ポーランドのスタニスワフ・レムという作家が、地球外生命体とのコンタクトを描いたSF小説「ソラリス」。
2017年にはNHKの「100分de名著」にも取り上げられた、知る人ぞ知る名作です。
皆さんは「地球外生命体とのコンタクト」と聞いたとき、どんな地球外生命体を思い浮かべるでしょうか?
人型の宇宙人でしょうか?タコ型や虫型など様々な生命体を思い浮かべた人もいるでしょう。
「ソラリス」で主人公たちが対峙する地球外生命体は「海」です。
海が生命体とはいったいどういうことなのか、そもそも海とどんなコンタクトを取るのでしょう?
著:スタニスワフ レム, 翻訳:沼野 充義
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『ソラリス』のあらすじ
惑星ソラリスはほぼ全体がゼリー状の「海」に覆われた惑星です。この「海」には何かしらの理性があるのでは、という仮説が長年提唱されており、主人公のケルヴィンはその研究をするためにソラリスへ降り立ちます。
ソラリスにはすでに先遣隊がおり、彼らと合流して研究を行うため、ソラリスの上空に浮かぶ宇宙船へ乗り込みました。
しかし、先遣隊の様子が何やらおかしいのです。
1人は部屋に閉じこもり、もう1人も酒を飲みながらうわごとをつぶやいています。
しかも先遣隊のメンバーでもあったケルヴィンの友人は自殺してしまったといいます。
その原因は「海」が作り出した「お客さん」。
ケルヴィンのもとにも「お客さん」が現れます。
それは、自殺してしまったかつて恋人の姿形をしています。
記憶や話し方もいるはずのいない恋人そっくりのこの「お客さんは」、ところどころで確実に人間ではないことを感じさせる振る舞いをするため、ケルヴィンも段々と精神を消耗していきます。
「海」はなぜこんなことをするのか、ケルヴィンは偽物の恋人とどのような結末を迎えるのか、「海」はいったいなにものなのか。
というストーリーです。
『ソラリス』を読んだ感想
この本の1番の見所は人間に理解できない「海」の振る舞いです。
そもそも「お客さん」をどんな意図で宇宙船に送り込んでいるのか。
精神攻撃の為なのか歓迎のつもりなのか、あるいは何かしらの実験なのか。全くわからないまま物語が進んでいきます。
何を考えているのか、そもそも理性があるかどうかもわからない「海」を相手に、読んでいるこちらまで混乱し不安な気持ちになりますが、それでも「海」や「お客さん」の謎を解き明かしたいとどんどん読み進んでしまいます。
また、小説の中盤では「海」の複雑な活動について数ページにわたって記述されている部分があります。
表面から突起を伸ばしたり、爆発を起こしてみたり、じっくり読みこまないと情景がイメージができないような、読者の想像力を試す読み応えのあるシーンです。
おわりに
「地球外生命体とのコンタクト」と聞くと私たちは無意識に彼らとコミュニケーションが取れる、あるいは取れないとしても相手が何をしているのかわかる、という前提をもってしまいます。
この小説はそんな前提をひっくりかえし、私たちの想像力を試す1冊です。
ぜひ、あなたもケルヴィンと一緒に「海」の謎に挑んでください。
著:スタニスワフ レム, 翻訳:沼野 充義
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