罪を犯した者は、罰を背負って生きることになります。
しかし、罪とはいったい何なのでしょうか。
そして罪に対する罰とは。
世の中には様々な罪があり、罪に軽い重いといった基準があるのか?
そして罪を裁くのは誰か。
そこに救いはあるのか。
この小説には作者からの問いかけが込められています。
著:東野 圭吾
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『白鳥とコウモリ』の概要
出典:Amazon公式サイト
タイトル | 白鳥とコウモリ |
著者 | 東野圭吾 |
出版社 | 幻冬舎 |
出版日 | 2021年4月7日 |
ジャンル | 日本文学 |
東野圭吾作家生活35周年記念作品。
帯には『白夜行』『手紙』――新たなる最高傑作、東野圭吾版『罪と罰』とあります。
数々の名作を生み出してきた著者ですが、帯に書かれているとおり本作は間違いなく東野圭吾の代表作に加えられるであろう重厚な一作です。
『白鳥とコウモリ』のあらすじ
一人の弁護士が遺体で発見されます。
捜査をすすめる中で一人の容疑者が浮上し、やがて男は犯行を自白するのですが、そこには二つの事件をめぐる人間たちの『罪と罰』がありました。
容疑者の告白
東京都港区湾岸の路上に停まった車の後部座席から、包丁で刺された弁護士、白石健介が発見されます。
この事件を捜査するのは警視庁捜査一課の刑事、五代努。
捜査をすすめる中で一度だけ白石弁護士に電話した倉木達郎が浮上。
聞き込みをしますが、言動にあいまいな点が多く五代は不信感を抱きます。
発見されたスマホから白石弁護士の行動を調べると、倉木が門前仲町にある『あすなろ』という小料理屋に通っていたことが判明。
その店主、浅羽洋子と娘である織恵に話を聞くと倉木さんはいい人だったと答えます。
そして洋子は、30年前に夫が金融業を営む男性を殺したと、警察に誤認逮捕され拘置所で自殺したことを恨んでいました。
五代は過去に遡りこの事件を調べます。
そこから浮かび上がる事実。
この事件の第一発見者は倉木達朗だったのです。
問い詰めると倉木は30年前の事件も今回の事件もすべて私がやりました、と犯行を自供したのでした。
真実を追いかける
倉木の息子、和真は父の言動から「父はそんな人間じゃない」と感じます。
殺された白石弁護士の娘、美令もまた父が倉木に昔の事件のことで強く真実を述べるように迫ったなど、倉木の言動に不信感を抱きます。
しかし和真の弁護士や、美令の弁護士、検察そして警察も倉木の供述には殺人の動機にも信憑性があり、事実関係を深く掘り下げることはしません。
和真と美令は、加害者の家族と被害者の家族という立場はまったく違う二人ですが、真実を知りたいという思いは同じでした。
「あなたの父親は嘘をついています」
と美令は和真に言い、立場は違いますが共に真相を追い求めていきます。
明らかになる事実
倉木はなぜ嘘をついているのか?
和真と美令は自分の父親の過去を調べ、いくつかの事実をつきとめ五代刑事に伝えます。
五代は30年前に起きた金融業者殺害事件と、弁護士が殺された事件に再度迫ります。
30年前に起きた事件の背景に何があったのか。
そもそもの始まりはいったい何だったのか。
やがて浮かび上がってくる真実。
そこには倉木が命をかけて守りたかったものがあったのでした。
『白鳥とコウモリ』を読んだ感想
罪を犯した者が罰を背負って生きています。
その心情が苦しく切ない。
事件に関わった当事者たちの背景に何があったのか?
その事実を追いかける者たちに突きつけられる厳しい現実。
『罪と罰』の問題は深く答えはないのかもしれません。
だからこそ一生かけて考える意味があるのだと思います。
罪と罰とは
登場人物たちが犯す罪があります。
もし自分がその立場だったらどうするかを考えずにはいられません。
罪を犯すことは悪いと思う反面、人を守るために犯した罪が百バーセント悪いとも思えません。
そして罪に対する罰とは何なのかを考えさせられる小説です。
真実を知ることの厳しさ
この小説は加害者の家族や被害者の家族、双方の立場で物語を読むことができます。
どちらも事件の被害者であり罪は憎いことです。
しかし、それと同じくらい当事者たちにとって真実を知るということは重要なことではないでしょうか。
そして真実は知ったからといって必ずしも良い気持ちになるもではない、けれどそれを知ることから全てが始まるのだと思います。
登場人物たちの心情が苦しい
誰かを守るために犯した罪が、他の誰かを傷つけまた罪が生まれる。
必死で罪を償おうと生きる人たちの気持ちに胸が詰まります。
罪を犯し罰を受け生きる。
はたしてそこに救いはあるのでしょうか。
『白鳥とコウモリ』はどんな人におすすめ?
『白鳥とコウモリ』はこんな人に読んでほしい小説です。
- 重厚なミステリーが読みたい人
- 罪と罰について考えたい人
- 東野圭吾の小説が好きな人
この作品はスマホやSNS、監視カメラといった現代の社会事情をリアルに織り交ぜながら、『罪と罰』という大きなテーマを読者に問いかける社会派小説です。
また東野圭吾の持ち味である物語の構成力、人物の心情が深く描かれミステリーとしても一級のエンターテイメント作品に仕上がっています。
522ページという長編作品ですが、読みやすい文章と展開で最後まで一気読み必死です。
おわりに
人間は弱い心を持った動物です。
この行いは間違ったことと頭ではわかっていても、それを選んでしまうことがあるのではないでしょうか。
罪を犯した者が心から申し訳ないと思い、自分にできることを一生かけて償っていく。
たとえ完全に罪を償うことはできないにしても。
作中で美令は弁護士から
「罪と罰の問題はとても難しくて、簡単に答えを出せるものじゃない」
『白鳥とコウモリ』521ページ
と言われます。
人がこの世の中に生きてる限り『罪と罰』の問題は解決されることのない永遠のテーマではないでしょうか。
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