三浦しをんさんと言えば、映像化された『まほろ駅前多田便利軒』シリーズが有名です。
軽いタッチの作品と、エッセイでも独自の視点で描かれていて多くのファンを獲得しています。
そんな三浦作品で異色を放っているのが、ご紹介する「光」です。
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『光』のあらすじ
この作品は、日本にある架空の島を大震災が襲うところから始まります。
中学生だった主人公の男の子、付き合っていた同級生の彼女、年下の幼馴染の三人を軸に物語が進んでいく形式です。
三人はなんとか助かり、被災を乗り越えて大人へと成長することができました。
しかし、この三人には共通の秘密ができてしまいます。
狭い島での生活、被災したときの非日常の中で子供とはいえ犯してしまった罪…。
普通ではない状況がもたらした罪が、大人になってそれぞれの道を歩んでいた三人の人生を狂わせていく…。
『光』を読んだ感想
とてもハードな内容であり、ミステリー要素を含んだお話となっています。
三浦しをんさんの他の作品と比べると、とても重い雰囲気をもっていることから「裏しをん」とファンの間ではささやかれているほどです。
文庫本では370ページほどと、長編小説としましてはそれほど長いお話ではありません。
それでも、先にも述べましたように内容が濃いために、読んだ後には思わずため息が出てしまうこと間違いなしです。
読んだ感想としましては、震災を扱った作品ということで、やはり東日本大震災を連想せずにはいられませんでした。
けれども、作品の書かれた年を見てみますと最初に雑誌に掲載されたのは2006年とあります。
震災の5年も前の話ですよね。
それにも関わらず、島を揺らした地震の様子や、被災した島人の様子がとてもリアルに描写されていました。
読んでいて、胸が苦しくなったことを覚えています。
被災した子供時代を乗り越えて、主人公たちは大人となり、それぞれに新しい人生を歩み始めた主人公たち。
主人公は結婚をし、家庭を築いたサラリーマンとなりました。
そんなところへ、幼馴染が持ってくる忘れられない過去の罪…。
震災を乗り越えてもなお、震災をなかったことにはできないという時間の流れもまた、今の震災後の私たちのようだと思いました。
おわりに
毎年、3月11日には国をあげて追悼式が開催されています。
一人一人に物語があり、それは苦い思い出が大半でしょう。
忘れることができるのであれば…、いえ、むしろなかったことにさえしたい出来事かもしれません。
小説と現実は違うと思いながらも、どこかで実際の出来事とリンクさせてしまう…。
そんな、不思議な力を持った小説です。
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