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『時をかけるゆとり』感想|朝井リョウの意外な素顔に思わず笑ってしまう

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2013年、著書『何者』の直木賞受賞で、直木賞初の平成生まれの受賞者として一躍時の人となった作家の朝井リョウさん。

大学在学中に作家デビューし、卒業後は会社を退職する2015年まで会社員と作家の二束のわらじを履きながら執筆活動を行っていました。

当時、直木賞受賞後のインタビューで、「明日も朝から会議なんです」と答える姿は印象的でした。

また『桐島、部活やめるってよ』や『チア男子!!』など実写化された作品も多く、自身もラジオのパーソナリティを務めるなどマルチに活躍されている作家さんです。

『時をかけるゆとり』は、そんな朝井さんがパーソナルな部分をさらけ出した爆笑必至のエッセイ集です。

本作は、2012年に刊行された単行本『学生時代にやらなくてもいい20のこと』を文庫化に際し改題、3篇を追加収録したものとなっています。

はっきりいって、かなりやらかしています。

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まずは、カバーの著者(自己)紹介でひと笑い

(自己)紹介というからには、おそらく自分で内容を考えたのでしょう。

1989(平成元)年、岐阜県出身。

2009年『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。

など出身県やデビュー作や著書などを紹介するまでは普通なのですが、その中にはちょこちょこ朝井節が散りばめられています。

たとえば、“お腹が弱い”や、“スポーツ小説ならではの大人数の書き分けに失敗”、“春服と秋服が全く同じ”、“バカ舌”などちょこちょこ明記される正直、読み手側としてはけっこうどうでもいい情報の数々。

テンポよく書かれている文言に思わず笑みがこぼれてしまいます。

この紹介文の部分だけ読んでも、朝井さんの人柄が読み手に伝わってくるようです。

朝井リョウはかなりやらかしてる!?そしてお母様も!?

まず、目次のページで各エッセイのタイトルを見ただけでも「この人、かなりやらかしてるな…」という気になります。

本人も多分それが狙いなのでしょうが、私たちはまんまとその世界にのめり込んでいくというわけです。

特に「スマートなフォンに振り回される」の回では、自身が機械オンチとし、学生時代、スマートフォン内のデータを交換するため本体同士をぶつけあう友人たちを見ながら、「野蛮」と必死に否定しつつ、周りの友人から「まるで化石のようだ」との評価を受けていた白いスライド式の携帯電話を使用していた朝井さん。

しかしとうとう、電話として機能しなくなった携帯電話をスマホに買い替えることになった朝井さん。

しかしその携帯は、高校時代に購入した携帯だったため名義がお母様になっていたため、携帯ショップにてお母様から送付してもらった委任状と住民票を提出。

念願のスマートフォンを手に入れた朝井さんは、お母様に報告するため公衆電話からお母様の携帯に電話を掛けます。

すると何故か、先ほど携帯ショップで受け取った白い箱が震え出します。

それを西野カナを超える震えと表現する朝井さん。

そして、買ったばかりのスマホわ開封し、つい先程までいた携帯ショップに向けてロケットスタートを切ります。

なんと、朝井さんのお母様は「委任する携帯番号」の欄にお母様自身の電話番号を書いてしまっていたのです。

先程、散々時間をかけていろんな説明をしてくれた携帯ショップのお姉さんに対して、「さっきの手続き、全部なかったことにしてください」と説明しなくてはならなくなった朝井さん。

携帯ショップを再訪した朝井さんを見て、明らかに「えっ」という顔をするお姉さん。

その頃、故郷・岐阜ではお母様が携帯ショップに駆け込んでいました。

おわりに

その他にも、「便意に司られる」、「旅行を失敗する」、「母がいろいろと間違う」など予想の斜め上をいくエッセイがたっぷりと収録されています。

一種の中毒性にも似た笑いの波が読者を襲います。

読み終わる頃には、あなたも朝井リョウさんのファンになっていること間違いなしです!

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