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『荒城に白百合ありて』感想|幕末の動乱の中で燃え上がる冷たい恋の物語

歴史上の出来事は、昔から小説の題材としてよく使われています。

その中でも、人気のあるのが幕末期。

坂本龍馬や新撰組など、さまざまな立場の人物が取り上げられています。

現在放送中の大河ドラマも幕末が舞台ですね。

さて、今回取り上げる作品も、そんな幕末を舞台にした、男女の物語です。

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『荒城に白百合ありて』の概要

出典:Amazon公式サイト

タイトル荒城に白百合ありて
著者須賀しのぶ
出版社KADOKAWA
出版日2019年11月21日
ジャンル歴史小説

この作品の著者である須賀しのぶさんは、少女向けライトノベル作家としてデビューしました。

近年は、近現代を舞台に、この作品同様、歴史の波の中で生きる人々に焦点を当てた物語を多数執筆しています。

また、今話題の作品の表紙を多数手がけるイラストレーター・遠田志帆さんの表紙も魅力的です。

『荒城に白百合ありて』のあらすじ

この物語は、会津の女性と薩摩の男性という、相反する立場の2人の出会いと結末を描いた作品です。

戦の始まりの日に

その朝、会津藩の城下に半鐘が鳴り響きました。

それは、新政府軍が会津に攻め込んできたことを告げる合図。

この合図を聞いたら城下の者は城に避難することになっていたのです。

森名家の娘・幸子も半鐘の音を聞き、早く避難しなくて良いのかと母に問います。

しかし母は、幸子に白装束を渡し、城に入るのではなく、この場で会津の誇りを胸に一家全員自害をする旨を伝えました。

自分も城を守るために戦いたいと幸子は思いますが、母の有無を言わさぬ迫力に圧され、自害の覚悟を決めます。

しかしその時、母の元に一通の手紙が。

そしてその手紙を受け取った母が明らかに「変わった」のを、幸子は感じ取ったのです。

空っぽの少女・鏡子

物語は幸子の母・鏡子の少女時代に遡ります。

それは浦賀に黒船が来航し、世の中が大きく変わる気配が感じられる頃。

会津藩士の父を持ち、家族で江戸の会津屋敷に暮らす鏡子は、容姿も美しく、学もあり、武芸にも長けとさまざまな才能に恵まれていました。

しかし、幼い頃から母に「会津の女として、親や夫、ひいては子のことだけを考えて生きなくてはならない」と教えられ、自分の考えというものを持ったことがありません。

鏡子は、自分が生きているという実感のない、まさに空っぽの存在だったのです。

薩摩藩士・岡本伊織との出会い

そんなある日、江戸を大地震が襲います。

鏡子は衝動的に家を飛び出し、あちこち燃えて瓦礫だらけの外をふらふらと歩いていきました。

世界が破壊されていく様子に魅せられ、人々が逃げ惑う中を笑みを浮かべながら歩き回る鏡子。

そんな彼女の異質さに気づき、彼女を保護したのが、薩摩藩士の岡本伊織です。

彼は薩摩から江戸に学問のために来ていたのですが、攘夷や開国について熱く議論する学友たちのように時代に流される熱さを持てない、やはり空っぽの人間でした。

自身の混乱の中を歩く鏡子を見てすぐに、伊織は彼女が自分と同じ種類の人間であることに気がついたのです。

その後、伊織は鏡子を家に送り届け、命の恩人として家族ぐるみの交流が始まりました。

伊織と鏡子は互いの本質が同じであると心の中では理解し、複雑な感情を抱きながら、やがて時代のうねりにそれぞれの身を任せていくことになるのです。

『荒城に白百合ありて』を読んだ感想

作中でメインに描かれるのは、鏡子と伊織の関係性です。

しかし、幕末という時代そのものもストーリーに大きく影響しており、一層読み応えのある作品になっています。

「恋」に収まらぬ2人の想い

この本は発刊当時「幕末版ロミオとジュリエット」という紹介をされていました。

それはおそらく会津の女性と薩摩の男性という、互いの属する藩が敵対しているという構図からきたものだと思うのですが、実際に読んでみると、その紹介はあまりしっくりこないような気がします。

