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『名も無き世界のエンドロール』感想|純粋無垢で鮮烈な史上最大のプロポーズ大作戦

「一日あれば、世界は変わる。二日あったら、宇宙がなくなってもおかしくない」

「怖いのは、存在を忘れられてしまうこと」

本作は、これらのフレーズをキーに、かけがえのない友情と愛情を描き、どうしようもない喪失感とまっすぐな想いを、サスペンス・ミステリーという手法を用いて昇華させた物語です。

「ドッキリ」という遊び心が本書を貫く中、過去と現在を行き来しながら淡々とあぶり出されていく真実のカケラたち。

その断片が収束した先で決行される鮮やかで切ない「プロポーズ大作戦」は、エンドロールのその時まで、読者の胸を震わせ続けます。

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『名も無き世界のエンドロール』の概要

出典:Amazon公式サイト

タイトル名も無き世界のエンドロール
著者行成薫
出版社集英社
出版日2013年3月10日
ジャンルサスペンス・ミステリー

著者の行成薫は、2012年に『名も無き世界のエンドロール』(『マチルダ』改題)で、第25回小説すばる新人賞を受賞してデビュー。

本作は新人作家のデビュー作とは思えない、洒脱な文章と緻密な構成を持つ、最後の伏線回収も鮮やかな、匠の仕事を感じさせる秀作です。

2020年、本作の5年後が舞台の続編『彩無き世界のノスタルジア』が刊行。

2021年1月には、主人公キダ役に岩田剛典、主人公の親友マコト役に役に新田真剣佑を迎えて映画化もされた、今注目の作品です。

『名も無き世界のエンドロール』のあらすじ

本作は、異常なほどビビリ症のキダと、ドッキリを仕掛けることが生きがいのマコト、そしてヒロインのヨッチとリサ、4人の世界を描いた物語です。

突然いなくなったヨッチと、入れ替わるように現れたリサ。

リサの出現をきっかけに表社会でのし上がっていくマコト。

裏社会で頭角を現し、マコトを支えるキダ。

ラストの「プロポーズ大作戦」は、史上最大の名に恥じない衝撃と鮮烈さをもって決行されます。

過去①:キダとマコトとヨッチ

キダとマコトは小学校1年の時からの腐れ縁。

マコトがドッキリを仕掛けてはキダが「ふわあ」と驚く、という日々を送っていました。

小学5年になったとき、その二人の元に転校生として現れたのが、見事すぎる金髪の、澄んでいるのに底が見えない目をしたヨッチ。

親がいない「根っこのなさ」を共有する三人は、関わり合うほどに絆を深めていきます。

そしてその絆は、年月を重ねても何ら変わることはありませんでした。

中学卒業を間近に控えたある日、キダは海辺ではしゃぐマコトを見ながら、ヨッチの質問に答えてこう言っています。

「マコトと、ヨッチといるときが、一番生きてるって感じがするんだ」

「俺の世界は、三人で出来てる」

しかし、あるドッキリ作戦が計画されていた20歳のクリスマス・イブを境に、ヨッチは突然いなくなってしまいます。

過去②:社長令嬢リサ

高校卒業後、キダとマコトは二人揃って小さな板金塗装の会社で働き始めていました。

ある日その店に真っ赤な超高級車で乗り込んできたのが、社長令嬢のリサです。

裕福な家庭で育ったことがすぐにわかる身なりの良さで、背がすらりと高く、手足が長い美女。

しかし、ド級の我が儘娘で、このときも見事に破損した車を、親にバレないように直せと無茶苦茶な要求を堂々と押しつけてきます。

そんなリサに殊更興味を持った様子のマコトは、リサの前に突然ひざまずき、手から一輪の花を飛びださせるドッキリを披露。

花に括られた糸を引っ張ると万国旗が現れ、最後にぱんっと破裂音がする、という何ともクオリティの低いドッキリです。

リサが帰った後「金があればリサに近づけるかな」と言い出したマコトは、目標ができたとキダに言い残し、その日のうちに退職願を出して姿を消してしまいます。

現在:プロポーズ大作戦

マコトが姿を消した半年後に再会した二人。

キダは裏社会で「交渉屋」としての道を歩み始めており、マコトは「プロポーズ大作戦」のために金を稼ごうと腐心していました。

マコトの作戦に反対しながらも交渉屋として協力し始めるキダ。

そのお陰もあって、30歳になる頃には、マコトは八期連続大幅増益を達成するワインの輸入代行会社の社長として、確固たる地位を築くまでになります。

リサとは1年ほど前から深い仲です。

マコトの「プロポーズ大作戦」の準備はキダの協力の下、着々と進んでいました。

そして、31歳のクリスマス・イブ。

一世一代のドッキリ大作戦の幕がいよいよ上がることになります。

『名も無き世界のエンドロール』を読んだ感想

本書の中には読ませる仕掛けがたくさん施されています。

削ぎ落とされた文体と考え抜かれた構成、気の利いた小道具に見事な伏線の回収。

それらの技巧によって登場人物たちの想いがより増幅されて読者に伝わり、強烈に心揺さぶられる読書体験へと導かれていくことになります。

忘れられない愛情と友情

本書を貫く軸は「かけがえのない愛情と友情」です。

ジャンルとして括れば、「サスペンス・ミステリー」ですが、その実「純粋無垢な愛と友情の物語」でもあると思うのです。

ひどいいじめを受け、最後には無いもの扱いされて転校した経験を持つヨッチにとって、最も怖いこと、それは「忘れられること」「自分の存在自体が消える、消される」ことでした。

