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『世界から猫が消えたなら』感想|猫と悪魔と主人公が過ごした愉快な1週間

第168回 芥川賞・直木賞 決定!

第168回 芥川賞・直木賞』が

2023年1月19日に発表されました。

受賞作はこちらの4作品です。

受賞作著者
芥川賞
この世の喜びよ
井戸川射子
芥川賞
荒地の家族
佐藤厚志
直木賞
しろがねの葉
千早茜
直木賞
地図と拳
小川哲

自分がいつ死ぬのかなんて、だれにもわかりません。

たくさん生きた末に老衰で死ぬのかもしれないし、今日事故にあって死ぬかもしれない。

“死”というものは余程自分の身に迫ってこない限り、そうそう実感なんて湧くものではないのです。

それでもいつ死ぬかわからない、という事実は生きとし生ける者ならみんな知っていることでしょう。

だからこそあなたも一度は想像したことがあるのではないでしょうか。

「もし数日後に自分が死ぬなら、それまでになにをしよう」

と。

タップできるもくじ

『世界から猫が消えたなら』の概要

出典:Amazon公式サイト

タイトル世界から猫が消えたなら
著者川村元気
出版社マガジンハウス
出版日2012年8月30日
ジャンル現代ファンタジー

本作は映画監督や脚本家としても活躍する川村元気の初小説です。

2013年の本屋大賞にノミネートされ、実写映画化もされました。

非現実的な話ですが、根本には家族愛というテーマがあり、非常に読みごたえのある小説です。

『世界から猫が消えたなら』のあらすじ

30歳で郵便配達員の主人公は、ある日医者から余命1週間だと告げられます。

そこへ悪魔と名乗る者がやってきて、主人公にある提案をするのでした。

この世からなにかひとつを消すたびに、あなたの寿命を1日伸ばす……と。

愛する母が遺した猫とふたり暮らしだった主人公は、悪魔の提案にのり、生きるための取捨選択を迫られる数日を過ごします。

不思議な7日間

病院で末期の脳腫瘍だと診断され、お先真っ暗になっていた主人公のもとへ悪魔が現れます。

悪魔といってもそれは主人公と同じ見た目の、けれど服装はアロハシャツに短パンという主人公とは真逆のセンスをしたものでした。

「アタシ、悪魔です!」

陽気にそう言って、この世からなにかを消し、その代わり主人公の寿命を1日ずつ伸ばさないかという提案をします。

まだ生きたい、そう思った主人公はそれを受け入れ、本棚の上のほこりやお風呂のタイルのカビを候補にあげますが、どうやら消すものは悪魔が指定するようでした。

些細だけれど大切であったものを消して、主人公は生き延びます。

1週間後、彼はいったいなにを消し、なにを残して、生死を選ぶのでしょうか。

主人公の選択

消すもの、残すものはなんなのか。

それは読んでのお楽しみにしてもらいたいので、ここでは言及しません。

ただタイトルにもあるように、猫はこの物語の鍵になります。

現在主人公と暮らしている猫は白とグレーが混ざり合った、キャベツという名の猫です。

そして亡き母が大事にしていた先代猫のレタスや、大学生のころ付き合っていた彼女。

病死してしまった最愛の母に、もうずっと口をきいていない寡黙で不器用な父……。

主人公は、鍵となる猫のキャベツが教えてくれた大切なことをそっと抱きしめて、精一杯生きます。

世界から映画が消えたなら

主人公が世界から消すものを、ひとつだけ紹介します。

それは映画でした。

映画オタクの親友を、主人公はツタヤと呼んでいます。

中学生のころ、すでに立派な映画オタクだったツタヤは主人公にいろんな映画を教えてくれました。

お察しのとおり、ツタヤというあだ名は本人が映画辞典のような男だからです。

「いいものは、いいのだ」

ツタヤはこと映画に関してはとても達観していました。

斯くして主人公にとっても欠かせないものになった映画を、寿命を延ばすためにこの世から消すことになります。

そして、自分の人生を映画になぞらえて思い返し、だれかの心に残ることはできただろうかと考えます。

世界から映画を消して寿命を延ばし、映画の大切さを痛いほど味わった矢先、陽気な悪魔は次に消すものを告げるのでした……。

『世界から猫が消えたなら』を読んだ感想

“生”と”死”がテーマのわりに、悪魔の陽気さやテンポの良さのおかげで楽しく読み進めることができます。

無駄のない文章は読みやすく気持ちよさすら感じました。

かと思えばラストには泣けるシーンも用意してあり、満足度は非常に高いと思います。

“死”と”愛”

“死”と”愛”は切っても切れない縁にあるようで、どちらかをテーマとする物語には必ずどちらかがくっついてきます。

本作も例外ではなく、死を宣告された主人公は大学時代に付き合っていた彼女への愛や、自分のために泣いてくれる親友ツタヤに対して改めて愛を感じていました。

亡くなった母や、不器用だけれど母をとても愛していた父。

特に父に対しては、母の死に目にやって来なかった恨みや幼いころの幸せな思い出やらの感情に揺られ、素直に話すことが出来ずにいました。

母が遺した想いを知るまでは……。

解説から見える作品の魅力

解説で中森明夫は語ります。

これは、すごい小説だ。

もし、あなたが本屋さんの文庫コーナーでこの本を手に取り、どんな内容だろう?と思って、後ろをめくり、今、この解説を読んでいるなら──

悪いことは言わない、すぐにレジへ持っていって、さっさと買ってしまいなさい。

一冊と言わず、二冊、三冊、いっそ数冊まとめ買いしたらよい。

ぜひ、そうするべきだ。

このたった数行に、この作品の魅力や素晴らしさが詰まっているといっても過言ではないでしょう。

どれくらいいい本だったの、と聞かれたら、今そうしたように私はこの解説を引用すると決めています。

世界から○○が消えたなら?

世界から○○が消えたなら、という妄想をしたことがある人も多いと思います。

私も過去にしたことがありますし、本作を読んだこともあって、考えました。

私にとって大事なもの……本。

この記事を読んでくれている人の多くも、本は大事なものになっているのではないでしょうか。

世界から本が消えたなら。

きっと主人公と同じく、失ってから気づくのでしょう、その存在の重要さに。

『世界から猫が消えたなら』はどんな人におすすめ?

本作について楽しさを紹介してきましたが、これは感動できるお話です。

実際、私は号泣しました。

もちろんみんながみんな泣けるとは言えませんが、主に家族愛ものに弱い人などにはくるものがあると思います。

おすすめしたい人は絞っていけば、

  • 小説で泣きたい人
  • 家族愛の物語が好きな人
  • 満足感を味わいたい人

などなどです。

けれどやっぱり楽しく読めることに間違いはないので、その点も選ぶ際の重要ポイントになるでしょう。

おわりに|悪魔に囁かれた主人公はいかにして”死”を受け入れるのか

本作では猫が主人公の人生において鍵となるものでしたが、あなたの人生ではなにが鍵となりますか。

それがいま、わかりますか。

普通に生きていて人生における大事なものに気づくことはきっと難しいと思います。

だからこそ”大事なもの”なのでしょう。

死を目前にしてようやく人生における大事なものに気づく、皮肉なものですが、それが人生なのだと、この作品は教えてくれました。

普通の主人公と、猫と、悪魔。

異端の組み合わせがコメディチックに、”生”と”死”のなんたるかを問います。

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