伊織と鏡子の関係は、ロミオとジュリエットのような熱く燃え上がる恋心とは正反対の、冷ややかなもの。

どちらかというと同族嫌悪に近いかもしれません。

2人が直接言葉を交わした回数もそれほど多くありませんし、鏡子は物語の中盤で会津の男性に嫁ぐなど、2人の人生は交わることのないまま物語は進んでいきます。

お互いにとって「片割れ」と思えるほどの存在であることには気づいていて、心の底にずっと相手への想いを抱き続けている、そんな静かなのに激しい感情が、物語の最後に一気に溢れ出るのがとても印象的でした。

そして、溢れ出した想いが迎える結末の無情さがまた、なんとも言えない読後感を与えてくれるのです。

常に役割を演じ続ける女性

主人公の鏡子は、会津の女性として、幼い頃から親や夫、そして子どものことを考えて生きるようにと教えられていました。

それは、女性も自分の考えを持ち、自由に生きていくべきだという現代の思想とは大きく異なっていますね。

鏡子は会津藩士の娘、妻、そして親、と立場を変えながら、自らの意思に関係なく、その立場にあった行動を選んで生きていきます。

作中には、中野竹子や神保雪子といった、会津の籠城戦で戦った強い女性たちも登場し、鏡子も彼女たちと交流を持ちますが、鏡子自身には自らの力で国を守ろうという気持ちは起こりません。

鏡子は竹子や雪子を自らに投影することで、自身の居場所を作っていたのです。

このような生き方は、現代の感覚ではあまり良いもののようには見えませんが、当時の日本の女性の多くは、鏡子のように自らの意思を持たずに生きてきたのかもしれません。

それが彼女たちの当たり前だったのでしょう。

物語の終盤、鏡子は、娘との心中をやめ、娘には城で戦い生き延びるように言います。

直接の原因は伊織からの手紙ですが、会津のために戦いたいという娘の強い意志のこもる目を見て、この子を殺してはいけない、と鏡子が思い至ったからでもありました。

からっぽで役割を演じ続ける鏡子と、自分の道を自分で決めたいと思う娘・幸子。

これは、幕末から近代へという、女性の生き方の転換点を描いているように感じました。

攘夷の熱狂

もう一つ、物語を大きく動かしていくのは、伊織の周囲で巻き起こる尊王攘夷運動です。

黒船の来航をきっかけに、長く続いた江戸幕府に対しての不満が日本のあちこちで噴出していた時代。

伊織の属する薩摩藩は討幕派の中心勢力として筆頭してきます。

伊織は国を憂い立ち上がる仲間たちの熱狂を、一歩引いた目で見ていました。

そして、蜂起し、命を落とす仲間たちの生き様を、結果的には無駄死にだと思いますが、同時に自分の命を懸けられることがあることに対しての羨ましさも感じています。

他の歴史小説を読んでも、大河ドラマを見ても、この攘夷という波にはエネルギーのある若者を惹きつける力があるように思いました。

自らはその波に積極的に飛び込むことのない伊織が、そつなく立ち回ろうとした結果、攘夷運動に流されていくさまを見ても、たくさんの人の生き方を変えた、凄まじい運動であったことがうかがえます。

このような国中を巻き込んだ熱狂は、今の日本にはおそらく存在しません。

それほどまでに江戸の終わりというのが人々にとってセンセーショナルな歴史の転換点であったことに気付かされました。

『荒城に白百合ありて』はどんな人におすすめ?

この本は、以下のような人におすすめです。

  • 歴史小説が好きな人
  • 普通の恋愛小説は物足りないという人
  • 女性の生き方について興味のある人

歴史上の出来事については相当しっかりと描き込まれているので、歴史小説を読み慣れている人にも読み応えがあるのではないかと思います。

そして、なんといっても作品のメインは鏡子と伊織の関係ですね。

普通の恋とは全く違う2人の様子は、恋愛をテーマにした小説をよく読まれる方であっても新鮮に感じられるのではないかと思います。

また、鏡子のように自分を殺して生きる女性の姿に、今と昔の違いを見出すのも面白いですよ。

おわりに

いかがでしたか。

伊織と鏡子の想いがどのような結末を迎えるのかは、実際に読んで確かめてほしいと思います。

また、作品全体を通して、情景や心情の描写が非常に巧みなのもこの小説の魅力の一つ。

美しい文体で綴られる、激動の時代を生きた2人の物語をぜひ堪能してくださいね。

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