国内小説– category –
-
『ぼくの小鳥ちゃん』感想|劇薬のように寂しく、砂糖菓子のように甘い小さな物語
絵本は基本的に子供が読むものですが、もちろん大人だって読んでもかまいません。 最近は大人向けの絵本だってあるくらいですから。 でも、たとえば”絵本のような小説”があったならば……? 中身も子供向けのようにわかりやすい構成や文章ではなくて、大人向... -
『世界から猫が消えたなら』感想|猫と悪魔と主人公が過ごした愉快な1週間
自分がいつ死ぬのかなんて、だれにもわかりません。 たくさん生きた末に老衰で死ぬのかもしれないし、今日事故にあって死ぬかもしれない。 "死"というものは余程自分の身に迫ってこない限り、そうそう実感なんて湧くものではないのです。 それでもいつ死ぬ... -
『勝手にふるえてろ』感想|忘れられない恋と新しい恋のあいだで揺れるこじらせ女子
恋はするほうもされるほうもつらいときがあります。 どちらの気持ちもわかる立場の人間にはさらに残酷なものです。 たとえば恋する側とされる側、一度に両方を体験してしまったら? まるで少女漫画のヒロインのような設定ですが、そのどれもが少女漫画のよ... -
『キネマの神様』感想|映画を愛する人々が起こした温かな奇跡の物語
新型コロナウイルスが世の中をがらりと変えてしまった2020年、今は亡き志村けんさんの初主演作として製作が予定されていた映画。 その原作が、原田マハさんの著した『キネマの神様』です。 小説と映画とでは趣が異なりますが、志村けんさんが演じる予定だ... -
『首都感染』感想|強毒性インフルエンザ発生。生き残りを賭けた東京封鎖作戦は成功するのか?
『首都感染』は2010年に発表された、高嶋哲夫さんのクライシス小説の1つです。 クライシス小説とは主に自然災害をテーマとした小説で、発生した前代未聞の危機に対して人々がどう立ち向かうかが描かれています。 『首都感染』においての危機は、中国で発生... -
『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』感想|超個性派赤ずきんが解き明かす!童話×ミステリ
Once upon a time・・・あるところに、赤ずきんという女の子がいました。 彼女はクッキーとワインが入ったバスケットを持って、長い旅に出たところです。 その目的は病気のおばあさんのお見舞い・・・ではなく? 「あなたの犯罪計画は、どうしてそんなに杜撰なの... -
『午後からはワニ日和』感想|平和な動物園で巻き起こる、緊迫感あふれる事件たち
動物園、と聞いて物騒なことを考える人はそういないでしょう。 動物園とは基本的に平和でのほほんとしたイメージが多い場所です。 ごくまれに動物が脱走したなんてニュースも見かけることには見かけますが……。 しかしそれはあくまで客の目線での話です。 ... -
『medium 霊媒探偵城塚翡翠』感想|ミステリランキング5冠!新感覚最驚ミステリ
「すべてが、伏線。」と銘打たれた本作。 その文言に偽りはありません。 "本格ミステリ大賞"や"このミステリーがすごい!1位"に輝き、令和元年のミステリランキングを総なめ。 従来のミステリファンを唸らせ、かつ新たなミステリファンの獲得にも成功... -
『町長選挙』感想|思わず笑顔になれる痛快「精神科医・伊良部シリーズ」第3弾
『町長選挙』は、1作目の『イン・ザ・プール』や第131回直木賞を受賞した2作目の『空中ブランコ』に続く奥田英朗さんの「精神科医・伊良部シリーズ」の3作目。 オムニバス形式の短編集なので、前作を読まずに『町長選挙』だけ読んでも大丈夫です。 戦前よ... -
『無花果とムーン』感想|えいえんの兄妹、奈落と月夜が願うこと
大事な人を亡くしたとき、あなたはどうしますか? まだそんな経験がない人でも、そこから立ち直ることがいかに難しいかは容易に想像ができるでしょう。 ずっと立ち直れずに、死んだ大事な人の温度を探して、そうしていたらついに生と死の淵へたどり着くか...