国内小説– category –
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『子猫が読む乱暴者日記』感想|混沌の文章と予想外の展開に引きずりこまれる驚愕の読書体験
こちらの小説。 「いつもの様にくつろぎながら小説でも読もう」とはいきません。 本書は、読んだ者を未知の小説世界に引きずりこんでしまう恐るべき一冊なのです。 まともな価値観をことごとく拒絶する『子猫が読む乱暴者日記』。 この小説が持つ特異な魅... -
『シズコさん』感想|泣けて笑える母娘の愛憎物語
『100万回生きたねこ』『わたしのぼうし』『ねえ とうさん』など、絵本作家として活躍した佐野洋子さんですが、エッセイや小説も書いています。 今回ご紹介する『シズコさん』は、どうしても愛せない母親との関係に悩み、自責の念にかられ、その思いから解... -
『オルタネート』感想|高校生限定マッチングアプリを通して描く青春
ジャニーズ事務所所属、NEWSの加藤シゲアキさんの作品『オルタネート』。 現役アイドルである加藤シゲアキさんが書いた本書は、第164回直木三十五賞の候補作にも選ばれました。 高校生限定のマッチングアプリ「オルタネート」が必須となった現代での、高校... -
『砂漠』感想|平凡な大学生が繰り広げる、小さな奇跡で溢れた青春物語
その気になればね、砂漠に雪を降らすことだって、余裕でできるんですよ。 今回紹介するのは伊坂幸太郎さんの隠れた名作『砂漠』です。 “伊坂幸太郎ファンなら必須の一冊”という謳い文句に誘われ読んでみたところ、キャラクターの面白さ、また軽い流れの中... -
『夏と花火と私の死体』感想|乙一が書く生々しく残酷な無邪気さを漂わせる
子どもとは、無邪気なばかりではないと知っている大人も多いでしょう。 時に近所の子どもを見て、時に自分の幼い頃を思い出して、子どもという生き物の残酷さを思い知ることがあるのではないでしょうか。 その無邪気さは些細なこともあれば事故に繋がりか... -
『孤宿の人』感想|宮部みゆきによる人間の罪深さ・あたたかさを描いた傑作長編
加賀様は鬼だ、悪霊だ。この丸海藩にあらゆる厄災を運んでくる。 今回紹介するのは宮部みゆきさんの時代小説『孤宿の人』です。 宮部みゆきさんと聞くとミステリー作家のイメージの方が強い人もいるかもしれません。 しかしミステリーとはまた違う人間の恐... -
『風が強く吹いている』感想|夢を諦めた人にこそ読んでほしい青春小説
箱根駅伝といえば、知らない人はいないであろうお正月の風物詩。 この物語はそんな箱根駅伝を目指す10人の大学生を描いています。 このように書くと、駅伝やスポーツに興味のない方にはとっつきにくいかもしれません。 しかし、この物語はそんな人にこそ、... -
『お探し物は図書室まで』感想|意外な選書で人生まで後押し!
ある小さな図書室のレファレンスカウンターから、この言葉が聞こえてきます。 「何をお探し?」 少し高圧的とも思える司書さんの言葉から、図書室に訪れた利用者とのやりとりが始まります。 この司書さんの愛想は決して良くありません。 ですが、利用者の... -
『こころ』感想|人生の悲劇を目の当たりにする近代文学の代表的名作
夏目漱石の代表的な名作、『こころ』を読んだことはありますか? 授業で読んだことがあったり、読んでいなくても名前を知っていたりするかもしれませんね。 有名な作品ですが、意外と「読んだことがない」「途中で読むのを辞めてしまった」という声を聞い... -
『図書室』の感想|思い出すのはセピア色の時間
老いを意識することはあっても、生活にこれといった不安もなく一人暮らしをしている50代の女性。 ある雨の日曜日。 ぼんやりとしながらコーヒーを淹れていると昔のことが目に浮かんできます。 母のこと、猫たちのこと、図書室であった少年と地球の終わり。...