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『ミステリークロック』感想|完全密室の謎に挑む「防犯探偵・榎本シリーズ」第4弾

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『ミステリークロック』は、防犯コンサルタントで本職は泥棒の榎本径と、弁護士の青砥純子が密室殺人に挑む「防犯探偵・榎本シリーズ」の第4弾です。

同じシリーズには『硝子のハンマー』、『狐火の家』、『鍵のかかった部屋』などがあり、元・嵐の大野智さん主演でドラマ化されています。

本書には「ゆるやかな自殺」と「ミステリークロック」の2編が収録されていて、両方とも完全密室の謎を解き明かすストーリー。

表題にもなっている「ミステリークロック」は、時計だらけの人里離れた山荘で開催された奇妙な晩餐会が舞台。

山荘の主であるミステリー作家の森怜子が書斎で変死を遂げます。

「事故死」なのか「殺人」なのか。

これをきっかけに命がけの推理ゲームが始まります。

今回は密室殺人劇『ミステリークロック』についてご紹介していきます。

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『ミステリークロック』の概要

出典:Amazon公式サイト

タイトルミステリークロック
著者貴志祐介
出版社角川文庫
出版日2020年11月25日
ジャンルミステリー

『ミステリークロック』は、密室ミステリー「防犯探偵・榎本シリーズ」の4作目。

表題作の他に「ゆるやかな自殺」という約50ページの短編が収録されていて、それぞれ独立した物語となっています。

「ミステリークロック」の舞台は、時計だらけの山荘の晩餐会。

招待客たちが超高級時計についてのゲームに興じる中、山荘の持ち主で人気ミステリー作家の森怜子が書斎で死体となって発見されます。

殺人だとしたら、山荘内にいる8人の内、誰が犯人なのか?

シリーズ定番、防犯コンサルタントの榎本径と美人だけれど推理にちょっと難がある弁護士の青砥純子がコンビを組んで密室の謎に挑みます。

榎本シリーズ史上、最も難解なトリックで、読み応えのある一冊です。

『ミステリークロック』のあらすじ

本作には短編「ゆるやかな自殺」と中編「ミステリークロック」の2つが収録されています。

「ゆるやかな自殺」の舞台は暴力団事務所。

外部からの侵入は不可能な事務所内で組員が変死した事件を、榎本が単独で解決します。

「ミステリークロック」は人里離れた山荘が舞台。

ミステリー作家の森怜子が書斎で死んでいるのが発見されたことから、犯人捜しが始まります。

ゆるやかな自殺

対立組織の殴り込みに備えて要塞化されたマンションの一室。

そこは塗師組の暴力団事務所でした。

組員の野々垣は事務所で若頭と部下を殺害し、完全犯罪を計画します。

事務所は鍵がなくては入るのは不可能な密室。

防犯コンサルタントの榎本が鍵を開けるために呼ばれ、殺人事件を解決することになります。

ミステリークロック(山荘での殺人)

作品の舞台は、様々な種類の時計が時を刻む山荘で開かれた晩餐会。

大物ミステリー作家・森怜子の作家生活30周年を祝うためでした。

ディナーのあと、玲子は残った仕事を片付けるために一人書斎へこもります。

その間、怜子の夫である時実がホストとなり、残された招待客たちは怜子の超高級時計コレクションに関するゲームに興じます。

招待客がゲームに夢中になっている最中に、怜子が書斎で死体となっているのを、秘書の夏美が発見。

山荘内には部外者の侵入は不可能なため、他殺ならば8人の中に犯人がいることになります。

突然時実は猟銃を取り出し、1時間以内に犯人を特定し射殺すると言い出します。

怜子の死をめぐり、全員強制的に命をかけた犯人の推理劇に参加させられてしまうのでした。

ミステリークロック(解決)

