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『掏摸』感想|なぜスリなのか?強固な世界に抗うということ

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2005年『土の中の子供』で芥川賞を受賞した著者は、この作品で2010年大江健三郎賞を受賞します。

そして『掏摸』はアメリカをはじめ各国で翻訳され、米誌「ウォール・ストリート・ジャーナル」で2012年年間ベスト10にも選ばれています。

各国で評価され、また著者・中村文則の転機ともなったと評されるこの作品。

著者は主人公を「自分の分身」とまで言い切っています。

それはどういう意味なのでしょうか。

緻密に構成された作品を読み解くと、その意味が分かるような気がします。

著:中村文則
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『掏摸』の概要

出典:Amazon公式サイト

タイトル掏摸
著者中村文則
出版社河出書房新社
出版日2009年10月
ジャンル純文学

『掏摸』の冒頭は以下のようなります。少し長くなりますが引用します。

「まだ僕が小さかった頃、行為の途中、よく失敗をした。

混んでいる店内や、他人の家で、密かに手につかんだものをよく落とした。他人のものは、僕の手の中で、馴染むことのない異物としてあった。本来ふれるべきでない接点が僕を拒否するように、異物は微かに震え、独立を主張し、気がつくと下へ落ちた。遠くには、いつも塔があった。霧におおわれ、輪郭だけが浮かび上がる、古い白昼夢のような塔。だが、今の僕は、そのような失敗をすることはない。当然のことながら、塔も見えない。」

印象的な書き出しで、主人公の生き方や世界観が暗示され一気に引き込まれます。

なお、この冒頭部分が物語全体を規定することになります。

主人公の一人称による独特の感覚的な文体。

サスペンス調の手に汗を握る展開。

そしてこの著者ならではの深いテーマ性。

随所に意識的に配されたドストエフスキーの言葉にも興味が尽きません。

それでは、簡単に内容を見ていきましょう。

『掏摸』のあらすじ

天才的な腕をもつスリ師の「僕」は、スリ仲間の石川(新美)とともに、闇社会の支配者・木崎によってある大がかりな犯罪に加担させられたという過去を持ちます。

しばらくは東京を離れていた主人公が再び東京に戻った時点から物語は始まります。

行動をともにしていた石川は行方不明で、おそらくもう生きてはいない……。

今は孤独に一人でスリをして生きている彼。

登場人物

  • 主人公:天涯孤独なスリ師。作中で一度だけ「西村」という本名が明かされる。
  • 子供:売春婦の母親に万引きを強要されている。
  • 木崎:闇社会の支配者のような男。
  • 石川(新美):主人公のかつてのスリ仲間。
  • 佐江子:主人公のかつての恋人。自殺した。

子供とその母親との出会い

裕福な人間ばかりを狙ってスリをする主人公。

彼は偶然にある母子と出会います。

子供はスーパーで母親の指示で万引きをはたらいています。

この行為が店にばれていることに気付いた主人公は、見ていられずに母子に声をかけました。

そして売春婦である母親と関係を持つかたわら、子供の姿に過去の自分を重ね合わせ面倒を見るようになっていきます。

木崎との再会と三つの難題

ある裕福な男を見かけた主人公は、子供に服でも買ってやろうかと男に近づき逆に手をつかまれてしまいます。

それは木崎でした。

再会した木崎は主人公に三つの難題をつきつけます。

逃げればあの母子を殺す、失敗したらお前を殺す……。

主人公はやむなくその命令にしたがい、スリの技術を駆使しながら知恵をしぼって仕事をやりとげます。

物語の後半は主人公が三つの難題をこなしていくスリリングな展開。

そして難題をクリアした主人公を待ち受けていた「運命」とは?

『掏摸』を読んだ感想

この物語を読むと、不思議に感じるポイントがいくつかあります。

ここでは、

  • 主人公にとってスリとはどういう行為なのか
  • 主人公の運命を握ろうとする木崎とはどういう存在なのか
  • 主人公が見る遠くの塔が意味するものは何か

この三点にわたって私が考えたことを記したいと思います。

「スリそのものになる」とは?

主人公は親も身寄りもなく施設で育ちました。

けれど、彼はその悲惨な境遇のためにやむなくスリになったというわけではありません。

彼が自分の子供の頃を回想するシーンがあります。

「世界は硬く、強固だった。あらゆる時間は、あらゆるものを固定しながら、しかるべき速度で流れ、僕の背中を押し、僕を少しずつどこかに移動させていくように思えた。だが、他人の所有物に手を伸ばす時、その緊張の中で、自分が自由になれるような気がした。自分の周囲を流れるあらゆるものから、強固な世界から、自分が少しだけ外れることができるような、そんな感覚を抱いた。」

