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『シズコさん』感想|泣けて笑える母娘の愛憎物語

100万回生きたねこ』『わたしのぼうし』『ねえ とうさん』など、絵本作家として活躍した佐野洋子さんですが、エッセイや小説も書いています。

今回ご紹介する『シズコさん』は、どうしても愛せない母親との関係に悩み、自責の念にかられ、その思いから解放されていくまでの、ちょっと笑えて泣けるエッセイです。

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『シズコさん』の概要

出典:Amazon公式サイト

タイトルシズコさん
著者佐野洋子
出版社新潮社
出版日2008年4月25日
ジャンルエッセイ

1938(昭和13)年生まれ。幼少期を北京で過ごし、7歳のころ日本に引き揚げます。

武蔵野美術大学デザイン科卒業後、ベルリン造形大学でリトグラフを学びました。

絵本では日本絵本賞、小学館児童出版文化賞を受け、エッセイでは小林秀雄賞を受賞。

2003年に紫綬褒章受章。

2010年11月永眠。

『シズコさん』のあらすじ

ここまで書くのか!と驚くほど正直に母娘の関係が書かれています。

ちょっと笑えてしんみりするエッセイです。

長い反抗期のはじまり

4歳のころ、母と手をつなごうとした瞬間、舌打ちされて手を振り払われて以来、2度と手をつながないと誓った洋子さん。

それから母とのきつい関係が始まります。

4人の子供を育てながら家事も完ぺきにこなし、料理上手で社交的な母。いつもバッチリお化粧して身ぎれいにしている母。

しかしかなりの見栄っ張り。

言い合いになれば「そんなことないわよ」と叫び、まるで瓦で頭を叩きつけるような口調。

決して人にありがとうもごめんなさいも言いません。

洋子さんも強情ですが、母もまたなかなかの強者。

永遠とも思える洋子さんの反抗期が始まります。

洋子さんは大人になってから母親とはほとんど会話をしませんでした。話をしても仕方がないと思っていたのです。

とにかく、母親のことが何でもかんでもムカつきます。

” 母の匂いがむかついた。おしろいの匂いの中に浮かんでいる母そのものの体臭、巾の広い背中と臼のような尻 ”

思春期の子どもにありがちな「ムカつき」のようにも思えますが、洋子さんの反抗期は大人になっても終わることはなく、しだいに自分を責めるようになっていきます。

泣かない洋子さんと、ありがとうを言わない母

終戦の年、母は31歳。洋子さんは7歳。

5人の子どもを連れ、中国から引き揚げ船に乗り日本に戻ってきた佐野家。

戦後はどんな人も苦労しながら懸命に生きていました。洋子さん家族も同じです。

いつもぴったりとくっついていた大好きな2つ上の兄が亡くなり、弟が亡くなり、その後生まれた妹の世話は洋子さんの役目でした。

妹の子守、おしめを洗う、水汲み、たきぎ拾い。要領のいい洋子さんはどんな辛い仕事もすぐにコツを覚えますが、少しでもズルをするとすぐに母親に見つかります。

ジロッっと睨まれ「私をだまそうとしてもそうはいかないんだから」と押し殺した声で言う母。

洋子さんはこのジロッと睨まれることが嫌でした。

仕事を少しでもズルしたり、遊んで帰ると母からの体罰が待っています。

衿元をつかまれ、柱に頭をごりごりぶつけられたり、畑に付き飛ばされたり。

ほうきの柄で何度も叩かれることもありました。

ズルしたことが見つかって後悔することがあっても、絶対に泣かない洋子さん。決して「ありがとう」も「ごめんなさい」も言わない母。

これほどソリが合わない母娘でも、年を取るごとに、洋子さんは母親を愛せない自分に自責の念を感じるようになっていきます。

人生は、気が付いたときにいつも間に合わなくなっている

洋子さんが19歳のときに父が亡くなります。50歳でした。そのとき母は42歳。

美術大学に通っていたころは伯母の家や学生寮に入っていたので、母親とはあまりかかわりを持たず、わりと平穏に過ごしていました。卒業後、洋子さんは結婚します。

元々バイタリティがある母は年を重ねても身ぎれいにして化粧もバッチリ。生け花を教え、短歌サークルに入り、あちこち旅行にも行き、結婚した弟夫婦と同居します。

洋子さんをふくめ妹たちは「母さんとうまくやれる嫁はいない」と言い合っていましたが、やはりそのとおり。母は同居をはじめてすぐに嫁の悪口を電話で長々と訴えてくるようになりました。

