江戸を舞台にたくさんの妖が登場する、不思議で楽しいファンタジー時代小説『しゃばけ』。
と思う人もいるかもしれません。
しかしこの『しゃばけ』に出てくる妖は、親しみやすくて可愛らしい妖ばかりです。
主人公の若だんなのことが大好きで、若だんなのために人にまぎれて生活したり、病弱な若だんなの看病をしたりと大活躍。
妖らしい冷酷さも垣間見えますが、人間のような愛情も持っているのです。
そして若だんなの揺れ動く気持ちや弱さ、それに立ち向かう強さも見どころのひとつです。
著:畠中恵
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『しゃばけ』の概要
出典:Amazon公式サイト
タイトル | しゃばけ |
著者 | 畠中恵 |
出版社 | 新潮文庫 |
出版日 | 2004年3月28日 |
ジャンル | ファンタジー時代小説 |
畠中恵さん著書の『しゃばけ』は、20作以上が刊行されている長編シリーズ。
累計発行部数900万部を超える人気時代小説で、日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作です。
『しゃばけ』シリーズ第1弾となる本作は、2001年の作品。
そこから20年ものあいだ、多くのファンに愛され続けています。
ファンタジー要素があり、手に取りやすい内容なことから、時代小説を読まない人にも親しまれている『しゃばけ』。
シリーズを通して読むと、若だんなの成長や妖たちとの絆の深まりが感じられて、読めば読むほどその世界観にハマるはずです。
『しゃばけ』のあらすじ
『しゃばけ』は病弱な若だんなと妖たちが、江戸を舞台に事件解決に挑む物語。
ファンタジー要素あり、ミステリーあり、人情ありとさまざまな要素が詰まった作品です。
妖が見える病弱な若だんな
『しゃばけ』の主人公は、一太郎という名の青年。
江戸で廻船問屋を営む大店「長崎屋」の若だんなです。
若だんなは幼いころから、何度も死の淵に立っているほど病弱。
そのため、めったに外出することもなく、店の跡取りとしての仕事もほとんどさせてもらえません。
そんな若だんなには、人に言えない秘密がありました。
それは、妖が見えること。
しかもその妖たちと親しく話し、人に化けた妖と一緒に暮らしています。
妖たちは、病弱だけど心やさしい若だんなが大好き。
妖たちは騒動を引き起こしながらも、若だんなのために江戸を駆け回ります。
刃物男に遭遇した若だんな
ある夜、若だんなは珍しくひとりで外出していました。
黙って家を出ていた若だんなは、予定よりも帰りが遅くなってしまい、家路を急ぎます。
そこへ現れたのは、鈴の付喪神である鈴彦姫。
頭に大きな鈴を乗せ、若い娘の姿をした妖です。
若だんなを心配して出てきた鈴彦姫は、突然「血の臭いがする」と周囲を警戒し始めました。
すると若だんなの後ろから、刃物を持った男が「香りがする…」と言いながら追いかけてきたのです。
近くの神社に住む妖・ふらり火の力も借りて、なんとかその場をしのいだ若だんな。
しかしその直後、ひとりの男が血だらけで死んでいるのを発見します。
さらなる事件が若だんなを襲う
家に帰ってきた若だんなでしたが、一連の事件を手代の仁吉と佐助に話すと、ふたりは大げさなほど心配します。
この仁吉と佐助は、人に化けた妖。白沢と犬神という、強い力を持った妖です。
若だんなを守るため長崎屋にやってきたのですが、その過保護っぷりは相当なもの。
若だんなは、ふたりの態度に毎度困っていました。
事件は解決しないまましばらく経ったころ、今度は長崎屋に刃物の男が現れます。
男は長崎屋に置いてある秘薬を求めている様子。
さらに若だんなは、男が何かの香りをたどって長崎屋に来たことに気付きます。
その香りは、若だんな自身も知らない、若だんなの出生の秘密が関係していたのです。
『しゃばけ』を読んだ感想
本作『しゃばけ』は、病弱な若だんなと妖たちが繰り広げる、不思議であたたかい物語。
親しみやすくて可愛らしい妖たちに魅了され、妖たちと若だんなの絆に心があたたかくなります。