時実にいつ射殺されるか分からない中、必死に推理する招待客たち。

その結果、最終的に怜子の死は事故であると結論付けられ、警察に通報・無事全員解散となります。

しかしながら、事件から2週間経過後、関係者全員が山荘に再び会することになりました。

そこで、榎本が怜子の死は殺人事件だったと言い出します。

榎本は「完璧な事故」で終わるはずだった時計を使った密室殺人事件を見事解決。

犯人は逮捕されることになりました。

『ミステリークロック』を読んだ感想

貴志祐介さんの「防犯探偵・榎本シリーズ」はやっぱり面白いと再認識させられました。

「ゆるやかな自殺」は映像化されているうえ、比較的トリックがシンプルなので、イメージしやすいのではないでしょうか。

それにひきかえ、「ミステリークロック」はトリックもロジックも非常に緻密で難解です。

一読で完全に理解するのは難しい、骨のある作品となっています。

本格推理小説

本書は、かなり緻密に作りこまれたトリックを使用した本格的な推理小説です。

貴志祐介さんのミステリー(トリック)への執念が感じられます。

特に表題作はイラストが付いているのですが、あまりにも難解過ぎて、多くの人が一回読んだだけでは完全に理解することは難しいでしょう。

本書はストーリー性よりもトリックに重きが置かれているので、推理しながら小説を読みたい人には特におすすめの作品だと思います。

榎本と純子の掛け合いが最高

「ミステリークロック」では、シリーズ定番の榎本と純子のユーモラスな掛け合いが楽しめます。

純子の的外れな推理披露への榎本の反応がもはや夫婦漫才のようで、ついついクスっと笑ってしまうこと請け合いです。

なのに2人の全く甘くならない関係がまた良いですね。

「ゆるやかな自殺」は榎本だけで、純子は登場しなかったのが残念なくらいでした。

貴志祐介さんの作品の中では、ユーモアのある軽妙なタッチが魅力的な作品です。

登場人物の個性が楽しめる

山荘の晩餐会に集められた森怜子を囲む個性豊かな人物たち。

ミステリー作家の現夫、大病院経営者で内科医の前夫、噂の不倫相手である大手出版社の編集者、姉の一人息子である俳優、スマホ嫌いのミステリー老作家のヒキジィ、美貌の秘書など、作者のキャラクター描写が見事でイメージが湧きます。

癖がある人物が多いので、トリックだけでなく、登場人物たちのセリフややり取りも楽しめました。

特にヒキジィは面白いキャラクターで楽しいです。

『ミステリークロック』はどんな人におすすめ?

『ミステリークロック』は、多くの人が楽しめる作品だと思いますが、特に以下のような人におすすめしたい小説です。

  • 難解なトリックに挑戦したい人
  • 密室ミステリーが好きな人
  • 防犯探偵・榎本シリーズのファン

「ミステリークロック」は、小説中に多くの時刻が出てきます。

そのうえ、その時刻がわざわざ太字で強調されているので、時刻に関するトリックであろうことは予想できます。

それを念頭に置いていてさえ、極限まで練られた機械的・心理的なトリックの合わせ技には圧倒されるでしょう。

たくさん張り巡らされた伏線の回収も見事で、読み応えありです。

対照的に「ゆるやかな自殺」はトリックが分かりやすく、気軽に読むことができます。

相変わらずの純子弁護士の珍推理と、榎本とのユーモアに富んだ掛け合いは、「榎本シリーズ」ファンにはたまらないでしょう。

おわりに|「防犯探偵・榎本シリーズ」ファンには必読の書

非常に緻密でかつ実行可能性のある物理的トリックが披露される「ミステリークロック」は、密室ミステリー好きにはたまらないのではないでしょうか?

ドラマで榎本役を演じられた元・嵐の大野智さんの演技を思い出しながら読むのも良いですね。

陰惨な殺人事件を取り扱いながらも、純子の迷推理で笑いももらえる『ミステリークロック』。

ぜひたくさんの人の手に取ってもらいたい作品です。

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