小学校でクラスメイトの時計を盗み、わざと落として「泥棒」と言いたてられる主人公。

「皆に押さえつけられ、恥の中で、僕は染み入るような、快楽を感じていた。光が目に入って仕方ないなら、それとは反対に降りていけばいい。……」

彼があたえられた世界は「硬く、強固」なものでした。

人のものを盗むとき彼は、否応なく自分を圧迫し脅かす世界から「外れることができる」ように感じます。

彼にとってスリとは世界と対峙するなかでそれに抗い「自由になる」ための手段だったのです。

そして最後に、木崎によって瀕死の重傷を負った彼は考えます。

「スリとしての自分をさらに推し進め、スリそのものになり、火花のように、自分は人混みの中に溶け、砕けていくまで動き続ける」のだと。

それが生き延びる意志へと転化したとき、遠くに人の声がします。

主人公のポケットのなかには、誰かから取った500円硬貨が。

「あの男はスリを甘く見たのだ」

彼はそのコインを、助けを求めるべく通行人に投げつけます。

「人影が見えた時、僕は痛みを感じながら、コインを投げた。血に染まったコインは日の光を隠し、あらゆる誤差を望むように、空中で黒く光った。」

そこで、物語は終わります。

木崎の存在の意味するものは?

闇社会の支配者のような木崎は単なる「悪」ではありません。

ある貴族が奴隷の青年の人生を自分の予定通りに支配しそして惨殺したたとえ話をしながら、木崎は主人公に語ります。

「その貴族は味わっているだけだ。人生から得られるものを。余すことなく。

……他人の人生を、机の上で規定していく。他人の上にそうやって君臨することは、神に似てると思わんか。もし神がいるとしたら、この世界を最も味わってるのは神だ。俺は多くの他人の人生を動かしながら、時々、その人間と同化した気分になる。彼らが考え、感じたことが、自分の中に入ってくることがある。複数の人間の感情が同時に侵入してくる状態だ。お前は、味わったことがないからわからんだろう。あらゆる快楽の中で、これが最上のものだ。……」

単に残虐な悪の存在を描くだけなら、木崎をこれほど特異な人物として描き出す必要はないでしょう。

木崎は自らが語るように主人公にとっての「神」であり「運命」であり、そして主人公がそれまでの人生で対峙してきた「硬く、強固な世界」の象徴なのではないでしょうか。

「塔」は何を意味しているのか?

それでは作中にたびたび描かれる「塔」は何を表しているのでしょうか。

その塔は、いうまでもなく彼の幻影です。

私にはそれが、親もなく身寄りもない孤独な彼が見出した『おのれを見る存在』、つまり木崎とは別の意味での神のように思われるのです。

彼は子供の頃いつも塔を意識し、それから逃れるために盗みを続けます。

小学校で盗みを意図的に発覚させた主人公は「今こそ、あの塔は、僕に何かを言うだろう」と考えますが、「塔はなおも、美しく遠くに立つだけ」でした。

「恥の中で快楽を感じた僕を、肯定も、否定もすることなく」塔はずっとそこに立ち続けています。

「あらゆる価値を否定し、あらゆる縛りを虐げる行為」としての盗み、やがてそこに「緊張」と「暖かで確かな温度」と、そして「快楽」を見出していく主人公。

やがて塔は見えなくなりますが、主人公はつねにそれを意識しています。

そして最後にコインを投げるとき、彼はふたたび遠くに高く立つ塔を見出すのでした。

『掏摸』はどんな人におすすめ?

『掏摸』は、こんな方たちにおすすめです。

  • 哲学的な小説を読みたい方
  • はらはらとするサスペンスが好きな方
  • オープンエンディングに惹かれる方

主人公がスリをするシーンはドキュメンタリーを思わせる緊密な描写。

後半の展開はサスペンス・タッチでスリリング。

そして読者に考えることを要求する深いテーマ性。

主人公の生死をあえて明らかにしないエンディング。

『掏摸』はいわゆる純文学の枠を超えて楽しめる小説になっています。

ぜひ、ご一読ください。

おわりに

最後に、少しうがった見方をします。

それは、木崎の語る「快楽」とは作家の味わう「快楽」そのものではないかということです。

「俺は多くの他人の人生を動かしながら、時々、その人間と同化した気分になる。彼らが考え、感じたことが、自分の中に入ってくることがある。複数の人間の感情が同時に侵入してくる状態だ。」

作家である中村文則が、作家である自分を意識しないで木崎にこの言葉を語らせたとは思えないのです。

では、主人公はどうか。

はじめに述べたように、著者は「主人公は自分の分身」とまで語っています。

私はこれを、主人公が「スリとして生きる」ということは、著者自身が「作家として生きる」ということと同じ意味を持つということではないかと思うのです。

この硬く強固な世界から、自分を少しだけ外す行為、自由を求める行為、そして抗う行為。

それは主人公の生き方であり、作家自身が世界に向き合う姿勢そのものなのではないでしょうか。

この作品における木崎と主人公との構図は、現代世界に生きる著者の作家としての二面性をも暗示しているように思われるのです。

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