国内小説– category –
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『このたびはとんだことで』感想|桜庭一樹による6つの物語、それはちょっと変わった不思議なお話
〈事実は小説よりも奇なり〉、という言葉がありますね。 現実に起こる事件や出来事は、創造物である小説よりもおかしなときがある、という意味の言葉です。 今回紹介する桜庭一樹による奇譚集は、奇譚というだけあり変わった6つのお話が集まっています。 ... -
『すべての神様の十月』感想|死神、疫病神、福の神……さまざまな神様と人間が織り成す素敵なお話
神様は人間よりも人間くさい。 日本の神話やギリシャ神話などに触れていて、そう思うことが多々あります。 実はそんなに神々しい存在ではなくて、私たち人間とそんなに変わらないのでは?と。 人の誕生を喜んだり、人の幸せのために苦労をしたり……。 もし... -
『食堂かたつむり』感想|声を失った主人公が故郷で生まれ変わる物語
人は大切なものを失ったとき、それが原因で弊害を被ることがあります。 それはショックから過食症になったり鬱になったりと、さまざま。 ただでさえ大切なものを失うという大きな出来事があったのに、そのうえ精神を病んだりと満身創痍になってしまうわけ... -
『木暮荘物語』感想|木暮荘に吹く春風が、過去を心地良いものにしてくれる
春といえば、なにかを始めるにはうってつけの季節ですね。 入学や入社といった大きなもの以外にも、新しい趣味や人間関係などの些細なものまで。 なにか新しいことを始めたくなるのはきっとみんな同じはずです。 春の息吹が運んでくる陽気が私たちをそうさ... -
『シンデレラ・ティース』感想|大嫌いな歯医者で過ごした時間が、主人公の未来を変える
歯医者が苦手な人は子どもや大人問わずたくさんいることと思います。 私もそのひとりでした。 人間は得体のしれないものを怖がる生き物です。 なにをされるのか、歯科医師はなにを考えているのか、それがわからないから私たちは歯医者を怖がるのだと、読了... -
『永遠の出口』感想|あのころの自分と重ねて読む、リアルな〈女の子〉の成長記録
女性の多くが共感する物語といえば、恋愛や仕事が軸のものでしょう。 しかし恋愛や仕事はだいたいが大人になってようやく本格的に起きる物事です。 女性が共感できる物事は恋愛や仕事しかないのか? そんなことはありません。 たとえば小学生時代に友だち... -
『告発者』感想|メガバンクの腐敗と再生への期待を描いたリアルな企業小説
『告発者』は、元銀行員である江上剛さんが、メガバンク内の腐敗を描いた企業小説です。 行員の欲望、嫉妬、裏切りなど、血で血を洗う出世争いが、銀行を知り尽くした作者だからこそのリアルさで表されています。 本作は、実際にあった銀行頭取と放送局の... -
『やがて海へと届く』感想|大震災のあと、いなくなった親友に手向ける花束
今回紹介する、彩瀬まるによる『やがて海へと届く』には、地震や津波の描写があります。 苦手な方はそれを意識したうえでこの記事を読むかどうか決めてください。 大切な人を亡くした人の気持ちは、本人にしかわかりません。 それがどんなに痛くて、つらく... -
『少女には向かない職業』感想|少女は己の殺意に応え奮闘する、残酷な現実のために
殺したいほど憎い相手がいることは、現代では珍しいことではないのかもしれません。 大人であろうが子どもであろうが、それは同じはずです。 けれど大人は子どもに比べて理性や知識があると思います。 子どもはどうでしょうか? 人間として発達途中の子ど... -
『残穢』感想|「死穢」は感染する。史上最恐のドキュメンタリー・ホラー小説
『残穢』は、『屍鬼』などで知られるベストセラー作家・小野不由美さんのホラー小説です。 第26回山本周五郎賞を受賞していて、今は亡き竹内結子さん主演で映画化もされています。 本作は、作者をモデルとした小説家の「私」宛に、読者である「久保さん」...