「絵」の「本」と書いて「絵本」。
子ども向けはもちろん、最近では大人向けのものも珍しくなく、様々なジャンルのものが愛されている絵本ですが、その共通点は文字通り「絵が主役であること」だと思います。
しかし、今回ご紹介する絵本には、なんと絵がありません。
『えがない』のに、絵本?
『えがない』のに、子どもに大人気?
メディアでも注目を浴び、全米70万部突破の新感覚の読み聞かせ絵本。
その人気の秘密を、ご紹介します。
著:B J ノヴァク, 翻訳:大友 剛
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『えがないえほん』の概要
出典:Amazon公式サイト
タイトル | えがないえほん |
著者 | B・J・ノヴァク (訳:大友剛) |
出版社 | 早川書房 |
出版日 | 2017年11月21日 |
ジャンル | 読み聞かせおもしろ絵本 |
タイトル通り、絵は一切出てきません。
文字だけが、書体や色や大きさを変えて書かれているのです。
そのためこの絵本は、子どもが一人でページをめくって見て楽しむものというより、大人が声に出して読み聞かせしてあげるもの、となります。
対象年齢は【4歳〜】となっていますが、4歳以下の言葉を知り始めたばかりの子どもでも楽しめる本でしょう。
翻訳者の大友剛さんは、ミュージシャン&マジシャン&翻訳家で、全国の幼稚園や保育園で年間およそ250回も絵本の読み聞かせを行なっている方です。
『えがないえほん』のあらすじ
とても真面目な本のように見えますが、実は…?
ちなみに、タイトルが大変似ているアンデルセンの『えのないえほん』とは全く関係のないお話ですので、ご注意ください。
『ルールをせつめいします』
白地に黒の文字だけ、というシンプルすぎる表紙を開くと…中身もとてもシンプルです。
どうやらこの絵本には、ルールがあるとのこと。
それは…
『かかれている ことばは ぜんぶ こえに だして よむこと』
声に出して読まなくてはいけない、というのは、読み聞かせするならば当たり前のことです。
一体どういうことなのでしょう?
こんなことばでも、声に出す!
『ということは・・・こんなことばでも・・・』
ページを進めると、先程までより一際大きな色付きの文字で、ちょっと読み上げるのが恥ずかしいような困った言葉が…。
『ばふっ』
『ぶりぶりぶ〜!』
こういう言葉、子ども達は大好きですよね。
普段は大人に「そんな言葉使っちゃいけません!」「なに言ってるの!」なんて言われてしまうようなふざけた言葉を、大人が大真面目で読んでいる…それがこの絵本の面白いところなのです。
読みたくないけど、ルールだから…
ここで、最初に書かれていたルールが生きてきます。
恥ずかしい、こんな言葉読みたくない。
でも、ルールだから読まなくちゃいけない。
『ぼくの あたまの なかみは なっとうの みそしる』
『ほんにゃまんかぺ〜』
『おならぷ〜』
絵本はどんどん意味の分からない方向へ…。
しかし子どもは、
「次はどんなおかしな言葉が出てくるだろう!」
「大人が変な言葉を言っている!恥ずかしがっている!」
ということにワクワクの表情でしょう。
『えがないえほん』を読んだ感想
子どもを前にして初めてこの本を読み聞かせしたとき、正直「うわっ、こういう絵本か…」「どんなかんじで読めばいいのか…?」と思いました。
しかし、心配は一切無用でした。
ニヤニヤ、クスクス、最後には大爆笑です!
お笑い芸人のように面白おかしく読まなくてはいけないということはありません。
ただ、声に出して読む。
それだけでよかったのです。
表現力が試される
子ども達が笑ってくれることは嬉しいのですが、次々とハードルが上がっていくような気がします。
「どんなテンションでこんな言葉を読めばいいのか…抑揚をつけて…?大きな声で…?」
「ブタやらサルやらロボットやらも出てくる…声を変えて読むべきか?いやいや、そんな技術持ってない!」
単調に読んでみても子どもは笑ってくれる内容です。
そこまで表現力を気にしなくてもいいと思いますが、YouTubeにはなんと、翻訳者である大友剛さんによる読み聞かせ動画が配信されています。
動画内では子ども達の大笑いする様子も見ることができますので、魅力もよくわかるでしょう。
動画を参考にして、読み聞かせの表現力を磨いてみるのもいいかもしれません。
絵がないのに、視覚的面白さも
例えば『サルのロボットデス』という文字は、ロボットを表すような書体で書かれています。
『あわわわわわわ…』と大きな文字で「わ」というひらがなが羅列されているページは、大人はゲシュタルト崩壊が起きそうですが、子どもには模様のように見えて面白く感じるかもしれませんね。
このように、視覚的な工夫もあることで、文字が読めない年齢の子ども・言葉の意味がまだ分からない小さな子どもでも楽しめるようになっているのです。
単なるふざけた本じゃない
この本の魅力は、ただ面白いところだけではありません。
著者の子どもへの思い・リスペクトが中盤に登場します。
『じんるいの れきしのなかで いちばんすばらしいこども』
ふざけた言葉の数々の中で、人類の歴史〜などと言われても子どもは笑ってしまうのですが、「なんだかよく分からないけど、褒められた!」ということは伝わるようです。
著者の、子どもたちはそのままですばらしい、思いっきり楽しんでほしい、というような思いが感じられます。
騙されたつもりで
ここまで、大爆笑!絶対に笑う!とご紹介してきましたが、
「こういうふざけたやつは…ちょっと…」
「読まされている、という状況だとしても言いたくない」
と感じる大人もいるでしょう。
しかし、そんなあなたへのメッセージが、裏表紙に書かれています。
『子ども達は大爆笑するはず。その様子にあなた自身もきっと癒されることでしょう。』
『えがないえほん』はどんな人におすすめ?
この絵本をおすすめしたいのは、こんな人です。
- 本が好きになれないお子様に
- 楽しいコミュニケーションを求めるご家族に
- 子ども達の心を掴みたい保育者に
絶対に笑えるこの絵本。
本が好きではないというお子さんにとって、本を楽しむきっかけになるかもしれません。
また、読み聞かせをする中で楽しいコミュニケーションが取れますので、ご家族やご兄弟へのプレゼントにも最適でしょう。
大人数に向けて読めばさらに大爆笑間違いなしなので、子どもの注目を集めたい時・盛り上げたい時などの保育者さんにもぴったりです。
ちなみに、夜の寝かしつけのための絵本をお探しの方にはおすすめしません!
お子さんは眠くなるどころか楽しい気分に…大爆笑の末に「もう一回読んで!」と言われてしまうかもしれませんよ。
おわりに|絵本の可能性・楽しみ方は未知数
絵本なのに絵がない、という新しい絵本。
声に出して読む、というたった一つのシンプルなルールで、絵がないというにも関わらず、こんなにも面白くて味わい深い絵本になるだなんて驚きですね。
全米70万部を突破し、テレビ番組でも続々と紹介されるほどの人気作ということにも納得です。
絵本というものの可能性、そして楽しみ方は未知数だということが感じられました。
この絵本を通して、子どもと思い切り笑い合い、表現やコミュニケーションの新しさを味わってみてはいかがでしょうか。
著:B J ノヴァク, 翻訳:大友 剛
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