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『赤朽葉家の伝説』感想|これは現代日本に突き付けられた予言書?

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『赤朽葉の伝説』は「私の男」「GOSICKシリーズ」などで根強いファンの多い作家、桜庭一樹先生の初期の代表作です。

ようこそ、ビューティフルワールドへ。

文庫版の表紙のそでの一文から始まる、けったいな長編小説、千里眼の祖母、漫画家の母、何者でもないわたし。

鳥取の旧家の一族が巻き起こす壮大な昭和平成絵巻が幕をあけます。

著:桜庭 一樹
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『赤朽葉家の伝説』のあらすじ

赤朽葉 万葉「最後の神話の時代」1953年~1975年

山に生きる辺境の人に置き去りにされた捨て子、万葉(まんよう)はやさしい養父母、義兄弟に囲まれ、ときおり不思議な未来を視つつも平穏に暮らしていました。

しかし、万葉の生活は天上の名家、赤朽葉家に輿入れしたことによって一変します。赤朽葉家の千里眼奥様として慕われ、たくさんの子を産み育て、幸福そのものに映る万葉の人生には己の未来視によって暗い影がちらつき始めていました。

赤朽葉 毛毬「巨と虚の時代」1979年~1998年

万葉の娘、毛毬(けまり)は丙生まれの激しい美少女に育ちレディースの頭として戦いに明け暮れ、青春を謳歌していました。

小悪魔的な親友、蝶子との出会いと壮絶な別れ、鮮烈な漫画家デビュー、異母妹百夜の暗躍。

美しい猛女毛鞠は激動の巨と虚の時代を疾走しつづけますが思わぬ運命の大波に彼女は転がされていきます。

赤朽葉 瞳子「殺人者」2000年~未来

時は流れ、神話と虚の時代は過ぎ去り、毛毬の一人娘の瞳子(とうこ)は最愛の祖母、万葉の遺した言葉がもとで途方に暮れていました。

高度経済成長もバブルも遠く過ぎ去った瞳子の時代は希望も少ないが激しさもない静かな世界でした。

祖母の万葉が生涯隠し続けた秘密とはなんなのか?

瞳子が自身の人生に迷いながらも成長していく過程を描く物語の最終章です。

『赤朽葉家の伝説』を読んだ感想とポイント

読了後に永い旅から帰ってきたような不思議な浮遊感が心に溢れます。

千里眼を持った山の女、万葉の視界を横切る切ない未来、美しい猛女毛毬の真っ赤な闘いの日々と孤独、不気味なほど穏やかな瞳子が暮らす現代の三つの時代のイメージカラーは(あか)ですが、それぞれ違います。

個人的に例えるなら万葉は表題の赤朽葉。毛毬は血のような真紅、瞳子はうつろいゆく今様色といった印象です。

3色はときに交差し混ざり合い物語の最後のページが終わると取り残された子どものような不安感に襲われます。

何度もこの話を読み返しましたが赤朽葉の一族の世界から自分だけ置き去りにされたような、井戸端に捨てられていた万葉の幼い姿がちらつくような懐かしいさみしさに浸ってしまいます。そして、ぶくぷく茶が飲みたくなります。

この本は現代日本人に贈る予言書なのか?ビューティフルワールドとは?

平成は終わりました。

当然です。

変わらない世界なんて存在しないですし、あったら不気味です。

今回、再読して新たな発見がありうれしくもあり同時に背筋が寒くなりました。確信します。

この本は予言書です。

作中にこんな記述が出てきます。

「国家を信じず、家族を作らない時代がいつかくると万葉は予感する」

それは確実に今です。

2019年を生きる日本国の私たちです。

リーマンショックによる暗黒、3.11の悲劇、SNSによる不気味な連帯感。

発達障害者の急増。

国家は信じられず、物と情報は溢れているのに精神は果てしなく貧しくて孤独。

そして、戦争の足音が遠くから聞こえてくる今の日本国。

赤朽葉家のよりどころだった山の女、赤朽葉万葉は真の千里眼の持ち主だったのかもしれません。

私たちは産声をあげた赤ん坊に言えますか?

ようこそ、ビューティフルワールドへ。

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