自分の人生に疑問を持ち始めたとき、不思議な珈琲店が現れ大きな猫が正しい道へ導いてくれる。
そんな幻想的でありえない経験をしたことはありませんか?
ありえない出来事、そんな確かめようがない不思議な物事は、わたしたちのすぐ身近で起きているかもしれません。
たとえばなにかが吹っ切れたようなあの人、すっきりした顔になった人、悩みがなくなった人、自分の進むべき道がわかった人。
その人たちはもしかすると大きな猫にアドバイスをしてもらったのかも……?
著:望月 麻衣, イラスト:画・桜田 千尋
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『満月珈琲店の星詠み』の概要
出典:Amazon公式サイト
タイトル | 満月珈琲店の星詠み |
著者 | 望月麻衣 |
出版社 | 文藝春秋 |
出版日 | 2020年7月8日 |
ジャンル | レトロファンタジー |
本作はあらゆる場所に気まぐれに現れる満月珈琲店というカフェで繋がる、とある昔馴染みの男女のお話です。
舞台は京都で、登場人物は自分の未来に不安を持っていたり、自分が犯した過ちを後悔していたり、自分の恋に悩んでいたりするごく普通の人たちでした。
そんな人たちが、突然目の前で密かに繰り広げられる占星術により正しい道を知り歩んでいくのです。
『満月珈琲店の星詠み』のあらすじ
京都でシナリオライターとして働いている芹川瑞希は、過去に小学校の非常勤講師をしていたのですが、副業でしていたシナリオライター一筋でいくことを選択します。
彼女はそのことをずっと、正しい選択だったのかと後悔していました。
そしてかつての教え子たちもそれぞれあらゆる悩みを抱えています。
満月珈琲店は京都の街、夢のなか、いろんなところへ現れてはそれぞれの道を指し示し導くのでした。
悩める人たち
教職員とシナリオライター、二足の草鞋を履いていた芹川瑞希(せりかわ みずき)はシナリオライターとしての未来を選び、しかし今ではその過去を引きずりスランプ中でした。
ある日、昔一緒に仕事をしていた女性から会わないかという話があり、それをきっかけに瑞希は過去の自分の弱さと向き合うこととなります。
瑞希に会わないかという話を持ち掛けたのは中山明里(なかやま あかり)というテレビ制作会社のディレクターで、瑞希に大きな恩がありました。
明里は知らなかったとはいえ同業者の男性相手に不倫未遂をしてしまいます。
そんな瑞希が携わる番組にてメインで出演する予定だった年下女優の鮎川沙月(あゆかわ さつき)は先日の既婚者俳優との不倫騒動で、番組を降板させられます。
なぜ自分だけが何も関係ない世間の人たちから非難されなければならないのか、この先女優としてどうなるのか、彼女は不安から逃げるように現実から目を背けました。
早川恵美(はやかわめぐみ)は明里の幼馴染で、美容師として色んなことを経て、今は美容師として認めたくない悩みを持ちながらも両親の理容室を手伝っています。
恵美に恋心を寄せる水本隆(みずもとたかし)は大学時代に友人と起業したIT会社で共同ではありますが経営者をしていました。
小学校ぶりに会った恵美のことを気にかけ、自分が秘めていた初恋を認識していきます。
満月珈琲店の様子
『満月珈琲店には、決まった場所はございません。
時に馴染みの商店街の中、終着点の駅、静かな河原と場所を変えて、気まぐれに現れます。
そして、当店は、お客様にご注文をうかがうことはございません。
私どもが、あなた様のためにとっておきのスイーツやフード、ドリンクを提供いたします。』
満月珈琲店を訪れた客に対して、マスターである三毛猫はそう告げました。
珈琲店は小さなトレーラーハウスで、そこでは紳士なハチワレ猫、少しチャラいシンガプーラ猫、上品でおちゃめなペルシャ猫……その他にも色んな猫たちがあたたかくおもてなししてくれます。
猫たちは迷い込んだ悩める人たちに、占星術をもって人生の正しい地図を与えてくれ、そして重要なアドバイスを聞かせてくれます。
リアルに馴染む特殊な設定
目の前に現れたトレーラーハウスのカフェから二足歩行の大きな猫が出てきて、手に持つ懐中時計を開くと宙にホロスコープが映されて行くべき道を指し示してくれる……一見とてもファンタジーな設定ですが、それは少しの違和感もなく望月麻衣が生み出す京都の世界観に馴染んでいます。
なぜファンタジーが歴史ある京都にこんなに馴染むのでしょうか。
京都は古都と称されるとおり、過去に都が置かれ古くからある街です。
その歴史で起きた出来事はどこか現実離れしているものもたくさんあります。
それを踏まえたうえでわたし個人としては長い歴史とファンタジーは紙一重なのではないかと思ったりもするのですが、それは作者が上手く読者に伝える力があるからこそでしょう。
『満月珈琲店の星詠み』を読んだ感想
みんな、猫たちの占星術とおもてなしのおかげで明るいほうへ進んでいきます。
果たして満月珈琲店はなぜ登場人物たちの前に姿を見せてくれたのでしょうか。
それは、ひとえにある老紳士の願いのためでした。
占星術
古代バビロニアが発祥と言われる占いが、占星術です。
太陽や月、惑星などの動きや関係性を、人間の性格や社会の様子などと結びつけて、本人の生年月日と出生時間をもとに占います。
占いという不安定な基盤ですが、以外にもそれは強い説得力を持ち納得ができるもので、読了後のわたしもしばしば占星術について調べたりしました。
無料で占えるサイトで占ってみたり、地元にいる占星術師を探してみたり……。
占星術について知識を身に着けたいと思える良いきっかけになったと思います。
誰かにとっての満月珈琲店
人は誰しもなにかしらの悩みを持っているものです。
見た目にはわからないあの人も、この人も。
満月珈琲店は書いてきたとおり悩める人に寄り添う猫たちのカフェです。
ふと目の前に現れ不思議な懐中時計を握り占星術で悩みを解決する、そして気づいたころにはいない。
そんな体験はしてみたいと思えど難しいでしょう。
けれど、誰かにとっての満月珈琲店にはきっとなれるはずです。
悩みを聞き適切なアドバイスをしたり、なにも言えなくても真摯に聞き入ることはできます。
そんな素敵な存在への憧れがいっそう強くなる、そんな作品でした。
『満月珈琲店の星詠み』はどんな人におすすめ?
本作は悩める現代人を救う猫たちのお話で、悩みも現代人らしく仕事や人間関係などです。
けれど古代から受け継がれてきた占星術という占いで、彼ら彼女らは導かれました。
それは今も昔も、人間の本質は変わらないことを意味するでしょう。
おすすめしたい人は
- あらゆる悩みを持つ人
- レトロなファンタジーが好きな人
- 少しでも占星術に興味がある人
などです。
おわりに
満月珈琲店は人々の悩みを解決し、正解に導き姿を消してしまいます。
導かれた人は夢うつつに目をまばたかせて幻でも見たのかと思いますが、それでもしっかりと記憶に残るのできちんと背中を押してもらうことができるのです。
古都で起きた不思議な出来事、それは登場人物の、そして読者の心をも救い軽くすることでしょう。
前述した老紳士は何者なのか、願いとはなんなのか、猫たちはなんのために登場人物に寄り添うのか、ぜひその目で確かめてみてください。
著:望月 麻衣, イラスト:画・桜田 千尋
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