日本の金融界は幼稚園のような甘い護送船団方式で守られていた
終戦直後からバブル崩壊までの間、日本の銀行は1社も潰れていない。
それは一重に、金融庁が、いや日本政府が銀行を潰してはならない。
との厳命であった。
その弊害が銀行のあらゆる面で出たのであった。
例えば、銀行である顧客(一般客または企業を指す)より「お上」を優先する。
「お上」に睨まれたら、と銀行業としてやっていけない。
潰れない銀行にするのは、金融庁=「お上」に盾を付かない銀行なのです。
おりこうな銀行は、決して「お上」が放おっては置かない、助けてくれるのです。
そんな中で「お上」に、この物語で云う金融庁に猛然と盾付く半沢次長。
その理路整然とした反駁に小気味よさを感じるのであった。
最終的には、この物語は金融庁と古い銀行の内部との対決を見せるのです。
著:池井戸潤
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『オレたち花のバブル組』のあらすじ:半沢直樹の第二幕の危機
東京中央銀行の営業第二部に戻ってきた半沢直樹次長。
そこで待ち受けて居たのは、老舗である「伊勢島ホテル」の経営再建の依頼だった。
しかし、「伊勢島ホテル」には内部の権力闘争とそれに絡む銀行内部の癒着の構図が
出来上がっていたのだった。
そんな中で、金融庁の主任検査官である黒崎が、東京中央銀行へ金融庁検査を行う知らせが届き、明らかに「伊勢島ホテル」の業績不振を暴こうとする狙いがあった。
半沢次長は、同じ同期で出向した近藤の務めるタミヤ電機と東京中央銀行の上層部に不正の融資があったことを見抜く。
半沢次長は、なんとか黒崎検査官が担当する金融庁検査を乗り切り、その背後で暗躍する東京中央銀行の大和田専務の伊勢島ホテルへの120億の損失を知りながら、200億円の不正融資を行っていたのを突き止める。
最後に大和田専務の悪事を中野渡頭取の前で暴き、「伊勢島ホテル」は湯浅社長とアメリカの「フォルスター」グループの傘下に入ることで救われるのである。
バンカーに見る秘話
30年前に遡ること世間でも有名になった「イトマン事件」をご存知だろうか?
これは元、住友銀行(現、三井住友銀行)の役員であったものがイトマンに不正融資を行い、その資金の一部が暴力団や反社会組織に流れたとの問題である。
1998年には、富士銀行(現・みずほ銀行)の行員が自分の顧客の定期預金の資金を別の顧客に不正融資を行い、その発覚を恐れた行員がその顧客の夫婦を殺害した。
更に、2007年には三井住友銀行の部長代理が、和歌山県の男性を暴力団と共謀して殺害に関与している疑いで逮捕された。
このように銀行の行員が犯した事件にはある種の特徴があるのです。
つまり、自分を守る、自己保身の欲が非常に強く、その事件の動機となることが多いと思われます。
池井戸潤さんの作品には、その正義と悪事に対する対決がにじみ出ています。
銀行員はエリートであるが故にどうしても今の地位や収入を守ろうとしてしまうのです。
一種の悲しい業界かもしれません。
銀行が午後3時に閉まる本当の理由とは
いつも感じていました。
もう少し、遅くまで銀行が開いていればとよく思っていました。
その銀行が3時に閉まり、その中では行員たちが、その日のお金の出入りを計算しています。
もし、1円でも合わなければ、合うまで家には帰れない。
というように行員たちは、必死で働いていたのです。
むしろ銀行が閉まってからの方が忙しい。
という声もあります。
しかし、実際には銀行内部では銀行が空いている時間以外に、閉まっている時間帯に世間一般から隠す銀行業務が行われているという事実です。
普段、銀行の内部は世間一般の目からは見えません。
特に、メガバンクほど、より大きなお金を扱う分いろいろと誘惑はあります。
これらの誘惑を拒絶して真っ直ぐな道を歩むバンカーが大半ですが、池井戸潤さんの作品にはそれらの大きな悪を白日の下に晒した功績があります。
この物語もバブルというお祭り騒ぎに紛れた「銀行が閉まる3時以降」という悪夢だったのでしょう。
これは池井戸潤さん自身のバンカー時代に経験したこともあるようです。
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