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『子猫が読む乱暴者日記』感想|混沌の文章と予想外の展開に引きずりこまれる驚愕の読書体験

こちらの小説。

「いつもの様にくつろぎながら小説でも読もう」とはいきません。

本書は、読んだ者を未知の小説世界に引きずりこんでしまう恐るべき一冊なのです。

まともな価値観をことごとく拒絶する『子猫が読む乱暴者日記』

この小説が持つ特異な魅力をご紹介します。

タップできるもくじ

『子猫が読む乱暴者日記』の概要

出典:Amazon公式サイト

タイトル子猫が読む乱暴者日記
著者中原昌也
出版社河出書房新社
出版日2000年1月1日
ジャンル前衛小説

著者の中原昌也さんは、2001年に『あらゆる場所に花束が…』で、三島由紀夫賞を受賞されており、本書以外にも数々の小説を発表されています。

中原さんの作品は、どれもただ面白いだけではなく、感じたことのない衝撃を与えてくれるのですが、本書は中でもパンチの効いた作品になっております。

『子猫が読む乱暴者日記』のあらすじ

本書は7つの作品からなる短編集ですが、どの作品も中原ワールドとしか言いようのない狂気に満ちた内容になっています。

そんな本書の最大の特徴として、「あらすじらしいあらすじがない」ことが挙げられます。

なぜなら、この物語の展開には〝合理性〟が著しく欠けているからです。 

それこそが本書を本書たらしめている、魅力の所以でもあるのですが。

「子猫が読む乱暴者日記」

表題作であるこちらの作品はこの短編集のトップバッターですが、ここで読者を完全に中原ワールドに引きずりこみます。

ある男の精神世界を描いた本作。

目の前にいる田辺という男の髪の毛に対して執拗な観察が始まり、かと思えば取り留めのない自己分析が始まります。

そんな中濃い化粧の女弁護士が登場し、ドアをノックし出てきた人に突然暴力を振る舞って…。

兎にも角にも、彼の暴走を止めることは誰にもできないのです。

「デーモニッシュ・キャンドルズ」

この作品には、のぶ子という女性が登場します。

暗殺用の武器収集が趣味の夫が、バレないように黙って外出したのを怪しんで跡をつけるのぶ子。

20年前、洋食メニューを擬人化したキャラクターを服にプリントし、その服が街で流行したことで一躍有名デザイナーになったのぶ子。

ベテラン女優として授賞式の壇上でスピーチをするも、突然頭上にある天井と立っている床が同時に抜けて真っ逆さまに落ちていくのぶ子。

『のぶ子のワクワクワークショップ』の現場にいつまでも姿を現さないのぶ子と、スタジオに置かれたのぶ子の大きな白黒パネル…。

それぞれの経緯や間については全然説明はされませんが、本書はそういう小説です。

「黒ヒゲ独身寮」

部屋で「殺してやる!」と殺意を露わにする男が主人公の物語。

隣の部屋からも「絶対に殺す!」と言う声が男の耳に聞こえてくる…。

実は主人公の男は、憎悪を持った人間たちが収監される建物の中にいたのです。

しかし、この収監場所は好き勝手に出入りが可能なので、男はスーパーへと出かけます。

その道すがら、信号無視のトラックに轢かれかけ怒りを顕にしますが、すぐに反省し、次にタクシーに乗り込みますが、出発する寸前で飛び降ります。

日頃からストレスを貯めているであろうタクシー運転手に思いを馳せる男。

普段ガソリンスタンドで働く主人公の男は、タクシー運転手に「あせらずのんびりいきましょう。」と声をかけることにしているのです。

小説は、起承転結がなくても成立するものなのです。

『子猫が読む乱暴者日記』を読んだ感想

あらすじの説明では、一体どのような小説であるか理解できなかったかと思います。

しかし、最後まで読みきったところで理解できるものでもないのです。

本書を読んで感じるのは、文章を読むことの面白さと予想外と出くわす瞬間の衝撃なのです。

タイトルのインパクトと凌駕する内容

7つの作品のタイトルはどれも強いインパクトを放っており、こちらの興味をそそります。

表題の「子猫が読む乱暴者日記」をはじめ、「十代のプレイボーイ・カメラマン かっこいい奴、うらやましいあいつ」や、「闘う意志なし、しかし、殺したい」など、どんな内容が描かれているのかすごく気になるタイトルが付けられているのです。

そして中身を読み始めると、奇抜なタイトルを凌駕する驚きの文章の連続なのが本書の凄みです。

書くのが嫌な著者が発する暗いエネルギー

前向きで明るい希望に満ちた物語は、人の心にたくさんの栄養を与えてくれます。

しかし、人間は誰しも負の一面も携えながら生きているもの。

ひどく惨めな気分の時には、うんと暗いが底知れぬエネルギーを持った物語の方が心地よく響くこともあるはずです。

著者の中原さんは、あとがきで「生活のために仕方なく文章を書いている」とこぼしていますが、時には意欲的にいい物語を書こうと書かれた小説よりも、いやいや書かれた人間臭さ満載の小説に真実味を感じることもあるのです。

著者は読まない方が良いと言うが…

中原さんはあとがきで、「こんな役に立たない本ではなく、もっと読むべき本があるからそちらを読む方がいい」とも仰っています。

小説に何を求めるかは人それぞれですが、私は本書を読み、小説は別に役に立たなくてもいいのだと気づいたのです。

専門書や新書には有益な情報があってしかるべきですが、小説はそうじゃない。

文章で成立する〝芸術〟なのです。

たとえ意味がなくても、人の心に何らかの作用をもたらせば、それは立派な小説であるということを気づかせてもらいました。

『子猫が読む乱暴者日記』はどんな人におすすめ?

私が『子猫が読む乱暴者日記』をおすすめしたいのは以下のような人です。

  • 型破りな小説が読みたい人
  • 鬱憤を晴らしたい人
  • カオスな作品が好きな人

このような方々には、本書以外の中原さんの小説もおすすめですのでぜひ読んでみてほしいです。

特におすすめなのは2016年に発売された『軽率の曖昧な軽さ』という小説です。

おわりに

まともに理解はできないけれど、読んでいて純粋に面白い『子猫が読む乱暴者日記』。

意味や感動とは異なる、暗いエネルギーが確かに感じられます。

その暗いエネルギーは負の面を抱えた人間にとって非常にリアルなもので、案外心に響くものかもしれません。

小説の常識を無視した本書は、味わったことのない読書体験を読者に提供してくれます。

気になった方はぜひ読んでみてください!

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この記事を書いた人

本が大好きな『休日の本棚』運営者です。

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