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『レプリカたちの夜』感想|歪む世界を眺めることしかできない、むず痒さ残る物語

第2回新潮社ミステリー大賞受賞作品。

そう聞けばだれでもものすごいミステリー小説なのだろうなぁと思うでしょう。

しかしこの一條次郎によるデビュー作『レプリカたちの夜』は選考会を戸惑わせたミステリー小説でした。

だんだんと歪んでいく世界をただ見つめることしかできない主人公と、世界と同じようにおかしくなっていく仕事仲間。

果たして仕事仲間は、主人公は、世界はどうなってしまうのでしょうか。

あの伊坂幸太郎が激賞したと言われる『レプリカたちの夜』を、少しだけ紹介したいと思います。

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『レプリカたちの夜』の概要

出典:Amazon公式サイト

タイトルレプリカたちの夜
著者一條次郎
出版社新潮社
出版日2018年9月28日
ジャンル哲学的SFミステリー

普通に毎日を過ごしていた主人公の往本は勤務先の工場であるモノを目にしたことをきっかけに、歪む世界に巻き込まれていきます。

人間とは、動物とは、記憶とは、自我とは、世界とは……。

この世のあらゆる不確かなものに触れてしまったために崩れる平穏な毎日は、とても脆いものなのでした。

これはある種哲学的なミステリー小説です。

『レプリカたちの夜』のあらすじ

動物のレプリカを作っている工場勤務の往本は、残業中にシロクマを見かけます。

それが本物なのかはたまたレプリカなのか、しかし確実に動いているところを見た往本は翌日工場長に呼び出された先で「シロクマについて調べて欲しい」と脅しに近いことも言われました。

仕方なくシロクマの情報を追う往本でしたが、調べれば調べるほどに往本の周りでは不可解なことが起こり、世界はそのいびつさを増していくのです。

世界の真理にまで触れそうになったとき、往本はただ傍観者となることを選ぶのか、それとも自我を持ち続け意思を貫き通すのか、読者も生きていくことを深く考えさせられるでしょう。

