突然ですが、ミステリーはお好きでしょうか?
近頃は、「人が死なない」「日常の謎」などライトなものが増えています。
今回ご紹介するのは、そんな世間の流れに逆らうかのように現れた本格派です。
少しでもピンときた方は、ぜひお手に取っていただきたいと思います。
著:進一, 原
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『アムステルダムの詭計』のあらすじ
語り手である「私」は、オランダのアムステルダムへ駐在することになった商社マン。
オランダでは日本に対する関心がとても薄い時代のことです。
そんな中で、唯一の例外が松本清張の『アムステルダム運河殺人事件』でした。
アムステルダムの運河に浮かんだトランクの中から、日本人のバラバラ死体が発見されたのです。
実際に起きた事件をもとに書かれたと思われるこの作品は、松本清張本人によって「替え玉殺人である」との説が打ち出されました。
しかし、その後に松本清張はこの説を撤回します。
あまりにも残忍な事件であったためか、『アムステルダム運河殺人事件』のオランダ語訳は、今でもアムステルダム近くの図書館で閲覧できるほど…。
しかし、そんな流れとは別に「私」の関心を引いたのはアムステルダム運河殺人事件の被害者が大学時代の先輩であるということでした。
驚いたものの、「やはり、真っ当な人生を送れなかったな」とどこか納得している私。
未解決の事件を中心に、「私」の大学時代の交友関係から裏の国際問題も絡んできて…。
『アムステルダムの詭計』読んだ感想
新人という作者ですが、これがデビュー作とは思えないほど文章が巧いのです!
難しい内容ですが、すらすらと読み進めることができるのはこの文章力によるものだと思います。
あらすじにもあるように、この作品では松本清張の作品に触れています。
これが単に土台なのか、本当にあった事件なのか…。
この『アムステルダムの詭計』を読んでいると、わからなくなってしまうんです。
それほどリアリティにあふれていて、史実なのかフィクションなのかの区別がつかなくなってしまいます。
個人的にはミステリーが大好きなので、この本を手に取ってみた…というのが読み始めた動機です。
少しのあらすじと、なんとなくの雰囲気で購入しましたがこれは「当たり」でした。
同じ作者の他の作品を読みたい!と思うのですが、まだ次の作品は発売されていないようです。
おわりに
もしかすると、好き嫌いが分かれる作品かもしれません。
「ミステリーなのにトリックがない!」と感じる方もいると思います。
そんな定義はいったん忘れて、とにかくこの物語を楽しんで欲しいですね。
「最近、小説を読んでいない」「少し濃厚な作品が読みたい」という人にはピッタリです。
また、新人と書きましたが作者は1948年生まれの方です。
松本清張を出しているあたりで「もしや…」と思われる方も多いかもしれません。
新人らしからぬ構成は、人生の先輩ならではだと思います。
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