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『砂漠』感想|平凡な大学生が繰り広げる、小さな奇跡で溢れた青春物語

その気になればね、砂漠に雪を降らすことだって、余裕でできるんですよ。

今回紹介するのは伊坂幸太郎さんの隠れた名作『砂漠』です。

“伊坂幸太郎ファンなら必須の一冊”という謳い文句に誘われ読んでみたところ、キャラクターの面白さ、また軽い流れの中で突如感じる重みのバランスが心地よく、非常にお気に入りの一冊になりました。

作品の構成にもカラクリが仕込まれており、これから読む方は内容だけでなく、どんなトリックが隠されているのか注意して読むと、より楽しむことができますよ。

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『砂漠』の概要

出典:Amazon公式サイト

タイトル砂漠
著者伊坂幸太郎
出版社実業之日本社
出版日2005年12月10日
ジャンル青春

ファンの中で根強い人気を誇る『砂漠』。

若者の目にも留まりやすい、ライトノベルのような表紙が特徴です。

2016年12月にサハラ砂漠で積雪が観測され、それをきっかけというわけではないようですが、新装版として現在の表紙のものが発売されました。

西嶋の言葉が現実になったということで、4人に得意げに話している彼の姿が容易に想像できます。

『砂漠』のあらすじ

主要人物は以下5人の大学生です。

  • 北村:主人公。常にどこか冷めている。
  • 鳥井:口調から雰囲気からどことなく軽く、髪型が鳥のよう。実家が裕福。
  • 西嶋:変な奴。否定されようと白い目で見られようと信念を曲げない。
  • 南:陽だまりのような女の子で、超能力が使える。
  • 東堂:冷たい雰囲気の漂う絶世の美女。

彼らが繰り広げる大学生活は、どんなものだったのでしょうか。

簡単にあらすじを説明していきます。

出会いの春

物語は5人が大学一年生になるところから始まります。

5人が仲良くなるきっかけは麻雀でした。名前に東西南北が1字ずつ入った4人と、お金持ちの鳥井の家で麻雀をすることで、仲が深まっていきます。

ある日合コンに出かけた男三人。

相手の女の子たちに騙され、ホストたちと大金を賭けたボウリング対決をすることになってしまいます。

鳥井は400万もの負債に絶体絶命にも思われましたが、西嶋が必死に出したスペアにより、なんとか賭けをなかったことにすることが出来ました。

つまらなそうに始まった北村の大学生活が、4人の友人によって彩られていきます。

悪夢の夏

夏休みに入り、仲良し5人組は海へ行きます。

楽しい時間を過ごしますが、偶然目の前を通りがかったのが、あのときの合コンに参加していた少女のひとりでした。

後日彼女は鳥井を飲みに誘い、最近話題になっている通り魔の家を突き止めたから調べてほしいという相談を吹っ掛けるのです。

断るべきだと止める4人を、面白そうだからという理由で説き伏せる鳥井。

夜中に男三人で問題の家に向かうと、そこに通り魔はおらず、空き巣が行われようとしていました。そしてなんとその犯人らは、あのときのホストと仲間の男たちだったのです。

3人に気が付き、車で逃げようとするホストとその仲間。

逃げる方向にいた鳥井を猛スピードで跳ね飛ばし、鳥井は片腕を切断する大怪我を負います。

超能力の秋

片腕を失った鳥井はひどく落ち込みますが、徐々に明るさを取り戻していました。

季節は秋、大学生活の秋の中心出来事と言えば学祭です。

5人は、超能力否定派VS超能力者というイベントに興味を持ちます。

超能力者がこけにされようとしていることを知った北村と西嶋は腹を立て、超能力者に協力しようと行動を起こします。

しかし実は裏で超能力者と否定派の二人は繋がっており、暴かれる人と暴く人というショーをやっていただけに過ぎませんでした。

こけにされていたのは自分たちだということがわかった5人は、イベント本番で超能力者と否定派の2人がグルであることを示す写真を表示し、南が否定派の目の前で超能力を使って見せることで、一種の反撃とします。

