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『マナーはいらない 小説の書きかた講座』感想|気軽に楽しく学べる小説の基礎

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小説を読んでいて、「こんな面白い話、どうやって考えつくんだろう」と思うことはありませんか。

あるいは、「趣味で小説を考えているけど、全然上達しない」と悩んでいる人もいるかもしれません。

今回紹介する『マナーはいらない 小説の書きかた講座』は、作家・三浦しをんが小説の書きかたについて様々な視点から考察するエッセイです。

小説家志望の人はもちろん、何か面白いエッセイはないかな?と思っている人にも、おすすめの1冊です。

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『マナーはいらない 小説の書きかた講座』の概要

出典:Amazon公式サイト

タイトルマナーはいらない 小説の書きかた講座
著者三浦しをん
出版社集英社
出版日2020年11月10日
ジャンルエッセイ

風が強く吹いている』、『舟を編む』などの著作で知られる三浦しをん。

『コバルト短編小説新人賞』で選考委員を務めたことをきっかけに、「小説家志望の方へ、渾身の作品を送ってくださるお礼と、作品をよりよくするアドバイスができれば」と思うようになったそうです。

そうした思いから、『WebマガジンCobalt』にて、『小説の書くためのプチアドバイス』という連載が始まりました。

本書は、『小説を書くためのプチアドバイス』を1冊にまとめ、さらに書き下ろしを追加したものです。

『マナーはいらない 小説の書きかた講座』のあらすじ

本書は、表紙からも想像できるように、コース料理をイメージして構成されています。

「推敲について」というタイトルのアミューズブッシュから始まり、「プロデビュー後について」というタイトルの食後酒まで、なんと全24皿。

どんな大食漢の人でも大満足のボリュームです。

コース料理を平らげるころには、小説家がどのように作品を生み出しているか、かなり具体的にイメージできるようになるでしょう。

小説の書きかたについて(論理的な問題)

小説とは作者の想像力の結晶ですが、ある程度論理的に解決できる問題もあります。

たとえば、

  • 改行の頻度、どこで改行すればいいのか
  • 人称はどのように使い分ければいいのか
  • タイトルはどのようにつければいいのか

などなど。

上記のうち、改行の頻度については、

「語り手が変化したとき。あるいは場面転換・ある程度の時間の経過を示すとき。乱用せず、ここぞというときに使う」

と述べています。

こうした基本的なテクニックを身につけることで、多くの人にとって読みやすい、誤解のない文章を書けるようになります。

小説の書きかたについて(感性の問題)

一方、論理的な解が存在しない問題、つまり感性や個人の好き嫌いに左右される問題もあるようです。

たとえば、

  • 伏線の張り方・ベストな塩梅とは?
  • 個性のある文章を書けるようになるにはどうすればいいのか?
  • 集中できる作業環境とは?

などなど。

上記のような「それは小説のジャンルや個人のセンス次第でしょう」と思われる質問にも、三浦先生は真摯に回答しています。

中には、「それは深く悩むべきポイントじゃないよ」というアンサーもあります。

本書を読み終える頃には、自分が真に集中すべき課題が見えてくることでしょう。

筆者の楽しい日常にも触れられる

本書は無機質なハウツー本ではありません。

筆者の日常エッセイという側面もあります。

たとえば、しばしば登場するのが、『HiGH&LOW』というシリーズもののアクション映画。

小説の書きかたについて丁寧に解説する三浦先生ですが、『HiGH&LOW』の話になると、様子のおかしいオタクのような語り口になり、そのギャップに驚かされます。

また、『HiGH&LOW』などの作品を切り口に、「面白い作品とはどのようなものか?」という点について、三浦先生が自論を展開しているところにも注目です。

『マナーはいらない 小説の書きかた講座』を読んだ感想

私は、学生時代に趣味で小説を書いていました。

話が長くなるにつれて支離滅裂になったり、作品への情熱が薄れたりして、「プロの小説家って、やっぱりすごいなあ」と実感したものです。

本書は、小説家がどのようにセンスを磨き、長い作品を書き上げているのか垣間見ることができるという点で、とても面白い1冊でした。

特に印象に残ったのは、下記3点です。

実践的なアドバイスが豊富

小説の書きかたには、「これだけ実践すれば絶対に成功する」というものはありません。

しかし、三浦先生は、極力実践的なアドバイスをしようと努めていると感じました。

たとえば、どんな文章がわかりやすいか、具体的な例文とともに解説しています。

「自分の文章って、ちょっとぎこちない・読みづらいかもしれない」という人にとっては、とても参考になると思います。

様々な三浦しをん作品を知ることができる

このエッセイの特徴的なところは、三浦先生が小説の書きかたの例として、自分の小説を紹介してくれるところです。

例えば、

などなど。(『星くずドライブ』は『天国旅行』に所収されています。)

作家にとって、小説の書き方を明かすことは、レストランがレシピを公開するようなもので、非常に贅沢なことです。

そのありがたさに感謝することはもちろん、今まで知らなかった三浦先生の作品に触れることができ、好奇心を大いに刺激されました。

温かいまなざしとエールにあふれている

小説家というと、何となく「天賦の才に恵まれた人」というイメージがありませんか。

しかし、三浦先生は、「最初から上手く書ける人はいない」というメッセージを繰り返し発信しています。

例えば、16皿目では、小説を書く才能をファッションセンスにたとえ、次のように述べています。

「誕生の瞬間からしゃべれたひとなんて、お釈迦さまぐらいしかいません。赤子が素っ裸で生まれるように、言語も後天的に会得したものです。ということは、言語を駆使して表現する小説においても、ファッション同様、努力と試行錯誤によってセンスを磨いていけるということです。」

小説を書くということは私たちが思っているよりも、後天的な努力の成果なのかもしれません。

読者はこうした温かいメッセージの数々に勇気づけられることでしょう。

『マナーはいらない 小説の書きかた講座』はどんな人におすすめ?

『マナーはいらない 小説の書きかた講座』は、特に下記のような人におすすめです。

  • 小説家になりたい人
  • 作家の日常を覗いてみたい人
  • 三浦しをんの様々な作品に触れてみたい人

もともと、新人賞の選考委員を務めたことをきっかけに始まったエッセイですから、小説家志望の人にとって役立つ本であることは間違いありません。

しかし、それ以外の人にとっても、楽しめる1冊です。

作家の頭の中をちょっと覗いてみたい人、次にどんな小説を読もうか迷っている人などにとっても、ぴったりだと思います。

おわりに|小説を愛するすべての人へ

文章の書きかたについては、様々な職業の人が様々な本を出版しています。

本書は、プロの小説家を目指す人に向けて、作者自身の作品紹介を交えつつ綴られている点で、ユニークな本だと言えるでしょう。

小説家志望者のみならず、小説を愛するすべての人にとって、多くの発見をもたらしてくれる本です。

興味を持った方はぜひ、手に取ってみてください。

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