川端康成といえば日本を代表する小説家で、その名前を一度は聞いたことがあるでしょう。
けれど小説をまだ読んだことがない方にとっては純文学のイメージがあり、読みにくいだろうと思っているのではないでしょうか?
しかし川端康成の文章はとても読みやすく、やさしい言葉で書かれています。無駄がなく、漢字も必要以上には使わません。作者が選び抜いた言葉で物語は美しく描かれます。
そんな作者の小説でも『古都』は日本の美に溢れています。
それではさっそく『古都』の魅力を紹介していきましょう。
著:川端康成
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『古都』の概要
出典:Amazon公式サイト
タイトル | 古都 |
著者 | 川端康成 |
出版社 | 新潮社 |
出版日 | 1968年8月27日 |
ジャンル | 長編小説 |
川端康成は『雪国』『伊豆の踊子』『山の音』『眠れる美女』など数多くの名作があり、ノーベル文学賞も受賞する世界的に有名な小説家のひとりです。
この『古都』という小説は、古い歴史をもつ京都という町を舞台にした双子の姉妹をめぐる悲哀を描いた作品です。
『古都』のあらすじ
京都は西陣にある呉服問屋の娘、千重子は庭にある紅葉の古木に毎年咲く二つのすみれを見て物思いに耽っていました。
古木にはくぼみが二つあり、それぞれの穴に一つずつ花をつけます。
「上のすみれと下のすみれとは、会うことがあるのかしら。おたがいに知っているのかしら」
出典:古都6ページ
と多感な娘は呟きます。
この何気ない問いかけが、後に二人の娘がたどる行く末を予感しているのです。
めぐり会う双子の姉妹
春のある日、千重子は幼なじみの真一と花見に行き、「自分は捨子だ」と告白します。捨子ではありましたが父母の愛情を受けまっすぐに育つ千重子。
五月になり友人の真砂子と北山杉を見に行くと、そこで自分と瓜二つの娘を目にします。
時は流れ祇園祭の季節、八坂神社で七度まいりをしている北山杉の娘と再会します。苗子というその娘は千重子を、探していた双子の姉だと再会を喜ぶのでした。
揺れ動く想い
再会した二人ですが苗子は千重子との身分の違いを感じ、会うときは「北山杉の村へ来とくれやす」と言って村に帰っていきます。
千重子は苗子に会いに北山杉の村へ行き、杉林の中で話していると夕立に遭遇。雷鳴が轟き怖がる千重子を苗子は抱きかぶさり守ります。
苗子のために千重子は西陣織の職人、秀男に苗子の帯を織ってほしいと頼んでいました。
しかし苗子は千重子にあこがれを抱く秀男の心を知り、千重子の身がわりに帯をもらうのは嫌だといいます。
幻とともに
秀男が完成させた帯をもって苗子を訪ね、十月の時代祭に帯を締めてくれと約束します。
苗子は秀男から結婚を申し込まれたことを千重子に伝えますが、秀男が自分に千重子の幻を見ていると言いいます。
そして、まわりから妙な目で見られたら千重子に迷惑がかかるから辛いと。
冬のある夜、苗子が千重子のいる西陣を訪れます。床で身を寄せ合い二人は語り合い
「しあわせて、こんなんどっしゃろな」
出典:古都263ページ
と口にする苗子。
外には淡雪が静かに舞っているのでした。
『古都』を読んだ感想
この小説は双子の姉妹が出会い時を重ねていく様子が、古都を舞台に春から夏、秋そして冬と四季をめぐる構成で展開されます。
文章を読んでいると美しい描写と会話で情景が目に浮かび、人物の心情が自然と心に伝わってくるのではないでしょうか。
読後も深い余韻が残る、美しさが詰め込まれた作品になっています。
古都の風情を感じる
作中には古都のが四季が色鮮やかに描かれ、京都の名所や行事、実在するお店が多数登場します。
物語は終始、古都の文化とともに絵巻物のように進んで行き、読んでいると思わず京都を旅したくなるでしょう。
登場人物たちの会話が胸に染み入る
美しい情景とともに描かれる登場人物たちが皆、北山杉のようにまっすぐで清々しい。
そして京ことばで交わされる会話には臨場感が溢れています。
川端康成の想い
京都は古き物も大切にしますが、いち早く新しい物を取り入れる面もあります。少しずつ古来の京都が失われていく様子に危惧していた川端康成。
せめて文章で美しい京都を書き残しておきたいという想いが伝わってきます。
『古都』はどんな人におすすめ?
『古都』はこのような方に読んでほしい小説です。
- 美しい文章に触れたい人
- 京都が好きな人
- 川端康成の小説が好きな人
小説を読むのが好きな人には、心に残る美しい文章がいくつも味わえます。また、京都が好きな人にとっては特別な一冊となるでしょう。
ぜひ、古都に想いを馳せ川端康成が描く世界に浸ってみてください。
おわりに
本作は1961年から1962年まで朝日新聞に掲載され、連載中に文化勲章も授与されています。
授与されたときの記者会見で、
「古い都の中でも、次第になくなってゆくもの、それを書いておきたい」
と川端康成は答えています。
しかし小説のあとがきでは
「眠り薬に酔って、うつつないありさまで書いた」
とあり、なにを書いたかもよくおぼえていないそうです。
川端康成が流麗な文章で綴る京都という町。作者が目にしていた京都から、現在の姿はさらに大きく様変わりしています。
けれど小説の『古都』は古き良き京都の世界をいつまでも今に残していきます。
ぜひ作者が愛した古都の風情を堪能し、いつかこの町を訪れてみてはいかがでしょう。
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