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『羊と鋼の森』感想|あなたの背中をそっと押してくれる言葉たち

自分のやっていることに自信が持てず、まるで森のなかで迷ったように立ち尽くしてしまうときがありませんか。

そんな時にはこの1冊を手に取ってみてください。

読み終えると、不思議と心が軽くなる。

こんな表現がぴったりだと思います。

自分が進むべき方向がわからなくなったとき、優しく背中を押してくれる作品です。

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『羊と鋼の森』の概要

出典:Amazon公式サイト

タイトル羊と鋼の森
著者宮下奈都
出版社文藝春秋
出版日2015年9月15日
ジャンル音楽小説

2016年に本屋大賞を受賞し、話題になった1冊です。

主人公はピアノの「調律師」。

スポットが当たることが少ない職業ではありますが、作者自身がお世話になってきたという調律師さんからの話をもとにして丁寧に描き出しています。

『羊と鋼の森』のあらすじ

主人公は、どこか不安げで、でもまっすぐ前を向いている純朴な青年・外村。

北海道の自然豊かな山で生まれ育ちました。

彼が高校生のときに「調律師」と出会うことから物語は始まっていきます。

「ピアノの森」との出会い

ピアノの「調律師」を、体育館に案内してほしい。

高校の担任の先生にそう頼まれたことで、外村は後の師匠となる板鳥さんに出会います。

ピアノを弾いたこともなく、意識したこともなかった外村は、初めて対峙したピアノに感銘を受けます。

自分が育ってきた森の匂いがすること。

そして、森のような深さを含んだ音がすること。

森の景色が、「調律師」がひとつひとつ作業を進めていくたびに、クリアになっていくこと。

板鳥さんは外村と交わしたわずかな会話だけで、すでに彼の興味がピアノにあることを感じて、名刺を差し出したのでした。

こうして外村は、日の暮れた森に入っていくような少しの不安を携えて、「ピアノの森」に足を踏み入れることになります。

先輩調律師たち

専門学校を卒業し、外村は板鳥さんと同じ楽器店に就職します。

おそらく彼が出会ってこなかったであろう、ひと癖もふた癖もある個性豊かな先輩たちが彼の成長を後押ししてくれます。

  • 外村を主に指導してくれるのは、バンドのドラマーでもあり、自分の芯をしっかり持っている柳さん
  • 後輩に厳しい言葉を浴びせつつも、仕事に対しては人一倍情熱がある秋野さん
  • そして、同僚からも一目置かれている、ベテラン調律師の板鳥さん

