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『モモ』感想|一人一人の人間が与えられる時間の豊かさや、美しさを見失ってはいけない

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『時間どろぼうと、ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子の不思議な物語』

こう書かれた文章が印象的な児童書を、子供の頃、図書室で見た覚えはありませんか?

この物語は、大人になるとなぜか消えてしまう”時間”をテーマにした児童文学です。

”時間”は人間が人間らしく生きる、心の中に存在するもの。

大人にこそ読んで欲しい、物語となっています。

全てを読み終えたとき、”時間”をたっぷりと取り戻したような、豊かな気持ちになるでしょう。

著:ミヒャエル・エンデ, 著:大島 かおり
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『モモ』の概要

出典:Amazon公式サイト

タイトルモモ
著者ミヒャエル・エンデ
出版社岩波書店
出版日1976年9月24日
ジャンル児童文学

『モモ』は作者であるミヒャエル・エンデが、人から聞いた物語。

エンデが長旅をしているとき、汽車の中で出会った、老人か若い人か検討のつかない不思議な人物から聞いたそう。

話をしてくれた人物とはその1度きりで、生前エンデは、話してくれた人物に再び会って、伺いたいことがたくさんあると言っていました。

そんなエピソードも物語も不思議な『モモ』。

『モモ』を優しく彩っている表紙や挿絵は、エンデ自身によるものです。

『モモ』のあらすじ

みんなが口を揃えてこう言います。

「モモのところに行ってごらん!」

モモは人の話をしっかりと聞くことができました。

本当の意味で人の話を聞くことができる人は、滅多にいないものです。

モモとその友だち

モモには多くの友だちがいました。

皆、モモに話をしに行きます。

話を聞いてもらうと、急に自分の意思がはっきりとするのでした。

例えば、こんな風に。

「俺は俺なんだ、世界中の人間の中で、俺という人間はひとりしかいない、だから俺は俺なりに、この世で大切な存在なんだ。」

このように、いっきに気持ちが前向きに。

モモは話を聞くだけで、話した人が自分自身を肯定したくなる、不思議な力を持っています。

モモが話をじっくり聞いたことで、自分自身を取り戻せた人たちがたくさんいました。

灰色の男たち

”時間とはすなわち生活ーそして人間の生きる生活は、その人の心の中にある”

このことを誰よりもよく知っていたのは、灰色の男たち。

灰色の男たちは、大都会の人々の暮らしに忍び込み、人間の財産である”時間”を奪っていました。

モモは時間を奪われた町の人たちを助けるため、灰色の男たちに立ち向かいます。

友人たちも立ち上がり、声を張り上げました。

「もしみんなが力を合わせるなら、人間に降りかかった災難など、いっぺんで吹き飛ばせるんだ」

困難が降りかかったときこそ、人々は力を合わせるべきだと、そう感じました。

時間の花

モモは、甲羅に文字を映し出す不思議な亀に導かれ、時間の国へ。

そこには、時を操るマイスター・ホラがいました。

マイスター・ホラは、時間の尊さをモモに教え、力を貸します。

「人間は一人一人がああいう金の時間の殿堂を持ってる、それは人間が心を持っているからだって。」

モモはいくつもの茨の道をくぐり抜け、無事街の人々に”時間”を返すことができました。

モモと街の人々は、穏やかに挨拶をし、会話を楽しみながら生活をしています。

『モモ』を読んだ感想

「もし人間が死とはなにかを知っていたら、怖いとは思わなくなるだろうにね。そして死を恐れないようになれば、生きる時間を人間から盗むようなことは、だれもできなくなるはずだ」

ずっと続くものでないから、時間を大切にし、今を精一杯生きることが大切。

時間とは人生とは考えさせられる

時間がない、あっという間に月日が経っている、そう感じると焦ったり少し悲しくなったりするものです。

時間がないと感じるのに、過去にとらわれていたり、遠い先のことを不安に思ったり。

どうしたら、毎日を大切に生きることができるのか?

答えは、マイスター・ホラが教えてくれました。

それは、”今を大切に生きる”ということでした。

今この瞬間を一生懸命生きると、死への恐怖心はなくなると。

見えない未来や、過去の辛い経験に囚われていては、一生辛いまま。

『モモ』が人生の答えのようなことを伝えている、奥が深い物語だと、子供の頃は思いもよりませんでした。

好きな言葉

物語の中に出てくる言葉は、優しい言葉や、美しい言葉が散りばめられています。

中でもお気に入りの言葉は、序盤に出てくるの言葉。

”舞台の上で演じられる悲痛な出来事や、滑稽な事件に聞き入っていると、不思議なことに、ただの芝居にすぎない舞台の人生の方が、自分たちの日常よりも真実に近いのではないかと思えてくるのです。みんなは、このもう一つ現実に耳を傾けることを、こよなく愛していました。”

現実を生きる私たちが、読書や映画を楽しむことと同じだと感じました。

作者のミヒャエル・エンデは、芝居と観客の関係を、この本の物語と読者の間に期待していたとあり、その思いが込められた言葉です。

『モモ』を架空の出来事として楽しみながら、もう一つの現実とし共に生きているような気持ちに。

大人こそ読みたい物語

子供の頃は、自分も冒険しているような気持ちで『モモ』を読んでいました。

しかし、大人になってから読むと、ありふれたの冒険小説ではないことがわかります。

人生をどう生きるかを問いかけられているような、または注意勧告されているような気持ちに。

私たちが忙しい日常を過ごしているうちに、忘れてしまったことを思い出させてくれる、ずっとそばに置いておきたい小説です。

『モモ』はどんな人におすすめ?

『モモ』はこんな人におすすめです。

  • 忙しさに追われている
  • 子どもの頃『モモ』を読んだことがある
  • 温かい気持ちになりたい

忙しさに追われている人は、『モモ』を読んでホッと一息を。

時間が別の何かに奪われていないか、自分らしい時間を過ごせているか、確認してみてください。

また、子供の頃『モモ』を読んだことのある人は、大人になった今読むと新しい発見があるでしょう。

子供の頃も、大人になっても『モモ』が与えてくれる温かい気持ちは変わりませんが、読む時々によって、感じることが変化するかもしれません。

おわりに

今回は、児童文学のミヒャエル・エンデ作『モモ』をご紹介してきましたが、いかがでしたか?

ミヒャエル・エンデは、生前このように語っていました。

「私はこの物語を、過去に起こったことのように話しましたね。でもそれを将来起こることとしてお話しても良かったんですよ。」

エンデは『モモ』を通じて、忘れてはいけない大切なことを、後世の人たちに知らせたかったのだと思います。

一人一人の人間が与えられる時間の豊かさや、美しさを見失ってはいけませんね。

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