁寧に描かれているから、感じることができます。

そして、その傷を復讐によってあらわにしようとする人間たちが起こす悲劇。戦争の無情さ、残酷さを、逃げずに描き切っていて、読んでいて心を痛めるが、目を逸らせません。

苦しいほどに美しい空

アウグステが見るものは、戦争の悲惨な描写だけではありません。

それは、どこまでも美しい紺碧の空であったり、幼い頃から愛読して、敵兵にも見つからぬように隠して守り抜いてきた児童文学「エーミールと探偵たち」の黄色い表紙だったりします。

残酷な描写と対比させるように、それらの美しい光景は、彼女の心の支えになっていきます。

そして、悲痛な経験をした彼女の瞳を通して描かれる世界の美しさは、読んでいる私にとっても苦しいほどの切なさを呼び起こしました。

『ベルリンは晴れているか』はどんな人におすすめ?

『ベルリンは晴れているか』を周囲で読んでいる人は残念ながら少ないのですが、とても面白い作品だと思っているので、届く人のところに届いてほしいという気持ちがあります。

『ベルリンは晴れているか』は、このような方におすすめです。

  • 読み応えのある本を読みたい人
  • 美しい文章を読みたい人
  • 西洋の世界観が好きな人

綺麗で読み応えがあり、海外文学のようなこの本の世界観に合う人は必ずいるので、当てはまる人がいたらぜひ読んでほしいです。

おわりに|『ベルリンは晴れているか』は、日本人の目によって丁寧に描き出された、ドイツ戦争の少女の視線

 

少しでも本作にご興味を抱いていいただければ、この上なく幸せです。

日常で見える世界が変わる体験を

現在、世界の未曾有の状況により、海外旅行に行けなくなって落ち込んでいる人も多いと思います。

本作は時代こそ少し昔ですが、著者の圧倒的な資料調べにより、当時のベルリンの世界が目の前に立ち現れるように再現されています。

それは食べ物だったり、着ている服であったり、心であったりします。

そんな非日常体験をぜひ味わってほしいです。

一市民の少女の視点で描かれる戦争の悲劇

主人公のアウグステは、ドイツの戦争で誰でも名前を知っているヒトラー等と違い、著者が生み出した一市民の少女です。

読書好きで、両親に愛され、学友がいた、普通の女の子です。

そんな少女が戦争によって傷つき、何故行動を起こしたか、それを彼女の視点に立って見ることができます。

私は深緑作品をこの作品と出会う以前に、短編集『オーブランの少女』という作品をきっかけに知りました。

「オーブランの少女」も日本人が描いたとは思えないほど、克明に海外の古い時代が描かれていて、のめり込んで読んだことを覚えています。

彼女の作品をこれからも追いかけ続けて、その切なさ、苦しさを、登場人物たちの視点に立って感じ続けたいと思います。

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