ある小さな図書室のレファレンスカウンターから、この言葉が聞こえてきます。
「何をお探し?」
少し高圧的とも思える司書さんの言葉から、図書室に訪れた利用者とのやりとりが始まります。
この司書さんの愛想は決して良くありません。
ですが、利用者の話にしっかりと耳を傾け、需要に見合う適切な選書をしてくれます。
その選書の中には少し意外に思える本があったり、本だけではなく、かわいい付録も付いてきます。
利用者は不思議に感じてしまいますが、その本や付録が、やがて利用者の人生を後押しするアイテムとなっていくのです。
さっそくこの本の中の司書さんに会いに行きましょう。みなさんなら、どんなレファレンスを依頼しますか。
著:青山美智子, 写真:小嶋淑子, その他:さくだゆうこ
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『お探し物は図書室まで』の概要
出典:Amazon公式サイト
タイトル | お探し物は図書室まで |
著者 | 青山美智子 |
出版社 | ポプラ社 |
出版日 | 2020年11月11日 |
ジャンル | ハートウォーミング |
司書さんの意外な選書とかわいい付録のおかげで、自分が探していたもの、自分が進むべき道、が見えてきて、頑張る気力が湧いてくる。
そんなハートウォーミング小説です。
全5章からなる連作短編集。
2021年本屋大賞ノミネート作品で、2位に選ばれました!
『お探し物は図書室まで』のあらすじ
小学校に併設されたコミュニティハウスの中にある小さな図書室。
そこで働く司書さんと、そこに訪れた悩める5人の利用者がやりとりをはじめていきます。
悩める方たち
- 朋香 21歳 婦人服販売員
- 諒 35歳 家具メーカー経理部
- 夏美 40歳 元雑誌編集者
- 浩弥 30歳 ニート
- 正雄 65歳 定年退職
みんなそれぞれ何かに思い悩む中、あるきっかけで小さな図書室を訪れ、司書さんに選書をしてもらうことになります。
無愛想な司書さん
その司書さんはいつも、小さな図書室のレファレンスカウンターに座っています。
彼女の名は「小町さゆり」さん。
彼女はエプロンの上にカーディガンを羽織り、髪の上には小さなおだんごがあって、そこにかんざしを挿している、体が大きな女性でした。
そしていつも、うつむいて何か作業をしています。
彼女の接客対応は…? 決してほめられたものではありません。愛想は良くないです。
ですが、適当に仕事をしているわけではなく、レファレンスカウンターへ相談にやって来た利用者の話にはしっかり耳を傾けて、必要としている本を選んであげるのです。
司書としての仕事はきっちりこなしていきます。
意外な選書
小町さんがそれぞれの利用者に選んだ数冊の本の中には、明らかに利用者側が求める内容ではない本が1冊含まれています。
利用者は不思議に思いつつも借りていくのですが、その1冊が、利用者たちの考えや視点を変えるきっかけになったり、人生を後押しする力をくれる1冊になるのです。
かわいい付録付き
小町さんが選んでくれるのは本だけではありません。
本と一緒にかわいい「付録」もくれるのです。その付録とは何か…?
それはレファレンスカウンター下の引き出しに入っている「羊毛フェルト」。
5人の利用者それぞれに、
の形をしたかわいい羊毛フェルトを付録として渡します。
そしてその羊毛フェルトの付録も、本と同じように、やがて利用者の人生を後押しする力になってくれるものなのです。
『お探し物は図書室まで』を読んだ感想
読んでいて、何度もほっこりとした気持ちになりました。
その小さな図書室は、単に本がたくさん置いてあって静かなところ、というだけではありませんでした。
そこは人と人、本を見に来た人や借りに来た人と、本を提供する人との心温まるやりとりが存在する場所だったんだ、ということがよくわかりました。
小町さゆりさんの魅力
小町さんのような司書さんは、現実の世界ではなかなかお目にかかれないと思います。
レファレンスカウンターでずっと羊毛フェルトを作ってるくらいですし、愛想も良くなくてちょっと怖いくらいです。
ですが、仕事はしっかりできて、信頼が置かれる存在。すごく優しいというわけではないですが、図書室を訪れた利用者にちゃんと寄り添ってくれる存在。
小町さんの素敵な魅力にひきこまれてしまいました。
羊毛フェルト
この本がきっかけで、羊毛フェルトのことを知ったという方も多いのではないでしょうか。
羊毛を針で刺して作っていくものなんですね。
小町さんが羊毛を針で刺すとき、
「ざくざく」「ぶすぶす」「ぐさぐさ」「つんつん」
といった言葉で表現されているのが印象的でした。
作っている姿をまわりから見た人は、少し怖く感じてしまうかもしれませんね。
本の表紙には、まさにその羊毛フェルトの作品が登場しています。
とてもお上手!と思ったのと同時に、これは相当、根気のいる作業なのでは、と思ってしまいました。
司書の存在
残念ながら、日本の司書は海外と違い、専門職で重要な仕事とはあまり認知されていないように見受けられます。
ですが、司書は本に関する膨大な知識を持っています。
そして利用者からレファレンスを受けた際には、所蔵するたくさんの本の中から、利用者が求める最適な本を選び出し提供ができるスキルを持っています。
地味ですが、やはりなくてはならない存在だと感じました。
『お探し物は図書室まで』はどんな人におすすめ?
『お探し物は図書室まで』は、こんな方におすすめです。
- 悩みやモヤモヤしたものを解消したい人
- 司書という仕事に興味がある人
- 図書館、図書室のような場所が好きな人
現状、悩みやモヤモヤを抱えている人がこの本を読むと、すっきりした気持ちになれるかもしれません。
普段、図書館や図書室にはあまり行かないという方は、この本をきっかけにして地元のそういった場所を訪れてみてはいかがでしょうか。
たくさんの本との出会いを楽しんでもらいたいと思います。
もしかしたら、「小町さゆりさん的な方」がいらっしゃるかもしれませんよ。
おわりに
お話の世界なので、もちろんありえないのですが、本を読み終わったあと、私も含めてこう思う方が多いと思います。
「私も、小町さゆりさんにお会いしたい!」
「私にも、何をお探し?って言ってもらいたい!」
そして、自分に対しては、
「どんな選書をしてくれるんだろう?」
「どんな付録をくれるんだろう?」
と、小町さんのセレクトに期待してしまうのではないでしょうか。
「小町さゆり」さんという存在。実在はしないけど、忘れたくないです。
なので、書籍のシリーズ化や映画化を期待しています。もし映画化になるなら、小町さゆりさんはどなたが適役でしょうか。
それを考えるだけでワクワクしてしまいます。
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