嫁とケンカして洋子さんの家に来ても、2~3日すると今度は洋子さんとケンカになり、肩を落として家を出ていく母。

洋子さんはあの後ろ姿を思い出すのが一番切ない、と思うようになります。

素直に接することも優しくすることもできず、母を愛せない自分を責め、自責の念は年ごとに複雑に大きくなっていきます。

痴呆症が進み、老人ホームへ入居することになったとき、母を愛さなかったという負い目から高級老人ホームへ入居させた洋子さん。

しだいに嫌っていた嫁のことも、結婚していたことも思い出せなくなった母は、何かあると「ごめんなさい」「ありがとう」を言うようになります。そして洋子さんは思います。

” 私は正気の母を一度も好きじゃなかった。いつも食ってかかり、母はわめいて泣いた。そしてその度に後悔した。母さんはごめんなさいとありがとうを云わなかった様に、私も母さんにごめんなさいとありがとうを云わなかった ”

人生って、気が付いたときはいつも間に合わなくなっているのだと洋子さんは思うのでした。

『シズコさん』を読んだ感想

母親との葛藤が書かれたエッセイですが、ちょっと笑えたり、考えさせられたりと、読んでいる方も気持ちが揺れるエッセイでした。

家族だからこそ、許せないことがある

いろんな人がいるように、どこの家族もそれぞれ違います。

エッセイの中にも出てきますが、洋子さんと同じように母を愛せなかった人や、母が死んだら私も死んでしまうという人もいます。

母親に限らず、家族を愛せなくて自分を責める人もいるでしょう

家族だからこそどうしても許せなくなってしまう。これが他人だったらもっと割り切っていられるのかもしれません。

「生まれたまんま」の言葉

家族のしがらみに苦しんでいる内容の本は小説やエッセイに限らずたくさん出ています。内容が内容だけに、重いものもあります。

しかし、佐野洋子さんのエッセイを読んだことがある方なら分かっていただけるかと思いますが、なぜか面白く読めてしまう。深刻になりすぎず、感傷に流されない。

私は洋子さんのエッセイを読むたび「生まれたまんま」という言葉が浮かんできます。美しいことも醜いことも、そのまま言葉にする大胆さ。

『シズコさん』も生まれたまんまの大胆な言葉で綴られています。

長い長い反抗期の終わり

このエッセイを書いていた当時、洋子さんも病気で苦しんでいました。

そして自分の物忘れの激しさに恐怖を感じる毎日。痴呆症だった母が呆然と立ち尽くしていたように、自分も同じように呆然と立っている。

年相応の物忘れなのか、痴呆症なのか区別がつきませんが、区別がついたからといってどうだというのだ、と開き直る洋子さんはやっぱり面白い。

洋子さんの長い長い反抗期が終わると、自責の念からも解放され、読んでいる私も解放された気分になりました。

『シズコさん』はどんな人におすすめ?

『シズコさん』をおすすめしたい方。

  • 母との関係に悩んでいる方
  • 佐野洋子のエッセイが好きな方
  • 小説よりもエッセイが好きな方

エッセイの内容は決して軽いものではありませんが、重すぎるというわけでもありません。

母娘の関係、老いた母への対応など、考えさせられることもあり、洋子さんの自伝のようでもあります。

おわりに

こじれてしまった親子関係の修復は難しいものです。

お互い強情だと余計にこじれ、ねじれてしまいます。

家族は絶対に仲良くしなければいけないとは思いませんが、自責の念にかられるようなことがあったら、ねじれている部分を客観的に見てみるのもいいかもしれません。

家族のためというよりも、自分を解放するために。

佐野洋子さんの長い長い反抗期の様子を読むと、なかなか大変そうですが、何かヒントがありそうです。

佐野洋子さんのエッセイがお好きな方、母親(あるいは家族)とややこしくなっている方におすすめします。

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