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『風の歌を聴け』感想|村上春樹の魅力はデビュー作を読めばわかる。

ノーベル文学賞の季節になると、必ず話題に上がる村上春樹さん。

彼の存在は世界中で知られており、その名はみなさんも一度は耳にしたことがあるはずです。

『ノルウェイの森』は読んだ方は多いのではないでしょうか?

今回は、そんな村上春樹さんのデビュー作である『風の歌を聴け』を紹介します。

「村上春樹」と聞いたとき、みなさんはどのようなイメージを思い浮かべるでしょう?

「孤独で憂鬱な感じ」「独創的でユーモアな文章」……。

たくさんの声が届いてきそうですが、この『風の歌を聴け』には、村上春樹さんの魅力がギュッと詰め込まれているのです。

そんな強烈な魅力を秘めた一冊に迫っていきましょう。

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『風の歌を聴け』あらすじ

本作の登場人物たちにはきちんとした名前がありません。

主人公は「僕」、僕の親友は「鼠」というあだ名で語られています。

「僕」と鼠が通うバー、「ジェイズ・バー」のマスターである「ジェイ」と、冒頭で登場する架空の小説家「デレク・ハートフィールド」を例外として、基本的に登場人物の本名は最後まで明かされません。

この小説は、名前のない街で、名前のない人物たちが、「僕」の周りでアクションを起こすことにより展開する物語なのです。

舞台は1970年の夏。翻訳業で生計を立てている20歳の「僕」は、実家のある港町に帰省し、再会した友人の鼠と「ジェイズ・バー」で毎日ビールを飲んで過ごします。

鼠とは3年前からの付き合いですが、酔っ払っていたため、どこで、なぜ、どのようにして知り合ったのか、お互い全く覚えていません。

とにかく、気づいた時にはビールを飲み、色々なことを語り合う仲になっていたのでした。

そんなある日、「僕」はジェイズ・バーで泥酔した小指のない女の子と出会い、彼女を介抱し家に送り届けます。

しかし「僕」は女の子にあらぬ誤解をされてしまいます。

数日後、「僕」はレコード屋で女の子と再会します。

女の子はそのレコード屋でアルバイトをしていたのです。

そこでも女の子は「僕」に疑いの目を向けます。

しかし、くだらない冗談を言ったり、無口だけど的確なアドバイスをする「僕」と話していくうちに、女の子が抱く不信感はなくなり、やがて2人の心は打ち解け、気づけば頻繁に会う関係になっていました。

しかし、「僕」が東京に帰る日も近づいていました。

「僕」は密かに想いを寄せている女の子や、空虚な思いを抱えビールとともに毎日を送る鼠、そんな僕らを暖かく見守るジェイとともに、残りの日々を過ごしていきます。

デレク・ハートフィールドの存在

本作には主に4人の登場人物が出てきます。

「僕」、鼠、小指のない女の子、そしてバーのマスターであるジェイ。

基本的には彼らが物語を進める歯車のような役割を務めているのですが、もうひとり、気になる人物が出てきます。

それが、主人公が文章を書くことを学んだと記している、「デレク・ハートフィールド」という小説家です。

デレク・ハートフィールドは1909年にアメリカのオハイオ州で生まれます。

父親は寡黙な電信技師、母親はクッキーづくりと星占いが趣味の小太りの女性でした。

ハートフィールドは幼少期、友人も少なかったため主に漫画を読んで過ごしていたといいます。

高校卒業後に郵便局員になりましたが、長続きせずに退職し、小説家としてデビューしました。

ハートフィールドが命を絶ったのは1938年の6月のことです。

同年3月に母を亡くしていた彼は、右手にヒトラーの肖像画、左手に傘を差しエンパイア・ステートビルの屋上から飛び降りました。

彼の墓碑には、

「昼の光に、夜の深さがわかるものか」

というニーチェの言葉が刻まれています。

ハートフィールドの代表作は『冒険児ウォルド』シリーズで、全部で42編存在します。

また、彼はレミントンのタイプライターを半年ごとに買い替えた、という伝説を残しています。

あとがきで主人公の「僕」はハートフィールドの墓を尋ねるためにアメリカへ渡りました。

そのあとがきでは、村上春樹さん自身も以下のように記しています。

最後になってしまったが、ハートフィールドの記事に関して前述したマックリュア氏の労作、「不妊の星々の伝説」(Thomas McClure;The Legend of the Sterile Stars:1968)から幾つか引用させていただいた。感謝する。 1979年5月 村上春樹

