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『青年のための読書クラブ』感想|滅びまでの100年を強かに生きる乙女たち

聖マリアナ学園。

それはこの物語の舞台であるお嬢様学校です。

20世紀初めに修道女聖マリアナによって設立されました。

設立から滅びまでの100年間、閉ざされた楽園で乙女たちは独自の世界を築いていきます。

政治家に情報を操る存在など様々な在り方をする女生徒たちは儚い瞬間をその学園に捧げるのでした。

乙女だけの世界で、しかしそこにはいつでも仮初の王子が求められることもまた事実なのです。

ときには王子の恋愛を強く恨み、ときには奇妙な庶民に踊らされ、そしてときには暴れる血ゆえスターとなった乙女を巡り、学園はいつでもかしましいのでした。

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『青年のための読書クラブ』の概要

出典:Amazon公式サイト

タイトル青年のための読書クラブ
著者桜庭一樹
出版社新潮社
出版日2007年6月1日
ジャンル事件記録の連作短編

とある架空のお嬢様学校での出来事……表の記録には残されない珍事件などを読書クラブ員が独自に書にしたためたもので出来上がったのが、この『青年のための読書クラブ』です。

全5章、書かれた年代も書いた乙女も違います。

読書クラブ員はその名に恥じぬようあらゆる文献を引用して記録しました。

学園の設立者がパリからやってきた修道女聖マリアナだからでしょうか、読書クラブ員たちが扱うのはいつでもフランス文学でした。

『青年のための読書クラブ』のあらすじ

この聖マリアナ学園の高等部が主に舞台となります。

密かに珍事件をまとめる読書クラブ員たちは、華やかな学園の端にひっそりと建つ赤煉瓦ビルの3階に集まり日々読書に励んでいるため、〈南のへんなやつ等〉と呼ばれています。

そもそも読書クラブ員たちは華やかな学園に馴染めないはみ出し者たちばかりなので、呼び名がどうであろうと気に留める者はいません。

その〈南のへんなやつ等〉が何十年に一度学園内の平和を引っ搔き回しているとも知らずに、女生徒たちは悠々と日々を過ごしていました。

女生徒は花のように可憐でいて、そして残酷でした。

閉ざされた楽園の乙女たち

設立者である修道女聖マリアナについては多くを語るつもりはありません。

ここでは読書クラブ員たち……特に私が紹介したいクラブ員たちにのみ焦点を当てていきたいと思います。

第1章では長身で高貴な美貌を持つ烏丸紅子(からすまべにこ)と、小太りで醜い妹尾アザミ(せのおあざみ)がダブル主人公となり学園を翻弄していきます。

乙女たちは紅子からその容姿からはうかがい知れない貧乏とドブの匂いを感じ、誰一人として近寄りませんでした。

内気で気弱な紅子がついにたどり着いた先ははみ出し者の集まりである読書クラブで、そこでアザミと出会いとある計画を立てるのでした。

少し飛んで第4章では、元伯爵家の御令嬢である山口十五夜(やまぐちじゅうごや)と、庶民の生まれながら優秀な成績をおさめる加藤凛子(かとうりんこ)のふたりがメインです。

十五夜は夢見がちな乙女でしたがあることをきっかけに、英国貴族の曾祖母譲りの血を爆発させたかのようにロックバンドを組み、一躍学園のスターとなるのでした。

そのころ凛子は彼女の親友ということで新聞部に追い回されたり、我慢ならず自分も鬼の形相で十五夜を追い回したりと忙しない日々を送りました。

最終章である第5章は大人になったアザミが登場します。

相も変わらず珍事件を起こす読書クラブ員五月雨永遠(さみだれとわ)は学園にやってきたアザミに、あるものを託すため壊れかけの赤煉瓦ビルへ潜入するのでした。

学園の記録には残されない珍事件の数々

学園の正史には残されない、そんな珍事件は毎年のように起こるものではありませんがだいたいは読書クラブ員たちが関わっていたり目撃者となっていました。

それは学園の闖入者がバックに優秀な頭脳をつけて学園の王子になるまでの物語だったり、バブルの影響で成金少女たちが入学し古きを重んじる学園に革命を起こさんとする物語だったり。

大人しい乙女が引き出しに眠っていた香水を嗅いだ途端人が変わりロック街道を突き抜ける物語であったり、ブーゲンビリアの君と呼ばれる姿なき英雄が学園中の乙女を惹きつける物語であったりと。

