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『のぼうの城』感想|わかりやすさと史実の面白さを兼ねた異色の歴史小説

混乱の激しい戦乱の時、戦国時代末期。

物語の舞台は田舎武家の成田氏が治める武州忍城(ぶしゅうおしじょう)、現在の埼玉県行田市で繰り広げられます。

命が今よりはるかに軽く、強くなければ簡単に命を落とした時代にもかかわらず、不器用で、力も弱く、図体がでかいだけの男、成田長親。

通称”のぼう様”

彼は”でくのぼう”を略したあだ名で呼ばれ、家臣どころか領民にまで雑に扱われる始末です。

そんな彼が3千に満たない勢力で2万を超える軍勢を負かした様を痛快に描いたのが『のぼうの城』です。

「歴史小説は時代背景の知識がないと楽しめないよな…」

「知らない単語とか地名、人名が多すぎて苦手だよ」

『のぼうの城』はそんな方でも楽しめるよう、ていねいな説明とおもしろ小話が盛りだくさんのコメディ風歴史小説です。

それでは、本作についてご紹介していきます。

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『のぼうの城』の概要

出典:Amazon公式サイト

タイトルのぼうの城
著者和田竜
出版社小学館
出版日2007年11月28日
ジャンル歴史エンタメ小説

『のぼうの城』は、第139回直木賞にノミネートし、2009年の本屋大賞の2位に選ばれ、累計発行部数は170万部超えの大ヒット作品です。

その人気はすさまじく、2012年に映画化されると累計興行収入28.4億円をあげ、多くの映画ファンからも愛される作品となりました。

野村萬斎、榮倉奈々など、豪華な顔ぶれがキャストを務めており、映画として知っている方も多いのではないでしょうか?

『のぼうの城』のあらすじ

戦国時代末期、豊臣秀吉による天下統一目前にして最後の障壁となったのが関東を治める北条氏の小田原城です。

小田原城を落とすために全国から兵を集めた秀吉は、自分の腹心である石田三成に2万の兵を与え、小田原城の支城である忍城を責めさせました。

「武功もないくせに大きい顔をしやがって」と陰口を言われていた三成は、鼻息荒く息まいていました。

しかしその裏では忍城の城主、成田氏長は秀吉と通じており、すぐに降伏・開城する事が決まっていたのです。

降伏か、戦か

成田家存続のため、そして領民の命を守るためには降伏するしかありません。

重臣たちは戦国の世を生きる武士として悔しい気持ちがありつつも、当主の決定が最善だと理解しています。

それでもぬぐえぬ悔しさ、武功を上げたいという欲望、頭を下げて生き延びねばならないという屈辱。

これらに耐えて、耐えて、耐えて。

ついに三成の軍がやってきました。

主人公の成田長親は、城主氏長が小田原城にいる間の代理としての役割をしていました。

全員納得の上の降伏。

あとは長親が使者に対して「降伏いたす」と言うだけ。

その時、長親の口から出てきたのは「戦いまする」という言葉でした。

みんなから”でくのぼう”とバカにされていた長親は、実は誰よりも誇り高き武士だったのです

家臣たちも最初は反対しますが、そこにいるのは関東武者の血を引き継ぐものばかり。

勇ましく戦うことを決めます。

癖が強くとも腕は立つ家臣たち

士気は高く、地の利がある成田家でしたが、数の差は歴然でした。

領民を合わせても3千に満たない成田勢に対し、三成勢は2万もいます。

この戦に勝つためには、いくつもの奇跡が必要になってきます。

そこで活躍するのが、癖が強くて扱うのが難しいけれども実力は折り紙付きの家臣たちです。

  • 小柄でありながら誰よりも軍略に通じている酒巻靱負(さかまきゆきえ)
  • 圧倒的な膂力によって敵を薙ぎ払う柴崎和泉(しばさきいずみ)
  • 漆黒の魔人の異名を持ち、成田家の家臣をまとめる正木丹波(まさきたんば)