こう書かれている通り、デレク・ハートフィールドという小説家は村上春樹さんにとっても、主人公の僕にとっても偉大な存在であることがわかると思います。

しかし、ここでひとつ衝撃的な事実を明らかにしておきましょう。

デレク・ハートフィールドという小説家は実際に存在しません!

これは村上春樹さんが実に「それっぽく」書き上げているだけで、ハートフィールドという作家は、モデルとなった人物すら存在しないのです。

騙されてしまうのも無理はありません。

実際に本作を読んだ読者がハートフィールドの小説を求め図書館に殺到し、困惑してしまう司書が後を絶たなかったそうです。

後に村上春樹さんは、あとがきに自身の名を使ってハートフィールドに対して言及したことが問題になったことを明らかにしています。

つまり、本作はそういった村上春樹さんの「感覚」で書かれた部分が大部分を占めているため、読者側もそんなに力を入れて読まなくても楽しめる作品となっているのです。

この他にも、「えっ!」と思うような仕掛けが至るところに散りばめられているので、「読むぞ!」と気張らずに、「さて、読むかぁ」と力を抜いてお読みになることをおすすめします。

『風の歌を聴け』を読んだ感想

『風の歌を聴け』は村上春樹さんのデビュー作ということで、ファンの方も、そうでない方も必読の一冊です。

村上春樹さん自身も、本作の、特に冒頭部分が大変気に入っているそうで、今でもこの本を読んで勇気づけられているといいます。

村上春樹さんの作品を読んだことがない人の中には、「毎年ノーベル文学賞の候補に持ち上げられるほどだし、本の内容もレベルが高くて難しいかも」なんて身構えてしまう方もいるかもしれません。

でも、断言します。

村上春樹さんの文章は読みやすいし、時にはとってもユルいのです!

確かに、難解な表現も度々使われることがありますが、そういった文章の間にポン、と「ユルい」演出が施されていると、そのギャップに驚き、そして笑ってしまうことでしょう。

例えば、本作の主人公がラジオから景品のTシャツを贈られた場面では、Tシャツについての文学的な説明を放棄し、「こんな感じのシャツだ。」の一文とともにTシャツのイラストを挿入してしまっています。

そうした「ユルさ」が度々配置されており、読書の不意を突き笑わせ、リラックスさせてくれるのです。

また、本作は順序良く物語が進んでいくわけではありません。

物語は頻繁に別の場所まで飛躍します。

そして戻ってきたかと思えば、最初の位置と微妙にずれていたりするのです。

そうしてパズルのピースのように散りばめられた物語は、回想という形をとることにより、主人公である僕の過去を追体験できる構造となっています。

おわりに

そして、本作には続編が存在します。

『風の歌を聴け』は「鼠三部作」と呼ばれるシリーズの1作目です。

本作の後、『1973年のピンボール』、『羊をめぐる冒険』へと続いていきます。

しかし続編を読むことは必須ではありません。

それぞれ独立した物語でもあるので、まずは『風の歌を聴け』を読み、気に入ったら残りの2冊、という読み方をおすすめします。

今や超有名人である村上春樹さんの原点、『風の歌を聴け』。

ちょっと読書に興味を持ち始めた、あるいは村上春樹という名前だけ知ってるけど、実際に読んだことない方たちに特におすすめしたい本です。

読後、きっとあなたは彼の文章の虜になっていることでしょう。

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