新着記事
-
『ぼくの小鳥ちゃん』感想|劇薬のように寂しく、砂糖菓子のように甘い小さな物語
絵本は基本的に子供が読むものですが、もちろん大人だって読んでもかまいません。 最近は大人向けの絵本だってあるくらいですから。 でも、たとえば”絵本のような小説”があったならば……? 中身も子供向けのようにわかりやすい構成や文章ではなくて、大人向... -
『世界から猫が消えたなら』感想|猫と悪魔と主人公が過ごした愉快な1週間
自分がいつ死ぬのかなんて、だれにもわかりません。 たくさん生きた末に老衰で死ぬのかもしれないし、今日事故にあって死ぬかもしれない。 "死"というものは余程自分の身に迫ってこない限り、そうそう実感なんて湧くものではないのです。 それでもいつ死ぬ... -
『絶望名人カフカの人生論』感想|本当の絶望に寄り添うカフカのネガティブ名言
本書は「絶望している人を本当に救うのは真に絶望した人の言葉である」という考えに基づいて編まれています。 ポジティブな文章や名言は世の中にたくさんあり、そういった言葉に励まされ、前を向けることは多いでしょう。 しかし、どん底まで落ち込んだと... -
『勝手にふるえてろ』感想|忘れられない恋と新しい恋のあいだで揺れるこじらせ女子
恋はするほうもされるほうもつらいときがあります。 どちらの気持ちもわかる立場の人間にはさらに残酷なものです。 たとえば恋する側とされる側、一度に両方を体験してしまったら? まるで少女漫画のヒロインのような設定ですが、そのどれもが少女漫画のよ... -
『センセイの鞄』感想|教師と教え子、歳の差……ある種恋愛の教科書のような純愛物語
歳の差恋愛の小説や漫画、ドラマに映画というものはたくさんあります。 年齢の壁をこえて人と人が愛し合う……純愛としてわかりやすく扱いやすいのです。 たとえば現役教師と現役生徒ならばどうでしょうか。 本来ならば恋することを許されない立場同士の人間... -
『キネマの神様』感想|映画を愛する人々が起こした温かな奇跡の物語
新型コロナウイルスが世の中をがらりと変えてしまった2020年、今は亡き志村けんさんの初主演作として製作が予定されていた映画。 その原作が、原田マハさんの著した『キネマの神様』です。 小説と映画とでは趣が異なりますが、志村けんさんが演じる予定だ... -
『神様のケーキを頬ばるまで』感想|雑居ビルのなか、人々は切実な想いで成長する
生きるうえで大事なものってなんでしょう。 悪さをしないこと、素直でいること……。 でもそういう人ほど疲れてしまうのがいまの世の中なのだと思います。 正直者が馬鹿を見る、とよく言いますよね。 だれかを恨むこともなにかを大事にしないことも、時には... -
『首都感染』感想|強毒性インフルエンザ発生。生き残りを賭けた東京封鎖作戦は成功するのか?
『首都感染』は2010年に発表された、高嶋哲夫さんのクライシス小説の1つです。 クライシス小説とは主に自然災害をテーマとした小説で、発生した前代未聞の危機に対して人々がどう立ち向かうかが描かれています。 『首都感染』においての危機は、中国で発生... -
『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』感想|超個性派赤ずきんが解き明かす!童話×ミステリ
Once upon a time・・・あるところに、赤ずきんという女の子がいました。 彼女はクッキーとワインが入ったバスケットを持って、長い旅に出たところです。 その目的は病気のおばあさんのお見舞い・・・ではなく? 「あなたの犯罪計画は、どうしてそんなに杜撰なの... -
『午後からはワニ日和』感想|平和な動物園で巻き起こる、緊迫感あふれる事件たち
動物園、と聞いて物騒なことを考える人はそういないでしょう。 動物園とは基本的に平和でのほほんとしたイメージが多い場所です。 ごくまれに動物が脱走したなんてニュースも見かけることには見かけますが……。 しかしそれはあくまで客の目線での話です。 ...