国内小説– category –
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『鞠子はすてきな役立たず』感想|働かない人間も社会を回している
この本は趣味に生きる、鞠子という一人の主婦が主人公の物語です。 著者の山崎ナオコーラさんは、文庫版のあとがきにこんなことを書かれていました。 「本を出したあと、主婦をしているという方から、主婦を素敵に書いてくださってありがとうございます、... -
『ライオンのおやつ』感想|こんな穏やかな時間を過ごしたい
ある年のクリスマス。 海野雫が降り立ったのは、瀬戸内に浮かぶ「レモン島」と呼ばれる小さな島でした。 キラキラ光る美しい景色に囲まれたその島で、彼女が過ごす時間、出会う人々との交流を描く物語です。 病と向き合い、時に抗いながらも必死に闘ってき... -
『のぼうの城』感想|わかりやすさと史実の面白さを兼ねた異色の歴史小説
混乱の激しい戦乱の時、戦国時代末期。 物語の舞台は田舎武家の成田氏が治める武州忍城(ぶしゅうおしじょう)、現在の埼玉県行田市で繰り広げられます。 命が今よりはるかに軽く、強くなければ簡単に命を落とした時代にもかかわらず、不器用で、力も弱く... -
『ハーモニー』感想|”優しい世界”ハーモニーの正体とは?
”優しい世界”、まるでユートピアかのような世界を描いた『ハーモニー』。 著者、伊藤計劃さんの堂々たる2作目は、第30回日本SF大賞受賞、そしてベストSF2009の国内篇1位という、輝かしい実績を得ることとなりました。 構造的で作りこまれた舞台設定、世界... -
『ホノカアボーイ』感想|ひとたびページをめくればきっとハワイを感じられる
現在、ポータークラシックの取締役をされている作者の吉田玲雄(以下「玲雄」と称する)。 玲雄が大学を卒業したところから物語ははじまります。 ポータークラシックの作品こそ目にすることは多いけれど、その会社の取締役がどんな方 かなんて普通に過ごし... -
『赤×ピンク』感想|格闘を通して成長する女たちの物語
〈キャット・ファイト〉 それは女性同士での取っ組み合いやケンカ、格闘のことです。 だいたいの人が見たことがあるものと言えばやはり取っ組み合いのケンカでしょう。 最近ではテレビのおもしろ映像などでも流れたりしますね。 そして女子プロレスなども... -
『ベルリンは晴れているか』感想|紺碧の青空を見上げる少女と戦争の物語
1942年のドイツを舞台にした三つ編みの少女・アウグステの視点で描かれる戦争の悲惨さ、切なさ。 そして、音楽家であるフロレンツを殺したのは誰なのか、という謎が冒頭に提示され、読者に疑問を抱かせた状態でこの物語は進んでいきます。 本当に、アウグ... -
『星の子』感想|信じるものを自分で選んでいくこと
家族は、生まれたときからそばにあるもの。自分で選ぶことができないものです。 だからこそ、家族の違和に気づくのは、外の世界と関わりを持ってからになることが多いもの。 自分では普通だと思っていたことが、実は普通ではなかった経験をしたことのある... -
『極悪鳥になる夢を見る』感想|貴志祐介の頭の中が全て見える初エッセイ集
ホラー、ミステリー、SFなど幅広いジャンルの作品で活躍されている「貴志祐介」さん。 映像化された『黒い家』『悪の教典』『新世界より』『鍵のかかった部屋』などは特に有名で、ベストセラー小説となっています。 『極悪鳥になる夢を見る』は、そんな貴... -
『アフターダーク』感想|たどり着いた先は深夜の街、迎え入れるのは鈍い光
私たちが眠っているあいだ、世界は、街がは、どのようにしているのでしょうか。 深夜は大多数の人たちが眠っており、外の様子を知る者はそう多くはいません。 深夜にしか開かない店や、深夜にしか見られないもの、深夜にしか会えない人がきっといます。 行...