『砂漠』を読んだ感想

この後季節は冬となり、因縁のホストとの対決が描かれます。

ラストが気になる方はぜひ本を手に取ってみて下さい。

全編を通してホストとの事件が軸になっているのではなく、平凡な日常やささやかな奇跡、大人になる一歩手前の脆さが作品を彩っており、読むだけで青春の疑似体験をした気持ちになりました。

大学生活

5人は比較的普通の大学生で、超能力が使える南を除けば、自分の周りにもいる、もしくはいただろうなと思わせる素朴さがあります。

そんな彼らの話だからこそ、誰もがすっと世界に入り込むことができて、読後にはなんとなく懐かしさと、少しの羨ましさを感じるのでしょう。

驚いたのは、5人で過ごした1年間の思い出かと思いきや、実は4年間の思い出だったことです。ラストのラストまで気が付きませんでした。

読んでいる途中で違和感を覚える箇所はあったのですが、違和感をなくすための小細工も所々にちりばめられており、悔しいような、楽しいような気持ちになります。

初めに仲良くなった5人が、バラバラにならず絆を深めながら過ごせたというだけで、素敵な物語だったなと思えるほど、題名の砂漠とは裏腹なみずみずしさの溢れた時間が流れる作品です。

近視眼型と鳥瞰型

鳥井が北村に初めて会ったときに言う、何気ないこの人間の二分割が自分には印象的でした。

目の前のことしか見えない近視眼型と、上から全体を眺める鳥瞰型。

自分はどちらに当てはまるでしょうか。そしてどちらがより望ましいタイプの人間でしょうか。

近視眼が悪いわけではなく、周りを傷つけなければ近視眼型の人間も良い人間であり、何より楽しく生きていく人間だと思います。

それぞれの良いところを取り入れましょうという結論は、冷静で模範解答すぎて、それこそ鳥瞰型感の典型かもしれません。

“鳥瞰して周りのことも見ながら、絶対に譲れないポイントは軸を持って近視眼型として生きていこう“という考え方が、この5人の学生生活から見えるベストアンサーな気がします。

愛すべき西嶋

『砂漠』を読んだ人は誰もが彼に惹かれ、お気に入りの登場人物になってしまうのではないかと思うくらい、非常に魅力的なキャラクターです。

先ほど述べた人間の2タイプ、まっすぐな近視眼型と、ひねくれた鳥瞰型がミックスされた、とても人間らしい西嶋。

そんな彼を象徴する言葉がこちらです。

俺は恵まれないことには慣れてますけどね、大学に入って、友達に恵まれましたよ

こんなにも冷めた口調でかわいいことを言ってしまうキャラクターはなかなかいません。本心・本音さらけ出すことに抵抗がない、“素で生きる”を体現するのが西嶋。

そんな彼の周りにいた4人は“飾らないで素で過ごしていいんだ”と思い、隠していた人間味を表し始めます。そんな過程が、今作品の魅力の一つでもあるのです。

『砂漠』はどんな人におすすめ?

『砂漠』はこんな人におすすめです。

  • 青春物語が好きな人
  • 伊坂幸太郎さんにはまりかけている人
  • 元気になりたい人

私が誘われた謳い文句ですが、伊坂幸太郎さんのファンなら本当に必須の作品です。

また、新生活も始まり、少し疲れてしまった、元気になれる作品が読みたいなと思う方にも、特におすすめです。

突飛な言動で突き進む西嶋に、登場人物だけではなく読者ももれなく感化され、彼のように臆さず生きようと思わされます。

おわりに

社会という砂漠に踏み入れる直前の5人に向けた学長の言葉、

学生時代を思い出して、懐かしがるのは構わないが、あの時は良かったな、オアシスだったな、と逃げるようなことは絶対に考えるな。そういう人生を送るなよ。

この言葉が、作者からのメッセージのような気がします。

人生100年時代、終わりに公開するような生き方をしないよう、今作品を読み返しながら生きていきたいと思います。

伊坂幸太郎さんの作品を読んで明るい気持ちにならなかったことはないのですが、『砂漠』は特に読後感の良い作品でしたので、前向きな気持ちになりたい方、ぜひ読んでみてください。

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