それを聞いたマコトはこんな風に言って、実際に行動にも移します。

「誰か傷つけたってことを忘れるやつとかムカつくだろ」

「今から前の小学校に、忘れんじゃねえよって言いに行く」

そしてキダも、こう言い切ります。

「たとえ世界中の人間がヨッチを知らないと言っても、俺とマコトだけは絶対に忘れることなんてない」

こういった愛と友情についての話をそのまま描いただけでは、ただの「きれい事の羅列」に終わってしまう可能性もあります。

しかし、この物語は純粋な愛情と友情を軸としながらも、それをサスペンス・ミステリーとして仕立てることで、ラストに訪れる衝撃の真実を、より深く切ないものへと昇華させているのです。

スマートで洒落た文体、前後する巧みな構成

本作は、現在と過去の複数地点を行き来しながら語られる物語です。

そのため、各地点でのエピソードが少しずつ交錯して語られる冒頭部分では、以後の展開は霧の中。

しかし、主人公キダとその親友マコトの間で交わされるテンポの良い洒落た会話は、同時に深い滋味も含みながら、読者の前に広がる霧を少しずつ払っていきます。

シンプルな語り口で淡々と明かされていく事柄に、読み手である私たちは、うっすらとした不安を感じ始めることに。

そして、グラデーションのようにだんだんと濃度が上がる物語の展開に合わせ、読者の不安も徐々に膨らんでいきます。

こうなったらもうページを捲る手を止めることはできません。

シンプルかつスマートな語り口、洒脱な会話や文章、そして過去と現在が次々入れ替わる巧みな構成。

それらがラストに待つ衝撃や切なさを、何倍にも増幅させていることは疑いようもありません。

「ドッキリ」がもたらす、切なく鮮やかなラスト

昔から周囲にドッキリばかり仕掛けていたマコトのことを、キダは「ドッキリスト」と呼称しています。

一方のキダは、ビビり症過ぎて、ヨッチに「ビビリスト」と言われる始末。

キダはマコトの仕掛けるドッキリにことごとく引っかかり、お決まりの「ふわあ」という声とともにいつも想像の上をいくリアクションを披露してしまいます。

このドッキリは冒頭からラストまで、そして過去から現在までをつなぐ重要な要素。

冒頭、いつものようにドッキリに引っかかったキダが「不愉快だ」と漏らしたのに対し、マコトは深く透明な瞳でこんなふうに言っています。

「おまえは不愉快なんじゃない。安心しているんだ。自分が確かに生きているって気付いて、安心している」

「生きてる、って感じ、するだろ?心臓がバクバクしてさ、顔とか手とか、熱くなってさ」

ある時には、「人間は希望の後に絶望を見ると怒りが湧くんだ、ドッキリとは逆に」と言ったこともありました。

そして、最後にキダの協力のもとにマコトが仕掛ける史上最大のドッキリ、「プロポーズ大作戦」。

その鮮やかさと切なさは、小さなドッキリが効果的に物語をつないでいたからこそより際立ち、読者の胸をこれでもかと打つことになるのです。

見事な伏線の回収、その先に待ち受けるもの

本書は、読み返し必須、読み返したくなること必至の作品です。

過去と現在が交錯する物語構成は、伏線の時系列も同時に交錯させ、伏線の張り巡らされ方をより緻密なものにしています。

それ故ラストでの伏線回収は、もはや見事としか言いようがありません。

ラストまで辿り着いた後は、あれもこれも伏線だったのか?と読み返さざるを得ず、何気なく読んだ文章にも重要な意味が含まれいたことに気付き、愕然とさせられます。

登場人物たちが、どの時点でどんな想いを持っていたのか、どんな葛藤を抱えていたのか、そのことが本当にわかるのは本書を読み返したときです。

そしてそれがわかったとき、読者はより大きな切なさや「さみしさ」を感じ、より強烈に胸を締め付けられることになるでしょう。

『名も無き世界のエンドロール』はどんな人におすすめ?

私は『名も無き世界のエンドロール』を以下のような方におすすめします。

そしてできれば、本書の中で重要な意味を持つ時期、クリスマス・イブに近い冷たい空気を感じながら読んでもらえたらいいな、と思います。

  • シンプルでスマート、知的でテンポの良い文章が好き
  • 「衝撃のラスト」「再読必至」「真の意味」などの言葉に弱い
  • 緊張感でページを捲る手が止まらず、切ない余韻が残る読書がしたい
  • 往年の名作映画のファン

本書のもともとのタイトルは『マチルダ』でした。

映画好きの方はお気づきかもしれませんが、マチルダとは映画『レオン』の中に出てくる女の子の名前です。

本書の中に、ヨッチが自分をマチルダになぞらえるシーンがあるのですが、その部分を読み、『マチルダ』は著者にとって、確かに本書の意味と内容を端的に表わすにふさわしいタイトルであったのだろうな、と感じました。

他にも本書の中には、チャップリンの『ライムライト』や、『理由なき反抗』、『フォレスト・ガンプ』といった名作が重要な意味を帯びて登場します。

本作は、名作映画とともに楽しんでほしい作品でもあるのです。

おわりに|物語、そしてエンドロールの終わりにある世界

ヨッチは本書の中で、映画についてこんな風に語っています。

「どんな映画でも必ず終わって、結局独りになるのが嫌」

「だからエンドロールは重たい気分のままずーっと見る。」

「でももうほんとに物語がすべて出し尽くすのを最後まで見たら、あたしはあたしの物語を生きなきゃ、って気になるんだよ。」

これは小説でも同じですよね。

むしろ小説世界の方が想像力や妄想力で没入しやすく、はじき出される孤独感も強いような気もします。

でも、「自分の物語を生きなきゃ」という気になるところも同じかそれ以上だと思うのです。

この物語がそこにあったということは忘れない。

けれど今は自分を生きるために、近くのファミレスでナポリタンでも食べようかな。

本書はまさにそんな気分になれる物語だと、私は思っています。

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