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『口説き文句は決めている』感想|食と恋をやわらかな言葉で綴るエッセイ

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「食と恋」というテーマを聞いて、あなたならどんなエピソードを思い浮かべますか?

初めてのデートで食べた思い出の味。同棲している彼と一緒に作った料理。振られたあとに泣きながら食べた定食。

印象的な恋の思い出には、食が結びついていることが多いのではないでしょうか。

このエッセイは、そんな「食と恋」をテーマに、爽やかであたたかい気持ちになれるやわらかい言葉が綴られています。

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『口説き文句は決めている』の概要

出典:Amazon公式サイト

タイトル口説き文句は決めている
著者夏生さえり
出版社クラーケン
出版日2017年8月9日
ジャンル恋愛エッセイ

リアルで甘い「妄想ツイート」が話題になったライター・夏生さえりさんによるエッセイ集。

WEBマガジン『アマノ食堂』の「ティファニーで朝食を食べられなかった私たち」という、恋と食をテーマにした連載に書き下ろしを加えています。

『口説き文句は決めている』のあらすじ

食と恋をテーマにした、ありそうでなかったエッセイ集。

作者の実体験や「妄想」を織り交ぜた、様々な場面を切り取っています。

エッセイではありますが、ところどころに甘い恋愛ストーリーが混ざっていて、作者の言葉を借りるなら、まさに「太らない糖分補給」。

身近な話題であるだけに、すらすらと気持ちよく読み進められる22篇のショートストーリーです。

食と恋は結びつく

食のエッセイというと、おしゃれで洗練された印象がありますが、エッセイのなかではもっと身近なラーメンやかき氷もテーマになっています。

連載の題名「ティファニーで朝食を食べられなかった私たち」からわかるように、飾った食事だけではなく、大切な人と過ごした時間や思い出そのものが味わい深いものだというメッセージを伝えてくれます。

恋人や好きだった人と過ごした時間に必ず登場する「食」は、何もしなくても思い出のひとつとして結びついていくもの。

そんな、食と恋の繋がりを切り取った爽やかなエッセイです。

様々な「食」のシーン

作品は全部で3つの章から構成されています。

「外ごはん」では、恋人との初デートや街中でばったり出会った人との食のエピソードを題材にしています。

「家ごはん」はその名のとおり彼と家で食べる朝食や、帰りを待って作る夜ご飯など、ほっこりしたエピソードがメイン。

「四季と食」では夏のかき氷やクリスマスディナーなどの季節のイベントがテーマです。

様々なシチュエーションと恋が掛け合わさり、自分にもこんな経験があったなあと懐かしく感じられるエピソードが揃っています。

恋愛ストーリーをちょっとずつ

それぞれのエピソードは、WEBマガジンに連載されていたこともあり、読みやすくコンパクトな分量です。

作者が思う、「こんな”食”のワンシーンを大切にしたい」が綴られています。

一番の特徴は、作者の妄想や実体験をもとにした、恋のエピソードが組み込まれていること。

例えば、「かわいい年下男子に振る舞うオムライス」のエピソードでは、年下の彼が手作りのオムライスをおいしそうに頬張る姿を見て、ずっと渡せなかった合鍵をを差し出す場面を描いています。

様々なエピソードからは、異なる恋愛小説を程良い分量で楽しんでいるような、心のときめきを感じられるでしょう。

『口説き文句は決めている』を読んだ感想

作者自身が「やわらかい言葉」を好んでいると公言しているので、難しい言葉は出てきません。

1篇読んだだけでほっと一息つけるような、まさにやわらかさを持ったエッセイだと感じました。

作者自身の魅力

“さえりさん”の愛称でSNS界隈で親しまれている彼女は、日記を書くように言葉を紡ぎだしていきます。

フランクで親しみやすい文体は、読書があまり得意ではない人にもすっと受け取れるのではないでしょうか。

彼女自身が明るく、何にでもポジティブに向き合っていこうとする姿勢が文章からも伝わってきます。

ひとつひとつのエピソードに優しさがあるだけでなく、「こんな考え方もあるのか」と日常の見え方が少し変わるような新鮮さがあるエッセイ。

何気ない日常にストーリーを見出す作者の秀逸さが光ります。

甘酸っぱいエピソード

妄想ツイートで世に出たさえりさんというだけあって、各テーマの妄想(ときには実体験)エピソードが甘酸っぱい。

心に決めた人からかけられたい言葉、彼の手作り料理を楽しむクリスマスディナーなど、乙女心をくすぐるシチュエーションが詰まっています。

ただの恋愛エッセイに終始せず、「食」をテーマに描かれているところが、親近感を感じられるポイントです。

こんなシチュエーション憧れるなあ、私にもこんな時代があったなあと感じながら読み進められるのが魅力ではないでしょうか。

当たり前が大切だということ

この連載の題名の元となったエピソードには、次のような言葉があります。

「たとえティファニーでの朝食が可能になってもわたしはそこには行かないだろう。必要なのは、住み慣れた部屋とベーコンと卵、それから寝ぐせのついた恋人だけだから。」

特別なものは何もいらない。

愛しい人との、当たり前なようで特別な毎日を大切にすれば良いんだというメッセージを爽やかに書き留めています。

押しつけがましくないメッセージが、心にふっと灯りをともしてくれるはずです。

『口説き文句は決めている』はどんな人におすすめ?

この作品はこんな方におすすめです。

  • 恋愛小説が好きな人
  • 食べることが好きな人
  • ほっこりした気持ちになりたい人

何かを示唆したり、目新しい発見を得られるというよりは、自分のなかにある思い出や感情を追体験するようなエッセイです。

恋愛に興味がある方には特におすすめです。

おわりに|甘酸っぱいエピソードを召し上がれ

心がときめく甘酸っぱいエピソードが多く挿入されてはいますが、ただの恋愛エッセイではないところがこの作品の魅力です。

誰もが1つは持っているであろう恋の体験をなぞりながら、食を通じた様々な感情を描き出しています。

さえりさんの言葉を引用すると、まさにこんな読後感です。

「この本をぱたんと閉じたとき、あなたが持つ恋と食の思い出がふわりと立ち上がるような一冊になれますように。」

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