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『午後からはワニ日和』感想|平和な動物園で巻き起こる、緊迫感あふれる事件たち

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動物園、と聞いて物騒なことを考える人はそういないでしょう。

動物園とは基本的に平和でのほほんとしたイメージが多い場所です。

ごくまれに動物が脱走したなんてニュースも見かけることには見かけますが……。

しかしそれはあくまで客の目線での話です。

職員たちは毎日、動物の世話や客への見せ方での工夫、企画や研究などに明け暮れています。

忙しなく職員たちが働く動物園で、少し変わった盗難事件が起きたりなんかすれば、一気にてんてこまいになってしまうことでしょう。

そう、本作の、楓ケ丘動物園のように……。

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『午後からはワニ日和』の概要

出典:Amazon公式サイト

タイトル午後からはワニ日和
著者似鳥鶏
出版社文藝春秋
出版日2012年3月9日
ジャンル動物園ミステリー

本作品は〈動物園〉×〈ミステリー〉といった、少し変わったテーマの小説です。

変わったテーマだからこそ読みやすいシンプルな文体でテンポよく物語は進みます。

つい動物園に行きたくなる、そんな素敵な作品でした。

『午後からはワニ日和』のあらすじ

平和な楓ヶ丘動物園で、ある日事件が起きます。

それは展示している動物の盗難でした。

犯行現場である爬虫類館には動物を盗んだこと、そして文末に〈怪盗ソロモン〉と書かれた紙が1枚ありました。

扱いの難しいイリエワニを一体だれが盗んだのか、その動機はなんなのか。

個性豊かな飼育員たちが真相を追求していきます。

個性豊かな飼育員たち

語り手である桃本が担当するのはアフリカ草原ゾーンの数種類です。

キリンによく顔を舐められるなど、彼は昔から動物になつかれやすいタイプのようでした。

獣医兼猛禽類担当の鴇(とき)先生はダチョウのオスにいつも求愛されています。

クールビューティーな女性ですが、少し可愛い一面もあるようです。

爬虫類館担当のひとりである服部は園内公認の変な人でした。

けれど仕事はまるで有能な秘書のように出来る人間です。

そして小さな子供たちに人気のふれあいひろばでアイドルのようなポジションにいるのが、七森という女性です。

大きなおともだちのファンがいたり、職員からも人気が高い彼女には、実はなにか秘密があるようで……?

狙われた動物園

楓ケ丘動物園は特に変わったところのない、ごくごく普通の動物園です。

客もそれなりに入り、GWは特に忙しい……ありふれた動物園と同じでしょう。

だからこそ、そんなごくごく普通の楓ケ丘動物園で動物の、しかも扱いの難しいイリエワニの盗難が起こるなど、だれも考えていませんでした。

飼育員たちはただでさえ忙しい業務のなか、さらにてんてこまいになっていきます。

動物盗難事件

イリエワニの盗難事件について、園長の指示のおかげでマスコミが偏った報道をすることはありませんでした。

もちろん警察にも連絡し、刑事がやってきて調査は進みます。

しかし服部は職員全員にアリバイを聞き込んだり、桃本と鴇先生も自ら調査を始めたりと、飼育員たちはやりたい放題です。

大切な動物が盗まれたり、アイドルポジションの後輩が悩んでいたり……。

彼らは動かざるをえなかったのでしょう。

『午後からはワニ日和』を読んだ感想

動物園って裏はこんなふうなんだ、こうやってるんだ。

ミステリーでありながら動物園の裏側事情も知れるという一石二鳥な作品でした。

ミステリー特有のハラハラドキドキ感もしっかりあり、それでいてコメディチックな一面もあります。

読んでいて一切飽きない、素敵な作品です。

たのしい非日常感

動物園、という時点で少し非日常感があるのではないでしょうか。

それに動物園は老若男女が楽しめる場所です。

そんな場所で起こるミステリー事件、あなたには想像がつきますか?

被害にあったのは動物だけなのか、職員はどうなのか。

一度は行ったことがある楽しい場所で起こるミステリー事件の真相、そこにもしっかり非日常はあるのでした。

しっかり臨場感

たとえば職員に聞き込みを続ける服部は、なかなか有益な情報を得られません。

それもそのはずで、動物園の職員は仕事中だいたいひとりきりなのです。

勝手に調査を進める桃本と鴇先生は園外での調査にまで手を伸ばします。

桃本が偶然見てしまった職員の携帯電話にかかってきた、怪しい人物からの電話。

ディスプレイに表示されたその名前は事件の真相に近づく有益な情報だったのです。

その相手を呼び出し車に発信機をつけ家まで尾行する……それこそ警察の仕事のようなことをやってのけます。

ただ楽しいだけじゃない、本作品の最大の魅力でしょう。

動物園に行きたくなる

動物園側が考えていることがわかる、それも本作品の魅力のひとつです。

動物が快適に過ごせるための工夫に始まり、客に動物のことをきちんと知ってもらうためのアイデア。

双方に気を配らなければいけない職員たちの熱意が、たとえ創作物であってもこの本でわかることと思います。

そして、愛する動物たちを展示物として扱わなければならない飼育員の葛藤……そんなこともこの本は教えてくれました。

『午後からはワニ日和』はどんな人におすすめ?

ただ単に動物が好きな人、にはおすすめしにくいかもしれません。

逆に、単に動物園が好きな人、には自信を持っておすすめたいです。

動物がかわいそうな目にあうのが苦手な人は避けるのが正解でしょう。

それを踏まえたうえで特におすすめしたい人は、

  • 変わったミステリーが読みたい人
  • コメディ小説が好きな人
  • テンポよく進む作品が好きな人

などなどです。

おわりに|なぜ楓ケ丘動物園が?なぜイリエワニが?真相は本の中だけに。

あくまで創作物のお話ですが、実際にも動物園でこんな不思議な出来事が起きていたら……と思うと少し楽しいですね。

本来アフリカ草原ゾーン担当のはずの桃本がなぜそこまで、爬虫類館での事件を気にするのか。

鴇先生がなぜそこまで協力的なのか。

普段から自他ともに認める変人の服部と言えど、なぜ全職員に聞き込みを行うのか。

園のアイドル七森の悩みとは。

そして盗まれた動物の安否も気になるところでしょう。

ぜひ読んでみて、ご自身の目で飼育員や動物たちの運命を見届けてください。

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