珍事件は様々なかたちで学園をとりまき、そして何事もなかったかのように去っていきます。

読書クラブ誌とは

学園の正史には残されない珍事件を、読書クラブ員が関わったり目撃したりした際に詳しく書き記したものがあります。

それが〈読書クラブ誌〉なのです。

長い歴史のあいだに増えたその読書クラブ誌は学園の政治を担う生徒会などの検閲に引っ掛からないように、色んな本のカバーを纏い本棚のあらゆる場所にバラバラに管理されていました。

読書クラブ誌を読書クラブ員の誰が記すかは特に決まっておらず、その時々で部長が指名したりと様々です。

ただし書いた者の名前は一切どこにも記されず、そこにはただコードネームがあるのみでした。

『青年のための読書クラブ』を読んだ感想

斯くして学園の珍事件を後世に残してきた読書クラブと乙女の楽園はついに滅びの年を迎えることとなります。

散々書いてきた滅びというのは、一貫してお嬢様学校だった聖マリアナ学園が同系列の男子校と合併することを意味します。

乙女たちが忌み嫌う男という生き物が、この薔薇色の楽園を穢していくという思いから、滅びという言葉を使うのでした。

ある楽園の始まりから終わりはあまりにも強かで儚くて、グロテスクで脆いものでした。

お嬢様学校という特殊な空間ならではの物語

私は女子高というものに縁はありません。

あらゆる媒体……小説や漫画、アニメや映画でしか見たことのない、私にとってそれはまるでほんとうに幻のような存在でしかないのです。

今まで得た女子高という概念を強く握り固めたものがまさに、この『青年のための読書クラブ』でした。

聖マリアナ学園に通う乙女たちは、男という生き物を嫌いながらも恋の美しい部分にだけは憧れ、それゆえ学園内にはいつも仮初の王子が存在しました。

毎年王子を決定する投票があり、主に演劇部から選ばれることが多いのです。

乙女たちは胸をきゅんと鳴らし、きゃあきゃあと小鳥が鳴くように可愛らしい声で仮初の王子をもてはやします。

それはまず共学の学校では見られない光景でしょう。

そしてすべての物語がその王子に関するものです。

タイトルからは想像できないグロテスクさ

本作品のメインでありタイトルにも入っている〈読書クラブ〉という言葉。

その言葉はどこか美しくて大人しくて、夢見がちな文学少女を思わせるのではないでしょうか。

しかし読んでみればその想像も虚しいほどに、乙女たちまたは読書クラブ員たちはグロテスクさを隠しません。

女だけの社会とはこれほどまでに醜いものなのかと感じますが、それを上回るほどに乙女の楽園は耽美で甘いのです。

情緒的でロマンチックな乙女たちが垣間見せるグロテスクな感情は、これぞまさに人間!

そんなふうにはっとさせられるものがありました。

学園の始まりから終わりまで

19世紀にパリからやってきた修道女聖マリアナが創設してから100年のときが経ち、乙女の学園は男子校と合併という危機に晒されていました。

女子高でいられる最後の年、学園の門では来年度から通う男子校の者と学園を守る乙女たちが攻防戦を繰り広げます。

乙女たちだけで築かれたその独自の世界は、外の世界に脅かされることなく100年ものあいだ眠っていました。

その安寧と眠りは滅びの風に吹かれようとも、崩れることはないのでしょう。

『青年のための読書クラブ』はどんな人におすすめ?

桜庭一樹作品はどれも著者の創作性が存分に発揮されていますし、この『青年のための読書クラブ』ももちろん例外ではありません。

儚い少女たちの残酷さ、花のような可憐さ、そういったものが詰め込まれた一冊となっています。

約250ページに全5章とひとつの章が非常に読みやすい長さで書かれているうえ、学園内に大きな影響はないもののきちんと時代背景もあるので、楽しく読むことができるのではないでしょうか。

あえておすすめしたい人を絞るのであれば、

  • お嬢様学校が舞台の作品が好きな人
  • ガールミーツガール作品が好きな人
  • 浅く読める連作短編が好きな人

などに響くと思いますので読むべきかと思います。

おわりに|設立から滅びへ、夢見る乙女たちの行く末は……

読書クラブ員が記した読書クラブ誌にはときたまコメディチックな表現が見られます。

それはまるで誰かに読んで貰うことを前提とした書き方にも思えますが、実際後世の読書クラブ員たちは先輩が残していったクラブ誌を読みふけることがありました。

珍事件を他人に読ませるものとして書く能力はやはり読書クラブ員といったところです。

さて、閉ざされた楽園の乙女たちが100年間をどんなふうに過ごしていたのか、わかってもらえたでしょうか。

独自の世界で強く生きた少女たちが、社会という世の中に羽ばたいたときに見るのはいったいなんなのか。

読了後はそういったことを考えてみるのもありかもしれませんね。

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