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『ストーリー・セラー』感想|有川浩が描く落涙不可避の人間ドラマ×奇病

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ストーリー・セラーは致死性脳劣化症候群という「思考すればするほど寿命が減る」架空の病を患い思考することを禁じられた女性の小説家と、その夫の苦悩と恋愛を切実に描いた作品です。

そんな切なくて泣ける、ストーリー・セラーのあらすじと感想を紹介していきます。

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『ストーリー・セラー』の概要

出典:Amazon公式サイト

タイトルストーリー・セラー
著者有川浩
出版社幻冬舎文庫
出版日2009年1月28日
ジャンルフィクション(恋愛)

デザイン事務所に勤める彼には気になる同僚がいました。

同僚の彼女はデザイナーを目標にする社員が多い中、ひたすらアシスタントに徹しています。

話してみると食費をエンゲル係数と表現する彼女。

彼は不思議な感覚を覚えつつも好意を抱きます。

ある日、会社で彼女の机から社内規定で禁止されているUSBが見つかります。

不正目的でないか彼はファイルを確認すると中身は全て小説で、彼女が趣味で書いていたものでした。

さらに、それらの小説は彼が好きな部類の小説で、自分の好きな小説を書く彼女に、彼は恋に落ちます。

彼女の小説をきっかけに二人は付き合うことになり同棲生活を始めます。

しだいに彼女は小説の腕を上げていき、小説家としてデビューするのですが…。

図書館戦争の有川浩が描く、心に直接響いてくるストーリー・セラーの感想を紹介していきます。

『ストーリー・セラー』のあらすじ

ストーリー・セラーは現実の小説家がside:Aとside:Bの二編の物語を書く、という構成になっています。

side:Aでは女性小説家が「思考すればするほど寿命が縮む」病を患い亡くなります。

逆にside:Bでは彼女の夫がすい臓の腫瘍が原因で命を落とす、というものです。

ストーリー・セラーは少し複雑で、単に一人の小説家が物語をつづりました、という話ではありません。

本の随所でside:Bの物語の大筋に近い流れで、現実の小説家の生活が描かれています。

つまり、小説家の書く小説(side:B)と実際の小説家の生活がリンクしながら話が進むのです。

フィクションの部分と現実の境界が曖昧になり、小説の内容がどこまで本当のことなのか分からなくなるという不思議な感覚になります。

作品に出てくる小説家の担当編集が「どこまで本当なんですか?」と質問するシーンがあります。当然彼女は「どこまでだと思います?」と言ってごまかして、答えは墓まで持っていくつもりのようです。

さらに、side:Bの結末と違って現実のシーンでは夫が亡くなる描写が出てきません。

夫の最後が不明瞭で終わるのでどうなったのか気になります。

side:Bは作者である有川浩の実話ではないかという噂もあり興味深いですね。

Side:A

「仕事を辞めるか、このまま死に至るか。二つに一つです」医師の冷たい宣告から始まるside:Aでは女性小説家が奇病に侵され、小説を書くのを辞めるか否かの極限の選択を迫られ、その様子を夫の視点から語られています。

趣味で小説を書いていた彼女が夫との出会いを通して小説家デビューし、評価される喜びを感じる一方、作品を書く重圧と周りの嫌がらせで少しづつ心がむしばまれていきます。

それらのストレスから最後には奇病を患い小説をやめることを迫られることになり…。

どんなひどいことになっても俺がいる――そう言い切る夫の姿は格好良くもありますが、彼の状況を考えるといたたまれない気持ちになります。

Side:B

side:BではAとは逆に夫が亡くなる話が彼女の視点で描かれており、この時の彼女はすでに小説家としてデビューしています。

冒頭でネタに悩んだ彼女が夫からside:Aとは逆に夫が死ぬ話を書いてみたらと提案されます。この提案を皮切りに彼女は夫が死ぬ話を書き始めますが、同じ頃に現実の夫が交通事故に遭ってしまうのです。

事故の検査で見つかった、夫のすい臓に取りつく悪性の腫瘍。

彼女は夫が死ぬ話を書いた罪悪感にさいなまれながらも、夫が死なないという逆夢を起こすため必死で物語を紡ぎ続けます。

果たして彼女は悪夢を覆すことができるでしょうか。

面白そう。夫が死ぬという話は面白そう。

そんなことを考えていたから――

だから、これはバチが当たったのだ。

病気で死にかけの夫とそんな夫を救いたい彼女の必死さには涙を誘われます…(泣)

『ストーリー・セラー』を読んだ感想

ストーリー・セラーを実際に読んで感動した私が、どういうところで泣いて考えて有川浩に感服したかお伝えしていきます。

設定の斬新さ

「思考すればするほど寿命が縮む」というのはありそうでないSFチックな設定です。

この設定により小説をとるか時間をとるかの二択を小説家の彼女に迫り、より彼女の小説家としての生きざまと彼との関係性を引き立てています。

純粋な言葉の応酬

彼女はどちらかと言えば本音を相手にぶつけるタイプで、紡ぎだされる言葉は彼女の価値観や倫理観を如実に示し、こちらが考えさせられることも多いです。

彼と彼女の会話は死を意識する分、目頭が熱くなることが多々あります。

細かくちりばめられた伏線

作中の様々なところで小さい伏線が存在し読んでいて伏線が回収される度に面白いなと感じました。

その伏線を利用した二人の恋愛が可愛いと思うこともあり読んでいて楽しかったです。

深い愛情表現

二人の愛情が深すぎて読めば読むほど涙腺のダムが溜まっていき、ダムが決壊する度に有川浩の表現力に泣かされます。

ただの喧嘩でもお互いの本音がぶつかり合うので、二人の胸の内を読んで知る度に切なくなりますし、そんな二人の絆に憧れを抱くこともありました。

『ストーリー・セラー』はどんな人におすすめ?

ストーリー・セラーは全体的に恋愛と避けられない死の組み合わせで描かれており、愛情が深いだけに死を意識する場面では涙を誘われます。この本をおすすめしたい人は以下の3つのどれかに当てはまる人です。

  • 切ないラブストーリーが好きな人
  • 少しでも小説を書いたことがある人
  • 主人公に感情移入しやすい人

切ないラブストーリーが好きな方は彼と彼女の関係性にきっと憧れるはずです。彼女が自分の命を削ってまで小説を彼に読んでもらいたいと決心するシーンは感動します。

また、この作品は小説家をモデルにしているので小説を書いている人のリアルな悩みや葛藤などを垣間見ることができ、自分で一度は小説を書いたことがある人は共感できる部分が多いと思います。

主人公に感情移入出来る人はどんな小説にとっても良き読者であることは間違いないですが、ストーリー・セラーで感情の波に乗ることができれば新たな感動を得られること間違いなしです!

まとめ

有川浩の描く、奇病を患った女性小説家とその夫の物語の感動はあらすじだけでは伝わらないので、ぜひ一度は手に取ってほしい作品です。

お互いに死を意識した二人の会話の場面は言葉一つ一つが切なくなってくるので、読む際はお手元にティッシュ箱を待機させておくことをおすすめします(笑)

ストーリー・セラーがあなたにとって大切な一冊となりますように!

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