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『永遠の出口』感想|あのころの自分と重ねて読む、リアルな〈女の子〉の成長記録

第168回 芥川賞・直木賞 決定!

第168回 芥川賞・直木賞』が

2023年1月19日に発表されました。

受賞作はこちらの4作品です。

受賞作著者
芥川賞
この世の喜びよ
井戸川射子
芥川賞
荒地の家族
佐藤厚志
直木賞
しろがねの葉
千早茜
直木賞
地図と拳
小川哲

女性の多くが共感する物語といえば、恋愛や仕事が軸のものでしょう。

しかし恋愛や仕事はだいたいが大人になってようやく本格的に起きる物事です。

女性が共感できる物事は恋愛や仕事しかないのか?

そんなことはありません。

たとえば小学生時代に友だち関係で悩んだこと。

周りに上手く反抗できない中学生時代。

それらを経て落ち着く高校生時代。

もちろん男性にだってそういった時代はあります。

それはそれ、これはこれとして、今回は女性のリアルな成長を見ていきたいと思います。

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『永遠の出口』の概要

出典:Amazon公式サイト

タイトル永遠の出口
著者森絵都
出版社集英社
出版日2006年2月22日
ジャンルありふれた“特別”な青春小説

著者の森絵都はもとは児童文学作家でした。

本作はそんな著者が書いた、ひとりのごく普通の女の子が成長していく物語です。

約350ページのなかで、女の子はあらゆる経験をしていきます。

『永遠の出口』のあらすじ

主人公の紀子は〈永遠〉という言葉にとても弱い女の子でした。

3つ上の姉はそれを知っていて、ことあるごとに〈永遠〉を使って紀子をからかいます。

「あーあ、紀ちゃん、かわいそう」

家族ででかけたデパートで見た素敵なランプを見れなかった紀子に、「紀ちゃんは永遠にあのランプを見れないんだ」と言うのです。

紀子はそういうふうに言われるたび、人生に大きな損失を与えられた気になり、焦りと不安を覚えることになるのでした。

物語はそんな紀子が小学3年生だったころから始まり、高校卒業までが書かれています。

独自の世界を築いた小学生時代

小学生は男女問わず独自の世界が作られやすい環境です。

独自のルール、独自の友好関係。

紀子が属する仲良しグループでは、誕生日がくるとプレゼントを持ってその子の家に集まり、出されたごちそうやケーキを食べて楽しむお誕生日会がその都度開かれていました。

好恵という友だちのお誕生日会に招待されたグループの5人は、当日プレゼントを持ち寄りごちそうとケーキを期待して好恵の家を訪ねます。

しかし通された好恵の部屋ではいくら待ってもごちそうとケーキは出てきません。

不思議に思いながらもプレゼントを渡したりおしゃべりをしていると、好恵の母が登場し、「うちではお誕生日会はやらないことになってるから、今日は帰ってね」と言うのでした。

プレゼントだけを持っていかれ空腹のままの5人は腹を立てて好恵の悪口を言い募ります。

普段から抱えていた嫉妬や妬みも動力となり、5人はこれからのお誕生日会に好恵を誘わないことを約束するのでした……。

グレかかった中学生時代

中学生にあがった紀子は年相応にませて、反抗期に突入します。

テニス部に入ったけれど自分にはどうも合わず、母親に相談することもできずにさぼり続ける日々を送っていました。

一度始めたことは最後までやる、校則は守れ、社会や家のルールを守れ。

母親からそう言われ続けていた紀子に、ある日事件が起きます。

紀子が家にひとりきりでいるとき、母親が家で密造していた葡萄酒が爆発してしまったのです。

あれだけルールを守れと言っていた母親が法律を犯して酒を密造していた……。

その事実で母親との溝ができてしまった彼女は不良グループがたむろするアパートに入り浸るようになってしまいました。

髪を脱色し前髪を伸ばし万引きをして……中学2年生になるころには周囲の大人も諦めモードに入っていました。

そうしてグレかかった紀子は、姉から「父親が浮気していたらしい」という話を聞かされたりと相変わらず忙しない日々を送ることとなります。

恋愛を知った高校生時代

家にも学校にも飽きていた彼女は新しい世界見たさに、高校生になると同時にアルバイトを始めました。

小さな欧風レストランで無事にアルバイトを始めますが、それも長くは続きませんでした。

アルバイトの次に彼女がのめり込んだものは恋愛です。

ひとりの男の子に恋をし、期待を裏切られたり傷つきながら、彼女は成長していくのでした。

『永遠の出口』を読んだ感想

冒頭にも述べたとおり、この物語はとある女の子の成長記録以外のなにものでもありません。

しかしそれは多くの大人の女性、または男性の心に響くものになっています。

ごく普通の女の子の成長記録だからこそ、大多数の私たちが共感できるのです。

だれかの人生をなぞらえる作品

まるで自分の人生をなぞらえているかのような感覚に陥るこの小説。

ほかの小説のような特別感や感動はありませんが、だからこそ深く〈共感〉できるのでしょう。

ああ、私も小中高生のころ、こんな感じだったなぁ。

ときに懐かしく、ときに苦く、ときに甘酸っぱい。

ごく普通の青春を詰め込んだ特別な一冊です。

黒歴史は人を成長させる

本人の消したい過去、いわゆる黒歴史というものはいつの時代にもあるものです。

そしてだれにでもあるものなのでしょう。

紀子の黒歴史はたとえば中学生時代、気になる男子とふたりだけの合図で中指を立てるというものがあったこと……紀子はそのハンドサインの意味を後々知ることとなりました。

一丁前に男について語ったり、言葉の意味を碌に知りもせず豪語したり……。

数え出したらキリがありません。

黒歴史をたくさん作ってそして大人になる、ある種大人の階段と言えます。

いつの時代も変わらないこと

本作品はなにも現代のことを書いたものではありません。

それでもいまを生きる多くの人の共感を集めるということは、いつの時代も子どもが考えたり感じたりすることはそう変わらないということなのでしょうね。

小学生時代、好恵のお誕生日会の一件について紀子はこう語ります。

子供の世界はある面、大人の世界よりも残酷で手厳しい。

融通がきかないだけに他人を許せず、怒りも喜びもストレートなぶん、その矢はまっすぐ突き刺さる。

子どもの独自の世界を言い表す、とても的確な表現ではないでしょうか。

『永遠の出口』はどんな人におすすめ?

ごく普通の青春小説だからこそ幅広い人におすすめできるのも、本作の良いところです。

あえて絞るならば、

  • 青春を振り返りたい人
  • なんてことない青春小説を読みたい人
  • 共感できる作品に出会いたい人

などなどに特におすすめしたいと思います。

主人公が女性のありふれた青春小説なのに、男性にも共感してもらえるというのは推していきたいところですね。

おわりに|ごくごく普通の少女は永遠の出口を求めて成長する

小学生の、中学生の、高校生の、紀子。

同じ人間のはずなのに、まるで別人のように変わっていくのはきっと女の子の成長あるあるなのでしょう。

なんてことない出来事やきっかけで、女の子はめまぐるしく変わっていきます。

本作はまるで親戚の幼かった少女がだんだんと社会を知っていく様子をみているような一冊でした。

それでいて本人である紀子に共感ができる……非常に不思議な読みごたえです。

読了後に残るのは自分の青春を振り返る懐かしさでしょうか。

はたまた紀子の未来の想像でしょうか。

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