トーヨーに勤める人たち

動物のレプリカを作る工場、株式会社トーヨーで働く主人公の往本(おうもと)はこの物語上では比較的まともな人間です。

と言ってもこの物語上ではというだけで、読み進めると往本も少し感覚がズレていることがわかります。

往本と同期で同い年だと言う粒山(つぶやま)は髪の毛が薄いせいかとても同い年には見えません。

往本がシロクマを目撃したことを知る数少ない人物でもありました。

そして女性従業員であるうみみず、彼女はふたりの同期ではありませんが往本と同い年くらいに見えます。

動物が人間よりあらゆる点で劣っているなどの思想に対してきつく反発する様子を見せる彼女は、たまにスイッチが入ると長々と語り始めることがあるようでした。

彼らが働く工場の工場長、馬鯛(またい)は長身で猫背で顔色はいつも悪く、シロクマについて話す往本と粒山を見かけ声をかけたのでした。

シロクマはスパイかもしれないからくれぐれも秘密裏に調査をよろしく、最悪命を奪ってもいいと告げる馬鯛はあるときを境にその姿を消します。

ほかにも往本宅の向かいに住むブラジル人、粒山の妻だと言い張る不気味な女性、人口生命体と名乗る女性などなど、少しおかしな人物がたくさん登場します。

読み進めるとわかる〈わからない〉こと

そもそも導入部分の、残業をしていた往本が工場内でシロクマを目撃した、というところからして意味がわかりません。

読了後にその意味がわかるかどうかはこれから読むみなさんにお任せしたいと思います。

シロクマの存在や消えた往本の部長、謎は謎を呼びその謎は世界を歪ませていきました。

謎は解決されないので、なるほどこういうことかな?と思った矢先にその予想は裏切られ、読者はどんどんと歪みのなかへ身を投じていくことになるのです。

ある意味物語の世界に入り込む、特別な体験が簡単にできるのではないでしょうか。

レプリカたちによる宴

『レプリカたちの夜』というタイトルのとおり、あらゆるレプリカが登場します。

レプリカかスパイか謎なシロクマに、先ほど述べた人口生命体を名乗る女性、終盤にはうみみずやカッパのレプリカなども出てくる始末。

往本率いる登場人物たちが、その立場をレプリカたちに奪われていくように感じるほど、レプリカたちは物語と世界を侵略していきます。

その結末はレプリカたちの勝利か人間たちの勝利か、そもそも人間たちの世界など存在したのか、すべてが暗いヴェールの向こうに存在するかのような世界観でした。

『レプリカたちの夜』を読んだ感想

ミステリー大賞を受賞した作品にしてはミステリー要素が少ない気がしますが、そんな不満をかき消すほどの魅力をもった作品だと言っても過言ではないでしょう。

理解が追いつかず謎は深まるばかりなのに、なぜか読むのがやめられない……。

この先はいったいどうなるんだろう、そんな好奇心が勝ってしまうのです。

不思議な魅力と不気味さをあわせもつ『レプリカたちの夜』、難しい中身なのに簡単に別世界を覗ける素敵な本でした。

引き込まれる世界観

導入部分、特に書き出しがこの作品の魅力のひとつです。

シロクマを目撃したのは、夜中の十二時すぎだった。

というこの一行目。

そのたった一行で多くの読者を引き込んだことでしょう。

なにも不思議なことなんてないとでも言うように、淡々と衝撃的な物語は幕を開けます。

工場内でシロクマを見たことや消えた部長のこと、導入から明らかに異常事態が多発しているのにも拘わらず往本が慌てふためく様子は、書かれていませんでした。

哲学的SFチックなミステリー小説

謎が謎を呼うという点においてはこれぞミステリーと言えるでしょうが、その謎が解決されないまま膨張し続けるとしたら?

それはただのミステリーではなくある種哲学的な小説ではないでしょうか。

おまけに人間とレプリカ、人口生命体なども出てくるものですからSFにも感じられます。

ミステリーに哲学、SF。

濃いテーマを欲張りに混ぜているわりには読ませる作品になっているので、それはもう作者である一條次郎の才能としか言いようがありません。

衝撃的なデビュー作

本作品は、新潮社ミステリー大賞を受賞し、伊坂幸太郎が激賞していて、おまけに作者のデビュー作であるというなんとも濃厚な背景をもっています。

読者のなかでは賛否がわかれていますが、レビューなどでよく言われるのはやはり導入部分が惹きつける力の強さです。

たとえば微妙だなぁというレビューでも、導入部分には魅力を感じて読み始めたという人が多いようでした。

デビュー作でこれほどまでのものを書いたということ、そして小説の命とも言える一行目の魅力が素晴らしいこと。

その情報を知っただけでも読んでみようと思えるのではないでしょうか。

『レプリカたちの夜』はどんな人におすすめ?

ミステリー大賞を受賞しているからと言って、ミステリー小説が好きな人に安易におすすめできるものではないということは、わかっていただけたかと思います。

哲学的やSFチックなど書いてきましたが、それもまた大々的なテーマではないので哲学やSFが好きな人にもおすすめするには難しいでしょう。

なので私は単に、

  • あらすじや導入部分に興味を持った人
  • 賛否がわかれる内容を読みたい人
  • 後味が悪いお話が読みたい人

そしてあえて〈ミステリー大賞を受賞した、哲学的でSFチックな小説に興味を持った人〉におすすめしたいと思います。

おわりに|シロクマを目撃したあの日から、世界は歪み始めました

なぜこの作品は賛否がわかれてしまうのか、それでいて魅力的なのか、そのワケが雰囲気だけでも伝わっていれば私としては満足です。

私がこの本を読もうと決めたのもあらすじと導入部分に惹かれたからでした。

なにか特別な力をもっている本作品は、読む人を選ぶ本なのに一読の価値ありだとも思ってしまう、不思議な本です。

もしかしたら記憶や存在といった不確かなものに対して、新しい価値観や考えが生まれるかもしれません。

一度読み始めるととまらないこの本を、なんとなく読み始めるのもいいでしょう。

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