これら3人の家臣を中心にして、忍城の門を守ります。

時に退散するフリをして城内に誘い込んだり、時に水堀を決壊させることで敵を濁流で飲み込んだり、時に圧倒的な槍の実力で戦意を喪失させたりと。

家臣たちの知恵と武力によって圧倒的な数の差を覆し、成田家は緒戦をものにし、三成の軍勢を退けます。

全員が絶望した「水攻め」を攻略したのは…

大軍で圧倒するつもりが思わぬ苦戦を強いられた三成は、更に圧倒的な力で成田家を打ち負かそうとします。

それが「水攻め」です。

全長28kmにもおよぶ人口堤防で利根川と荒川の水をせき止め、忍城を水の孤島状態にしてしまいます。

しかもこれを圧倒的な財力によって、たった5日で完成させます。

天下を手中に収めんとしている秀吉の軍事力があるからこその戦い方と言えるでしょう。

この大技に対して成田家は全く手を出せず、本丸に3千人が籠城することになります。

なす術なし、と全員が絶望しかけたときに長親が動きます。

戦いも出来ない、交渉術もない長親だからできる驚きの行動によって状況を打開しにかかるのです…

この続きはぜひ本を読んで、その目で確かめてください。

ここでは語りきれない成田家の面々や三成の心情、そこに至るまでの多くの葛藤を感じ取ってからでないと、この本の面白さは味わえないです。

『のぼうの城』を読んだ感想

『のぼうの城』の中心に長親がいるのは間違いないのですが、敵方、味方の登場人物たちにも魅力がたくさん詰まっています。

そこで、ここではわたしが感じた「登場人物たちの魅力」を紹介していきたいと思います。

1人1人の魅力を知ることで、「わたしたちが知らない歴史の1ページにはこんな人たちが活躍していたのかもしれない」とロマンあふれる妄想を楽しめるでしょう。

主人公の魅力

まずはこの物語に欠かせない主人公、成田長親の魅力です。

長親の魅力を一言で表すなら、「謎」です。

この作品では、長親の考えや行動原理は一切語られません。

そのうえ、本人は誰もが理解しがたい行動をしています。

それゆえ「謎」。

だからこそ、わたしたち読者は引き込まれていきます。

なんでこんなことを言ったんだろう?

この行動にはどんな意図があったのかな?

本当に長親は”でくのぼう”なんだろうか?

そんな疑問を抱きながら読み進めていくうちに、長親のことを好きになってしまうのです。

まさに成田の領民が、長親を気のおけない人と慕うように。

家臣たちの魅力

次は荒くれ物の家臣たちです。

その多くはくせものぞろい。

子供がそのまま大きくなったかのように「力こそ正義!」という者もいれば、初陣の癖に「我こそは毘沙門天の化身!」と名乗ってしまう若造まで。

その中でもわたしが好きなのは「甲斐姫」です。

甲斐姫は城主氏長の娘で、他の領地にまで知られる美貌の持ち主です。

しかし、男さながらの武辺者でもあり、町の強姦魔を自ら切り捨ててしまうほどの豪胆さを持ち合わせています。

この甲斐姫が長親を一目置いている場面や、家臣たちに腕っ節で勝ってしまう場面では、戦国時代の姫の聡明さや強さを垣間見ることができます。

敵方の魅力

良い作品には良い敵役はつきものです。

そしてこの作品の敵役と言えば、「石田三成」です。

まさにイメージ通りの堅物っぷりでありながらも未熟さが垣間見えることで、人間味を感じさせてくれる三成。

彼には不思議な魅力があります。

特に秀吉との会話の際には、2人の性格の違いがあまりにはっきりとしていて、なんだか夫婦漫才のように感じてしまうことでしょう。

なんだか憎めない堅物キャラクターだからこそ、ラストシーンの行動に納得がいってしまうのです。

『のぼうの城』はどんな人におすすめ?

わたしが『のぼうの城』をおすすめしたいのは、このような人です。

  • 日本史の授業で戦国時代が1番面白いと感じていた人
  • 歴史小説に興味はあるが難しくて苦手に感じている人
  • キャラクターが際立っている小説が好きな人

この本は歴史小説のわりにとっつきやすく、キャラが濃いので飽きずに読めます。

丁寧な解説が入っているので歴史の前提知識がなくても理解できますし、歴史が大の苦手科目だった私でも知っているエピソードがいくつかありました。

そのうえ、登場人物の性格像が浮き彫りになるような史実も織り交ぜてくれるので、「本当にこんな人だったんだろうな」と思わせてくれる説得力を感じることでしょう。

トリビア的な話もたくさんあるので、もちろん歴史好きの方も楽しめること間違いなしです。

おわりに|歴史小説の最初の1冊としては珠玉の作品

本のジャンルとして、歴史小説はそこまでメジャーなものではないかもしれません。

書店に行けばミステリーやファンタジー、短編小説やノンフィクションものが数多く並んでいます。

しかし、ここで一度新しいジャンルに手を伸ばしてみませんか?

歴史小説は結果が分かっていても面白い、不思議なジャンルの本です。

ぜひ歴史小説の最初の1冊として、『のぼうの城』から始めてみてはいかがでしょうか?

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