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『愛人(ラマン)』感想|乾ききった環境下で心だけ成熟した少女が初めて与えられたまっすぐな愛

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『愛人(ラマン)』は青春小説です。

タイトルから、『不倫』『悦楽』『パパ活』等連想されてワクワクされるかもしれませんが、本作はそれらキーワードにさらりと触れつつも、切なさと瑞々しさが随所に散りばめられています。

死と孤独がはびこる環境の中で、もがくことをやめ、背を向け、裏切り、それでも消えることのない愛に気づいたとき、固く閉じた少女の心はどのように変化するのか?

当時七十歳の著名女流作家マルグリット・デュラスが、若い作家のためであるはずのゴンクール賞を与えられ話題をかっさらった、渾身の自伝的小説。

著:マルグリット・デュラス, 翻訳:清水徹
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『愛人(ラマン)』の概要

出典:Amazon公式サイト

タイトル愛人(ラマン)
著者マルグリット・デュラス
出版社河出書房新社
出版日1992年2月4日
ジャンル自伝的恋愛小説

ある出来事が引き金となり、狂気と絶望に捕らわれてしまった母、猟奇的な上の兄と病弱で泣き虫な下の兄。

異様な家庭環境で育った「わたし」は、満たされぬ愛を生涯つづり続けたデュラスの、記憶の中の「自分」なのでしょう。

しかし、本作は『私小説』の枠では収まらない芸術性に溢れています。

デュラス自身も、どこまでが現実だったか明言していません。

ノンフィクションと純文学を同時に味わえる作品です。

『愛人(ラマン)』のあらすじ

仏領時代の南ベトナムを舞台に、十五歳の少女がリムジンに乗った中国人青年と出会い、途方もない飢えをぶつけ合う。

言葉や態度で青年を裏切り続ける「わたし」の感情はほとんど描かれておらず、対して青年は真正面から受け止め、傷つき、会うたびに生命力を失ってしまう。

年齢も地位も国籍も足蹴にした奇怪な愛は、時を超えていまなお新鮮さが漂います。

豊かな暮らしを求めて

フランス領だったインドシナへ移住したフランス人一家は、度重なる不幸に見舞われ困窮する。

思い描いた未来とはほど遠く、殺意に近い緊迫感が主人公の家族を日常的に包み込みます。

本書では、『死』の文字が「わたし」から肉親すべてへ送られています。

自我を殺して生きる少女

到底まともな精神で暮らせる環境にいない「わたし」は、将来作家になってこの出来事を本に記すと誓う。

その野心が唯一の強みであり、支えだったのでしょう。

夢を語るとき、そして親友のエレーヌ・ラゴネルと過ごす時間以外は、光を見い出せず心を閉ざします。

無垢な愛を拒絶する心

アダルト・チルドレンだと理解している「わたし」は、この先も愛を感じる心はない、という姿勢を貫く。

一方、初めて胸の高鳴りを覚える愛に出会ってしまった青年は、流されながらも少女と一緒になる方法を探し求める。

青年の想いは、報われないまま終わるのでしょうか?

『愛人(ラマン)』を読んだ感想

映画化された本作をDVDで鑑賞したことがきっかけとなり、本書を手に取りました。

語り文がとても芸術性を帯びていたので、原作は本だとすぐに気づきました。

少女に翻弄される青年

前述した通り、主導権を握るのは十五歳の「わたし」です。

青年にとって(本当の意味の)初恋であることは明らかで、「わたし」は瞬時にそれを見抜き、青年を出し抜こうとする浅ましさを持ち合わせています。

『愛人』とは、「わたし」にとっての青年に他なりません。

品格ではなく生身の反骨心

教育に良さそうなキャラクターは登場しませんが、主人公を見ていると懐かしい匂いも感じました。

傷つきやすい心を隠し、偽った自分を正当化するように牙をむく。

小さな自分を保つために、誰しも身に覚えのある葛藤が蘇るのではないでしょうか。

思い返しながら語られる物語

短いエピソードがたくさん盛り込まれ、物語の色を濃くするとともに時系列を惑わす。

文章をつづりながら思い出した事柄を、ありのままに記しているかのようです。

著者の潔さが現れているのだと感じます。

『愛人(ラマン)』はどんな人におすすめ?

『愛人(ラマン)』はこのような方におすすめです。

  • 一途な恋愛小説が読みたい
  • 仏領インドシナの生活が興味深い
  • 読み応えのある純文学に触れたい

とことん掘り下げた心理描写が特徴的な作品。

歩速の遅い繰り返し文のような描写は一切なく、「痛い」と感じるほど深い部分まで刃先が侵入することでしょう。

ひとりの少女の深層心理に触れたい方、骨のある人生の追体験をしたい方におすすめです。

また、一人称語りが多いので、これから読書数を増やしたい方でも読みやすい作品です。

おわりに

十五歳の少女と中国人青年の『愛人』関係に驚き、興味を持つ方も多いのではないでしょうか。

しかし本作は、よくあるこじれた恋愛話だと簡単にいい換えられる作品ではないのです。

淡々と語られる時代背景の壮大さ、死がとなり合わせという絶望感、その中で見え隠れする傷つきやすい愛情。

読んだ人だけが出会える新たな情感は、きっと心身を熱くするはずです。

ぜひ一度、デュラスの世界に身を投じてみて下さい。

著:マルグリット・デュラス, 翻訳:清水徹
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