小川洋子さんは数々の賞を受賞している純文学の作家として有名です。
その中でも第1回の本屋大賞に輝き、映画化もされている『博士の愛した数式』はご存知の方も多いのではないでしょうか。
数学博士とちょっと取っ付きにくい人物を中心としており、本の中にも数式がたくさん出てくる…これだけ聞くとなかなか手に取りにくいかもしれません。
しかし「ぼくの記憶は80分しかもたない」という印象的な言葉と登場人物の魅力、小川洋子さんの巧みで美しい言葉にぐんぐんと引き込まれていくことは間違いありません。
人の美しさや温かさを感じる作品であり、読み終わった後には数学がほんの少し好きになっているかもしれない…そんな一冊です。
著:小川洋子
¥436 (2024/12/01 12:03時点 | Amazon調べ)
ポチップ
タップできるもくじ
『博士の愛した数式』のあらすじ
「博士の愛した数式」の主人公は数学博士と、博士の義姉の依頼でそこに派遣されることになった家政婦「私」です。
「私」を迎えてくれた博士の服にはあちこちにメモ用紙がつけられていました。
実は博士は事故の後遺症で記憶が80分しか持たず、その記憶を補うためにメモ用紙を使用していたのです。
「博士の愛した数式」はそんな博士と「私」、そして「私」の息子である10歳の「ルート」の3人の交流を描いた話です。
外出は一切せず身だしなみや家事のことには一切関心を示さない博士に「私」は最初戸惑います。
しかし数学や野球、静けさを愛する博士はたくさんのことを「私」や「ルート」に教えてくれます。
博士の義姉との衝突もありながらも3人は毎日の食事や野球観戦などいろいろな思い出を作り、温かい時間を過ごします。
少しの寂しさ、悲しみもありながら、人の優しさ、美しさを知ることができるひとつの愛の物語です。
数学の面白さと言葉の美しさを楽しむことができる一冊
数式や記号がたくさん出てくると聞けば「数学はちょっと…」と抵抗がある人もいるでしょう。
しかし博士は難しい数学の問題を10歳の「ルート」や専門的な数学の知識のない「私」に分かりやすく説明してくれます。
心から数学を愛する博士の説明を聞いているとだんだんと数学が好きになってくるはずです。
身近なものと合わせて数学の説明をしてくれるので、読んでいて博士の説明はとても面白いです。
私自身、数学にも野球にも興味がありませんでしたが、どんどんその魅力に引き込まれていきました。
博士が生き生きと数学の話をしてくれている表情まで浮かんでくるのです。
博士に数学を教えてもらえればきっと誰でも数学を好きになるし、数式の美しさに気づくでしょう。
もう一つ「博士の愛した数式」の魅力として言葉の美しさがあります。
小川洋子さんの文章は優しく、上品なものが多いです。
その中でもこの小説の言葉の美しさからは博士や「私」の優しい人柄を感じることができます。
特に最後のページには小川洋子さんの文章力が光り、声に出して読みたくなるような素晴らしさです。
人の温かみと優しさを感じる静かな愛の物語
「博士の愛した数式」は記憶が80分しか持たない数学博士、という他にはあまり見ない設定で書かれています。
毎朝起きるたびに博士はその現実と向き合わなくてはいけません。
それでも静かに自分の好きなものと向き合っていく博士。
そんな博士と向き合い、博士のために何ができるか思い続ける「私」や幼いながら母親と博士のことを本当に大切に思っているルート。
そして何十年も博士を見続けている義姉。
この小説に出てくる人はみな優しく、愛に溢れています。
不器用な愛情表現もたくさんありますが、この本のあちこちにその愛情を感じることができます。
この小説を読んだ後には優しく、温かい気持ちになっていることでしょう。
読んだ人の心を穏やかな気持ちにしてくれる陽だまりのような本だと思います。
今では誰もが知っている賞である本屋大賞の記念すべき第1回受賞作品です。
ぜひ読んでみてください。
著:小川洋子
¥436 (2024/12/01 12:03時点 | Amazon調べ)
ポチップ
コメント