そして、若だんなの人となりも『しゃばけ』の大きな魅力となっています。
不思議で可愛い!妖たちの魅力
妖とは、いわゆる妖怪のこと。
不思議な力を持ち、人にいたずらしたり驚かせたりする異形な存在です。
一般的には、怖い、不気味などマイナスなイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。
しかし若だんなのまわりにいる妖たちは親しみやすく、怖さを感じさせません。
冒頭に登場する鈴彦姫、家を軋ませる妖怪・鳴家、屏風の付喪神・屏風のぞき、白沢の仁吉、犬神の佐助……と、『しゃばけ』に登場する妖たちはバラエティ豊か。
それぞれの妖としての特徴だけでなく、人間じみた個性が光るのもまた魅力でしょう。
屏風のぞきの皮肉っぽさや、鳴家の小動物のような愛くるしさに、読んでいて思わず笑顔になりますよ。
若だんなへの愛にあふれる妖たち
若だんなに対する仁吉と佐助の態度は、過保護を通り越してもはや束縛。
読んでいても窮屈さが伝わってきて、若だんなに同情してしまいます。
しかしそれらはすべて「若だんなを守る」という、使命感と愛情からくるもの。
読み進めていくと、その思いの強さがわかってくるのですが、印象的なのは仁吉と屏風のぞきの会話です。
力関係にはっきり差があり、仲が悪いふたり。
共通点があるとすれば、若だんなへの愛情です。
心配だからこそ過保護に扱い、辛い思いをさせないようにする仁吉と、単純に一緒にいるのが楽しいから好きだと言う素直な屏風のぞき。
いつもはいがみ合うふたりですが、若だんなが大切だという思いだけは分かち合える。
若だんなが妖たちにとって、どれだけ大きな存在なのかがわかるやりとりでした。
若だんなが持つ強さと弱さ
主人公である若だんなは、仁吉や佐助に言いくるめられて何もできないことがほとんど。
若だんなはそんな自分を省みて、情けないと卑下しています。
強くなりたい、一人前になりたいと願っても、思う通りにいかないもどかしさを抱えているのです。
しかし若だんなが自分の秘密を知り、事件解決のために行動した場面は胸が熱くなります。
そこで見えたのは、若だんなの心の強さです。
自分の弱さを受け入れ、それでもそれに甘んじることなく立ち向かう姿。
誰もが何かしらのコンプレックスや、劣等感を抱いていると思います。
若だんなの行動は、そんな思いと向き合うきっかけを与えてくれるでしょう。
自分の弱さと向き合う強さを、若だんなは私たちに示してくれました。
『しゃばけ』はどんな人におすすめ?
私が『しゃばけ』をおすすめしたい人は、このような人です。
- ファンタジーが好きな人
- 時代小説初心者の人
- 弱さと向き合うきっかけがほしい人
『しゃばけ』は非日常を感じられる不思議な世界です。
妖たちがたくさん登場する本作は、ファンタジー小説が好きな人にはうってつけ。
また時代小説は難しいと思われがちですが、『しゃばけ』は初心者にも読みやすい作品です。
普段時代小説を読まない人にも、ぜひ読んでほしいと思います。
そして若だんなの姿に、弱さと向き合う勇気をもらえることでしょう。
おわりに|読めば読むほど好きになる『しゃばけ』の世界
『しゃばけ』は20作を超えるシリーズ作品。
本作はその第1弾、まさに始まりの物語です。
『しゃばけ』は、若だんなや妖を通して人の気持ちが描かれます。
人は誰しもが、いいところもあれば悪いところもあるもの。
正の感情も負の感情も、両方を持ち合わせていると思います。
『しゃばけ』では、そのどちらもが共存しているような世界。
読み終わると、あたかかくも切ない気持ちになって、不思議な安心感に包まれます。
第2弾以降の『しゃばけ』は、新しい妖が登場したり、若だんなが旅に出たり、新たな友人ができたりと盛りだくさん。
ぜひこの『しゃばけ』を読んで、あなたも若だんなと妖たちの虜になってくださいね。
著:畠中恵
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