プロからも指名が来るほどの調律師でありながら、外村を常に気にかけてくれている優しい先輩です。

多くの壁にぶつかり、「どうしたら調律がうまくなれるのか」を日々自問する外村に、先輩たちがそれぞれの言葉で行く先を示してくれます。

双子のお客さん

柳さんが担当している佐倉家は、双子の高校生がいる家庭です。

柳さんの同行で訪れた際、双子の織りなす音の違いや表現力を目の当たりにしたことで、外村はピアノの世界により一層惹きつけられました。

もう少し明るい音にしてほしい、丸い音が好きといった、調律に対する抽象的な依頼を受け取り、外村はお客さんの求める音を的確に表現しようと必死に取り組んでいきます。

しかしある日、佐倉家からの依頼がキャンセルになります。

延期ではなくキャンセルになった理由は、妹の由仁(ゆに)が、ピアノを弾けなくなってしまったからでした。

「ピアノとどう向き合っていくか」という問いを通して、外村と双子が時を同じくして成長する姿が描かれていきます。

『羊と鋼の森』を読んだ感想

読み終えたとき、心がじんわりとあたたかくなるような感覚があります。

劇的な展開はありませんが、森を吹き抜ける清々しい風を感じるような、爽やかな読後感です。

心地良い文体に埋もれる

冒頭の一文から、不思議と惹きつけられます。

読んでいて心地良く、スッと心に染み入る文章です。

どの表現も優しくて、美しい印象を受けました。

難解な言葉はひとつもありません。

まさに読み手を想定して「調律」された、丁寧であたたかみのある文体です。

板鳥さんが調律師として目指す音を聞かれたとき、小説家・原民喜の言葉を挙げていましたが、まさに作者・宮下さんの文章だと感じました。

「明るく静かに澄んで懐かしい文体、少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体」

『羊と鋼の森』本文より引用

言葉と音は似ていて、組み合わせ方や使い方によって受け取る表現が変わってきます。

文学と音楽に互換性があるという発見、そして宮下さん自身の文体にしびれました。

物語はもちろん、文章を読むこと自体を楽しめるのが魅力です。

何かを目指すということ

主人公の外村は、いつもどこか不安げでナイーブです。

小説の主人公にしては、少し弱気すぎるかもしれません。

でもそこにかえって人間らしさがあり、自分のなかにも時折こんな弱気な自分がいることを思い出させてくれます。

調律師をしながら「何が正しいのかわからない」と奮闘する外村に、なかなか前に進めなかった就職活動中の自分を重ねて読みました。

今でこそ社会人ですが、それでもまだ自分に自信はありません。

生きていくうえでの葛藤を、作品をとおして追体験していくような感覚がありました。

同時に、「絶対」も「正しい」もない調律の世界に、人生に近いものも感じます。

自分の興味や関心から確信を持って始めたことも、何が正しいのかがわからず迷ってしまうことは多々あります。

それでも自分を信じて、前に進んでいくしかありません。

外村が調律師として前に進んでいくしかないと覚悟を決める場面では、胸に迫るものがありました。

一方で、ピアノが弾きたくても弾けなくなってしまった双子が、葛藤しながら夢を見つけ出していく姿も印象的です。

自分にとって何が一番大切で、何を目指すべきなのかは、もがいた先に示されるものなのかもしれません。

迷いや悩みを積み重ねていくことも、決して無駄ではないと教えてくれる。

そんなストーリーに心惹かれました。

先輩調律師たちの言葉

作品を豊かに彩ってくれているのが、個性豊かな先輩調律師たちの言葉です。

読者に語りかけてくれているような力強さがありました。

「焦ってはいけません。こつこつ、こつこつです」

『羊と鋼の森』本文より引用

板鳥さんが外村にかける言葉。

ゆるやかな表情に見えて、確固たる意思をもってピアノと向き合っている板鳥さんだからこその言葉です。

上達に近道はありません。

何事もこつこつ続けていくことの大切さをストレートに教えてくれました。

「才能っていうのはさ、何かをものすごく好きだっていう気持ちなんじゃないか」

『羊と鋼の森』本文より引用

個人的に一番ぐっときたのは、外村を指導してくれる柳さんのこの言葉です。

初めて読んだ大学生の頃の自分には刺さる言葉でした。

誰かと比べたり、自分に自信を持てなかったりすることもありますが、結局大切なのは自分の気持ちなのだと教えてくれる、印象深い言葉です。

こうした言葉の数々があちこちに散りばめられているのが、この作品の魅力と言えます。

『羊と鋼の森』はどんな人におすすめ?

『羊と鋼の森』をおすすめしたいのは、こんな人です。

  • 何かに迷っていて、背中を押してほしい人
  • 読後感が爽やかな作品を読みたい人
  • 好みの文体を探している人

ゆったりと、森のなかを散歩するような気持ちで読める作品です。

読書自体を楽しみたい、じっくり読み進めたいと思う方におすすめです。

おわりに|迷っても悩んでもいい、ただこつこつと

自信なんてない。どう生きたら、何を目指したら良いのかわからない。

そんな自分との葛藤に、静かながら力強いエールを送ってくれる作品です。

人生の主人公は自分でしかありません。

自分で何かをつかみとり、発見し、進んでいこうとする外村の姿に勇気づけられることと思います。

言葉のひとつひとつを味わいながら楽しんでみてください。

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