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『アラビアの夜の種族』感想|豊饒な文章に耽溺できる、虚実めくるめくアラビアンナイト

奇想天外な発想でジャンルボーダレスな傑作を生み出し続ける古川日出男さん。

『アラビアの夜の種族』は彼の最高傑作とも言える大長編。

聖遷暦1213年のエジプト・カイロを舞台に、美貌の奴隷アイユーブが、無敗将軍ナポレオンの目を欺く偽書作りに奔走します。

はたしてアイユーブの企みは成功するのでしょうか?

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『アラビアの夜の種族』の概要

出典:Amazon公式サイト

タイトルアラビアの夜の種族
著者古川日出男
出版社角川書店
出版日2006年7月25日
ジャンル歴史ファンタジー

『アラビアの夜の種族』の作者である古川日出男さんは、1994年に伝説的RPG『ウィザードリィ』のノベライズでデビューしました。

2002年、本作『アラビアの夜の種族』が第55回日本推理作家協会賞と第23回日本SF大賞を同時受賞します。

『アラビアの夜の種族』は全三部に分かれた大作で、それぞれテイストが違います。

邪悪な魔術師アーダムの成り上がりを描いた第一部。

アルビノの美青年ファラーと高貴な血筋の捨て子サフィアーンの生い立ちに焦点をあてた第二部。

3人の物語が合流し怒涛のクライマックスに結実する第三部。

どれも読みごたえたっぷりで、物語に溺れる至福の時間を味わえます。

アイユーブ視点の現実の話と、彼が召喚した語り部・ズームルッドが紡ぐ物語が、交互に展開されていくのも本作の特徴ですね。

かたやナポレオン率いる軍隊が首都を脅かし、かたや怪物が蠢く巨大な地下迷宮で剣と魔法の冒険がくり広げられ、史実と虚構が並行して語られるうちに、どちらが嘘で真かわからなくなるのが快感でした。

『アラビアの夜の種族』のあらすじ

聖遷暦1213年のエジプト、カイロから物語は幕を開けます。

当時のカイロは12人の知事に統治されていました。

そんな中、フランス出身の若き将軍・ナポレオンがイスラムの制圧に乗り出します。

他の知事たちはナポレオンの実力を侮り、カイロは末永く安泰だと楽観視していましたが、先見の明があるイスマーイール知事は不安を隠せません。

そこでイスマーイールは腹心の奴隷・アイユーブに相談、ナポレオンの進軍を止める策を練ります。

ファラーが主に提案した作戦は、読む人全てを虜にする偽書を作り上げ、それをナポレオンに進呈するというとんでもないものでした。

偽書作りに招かれた者たち

アイユーブはただちに偽書作りに不可欠な人材を駆り集めます。

アイユーブの手引きにより達筆で知られる職人や装丁の専門家、膨大な量の物語を記憶している語り部など、その道のプロフェッショナルが揃い踏みし、世界にただ一冊の書物を作り上げていきます。

邪悪で醜い魔導師の下剋上

語り部・ズームルッドは、遥か昔にアラビアに存在した偉大な魔導師、アーダムの生い立ちを諳んじます。

アーダムは王族の出身でしたが、その醜さ故に実の親にも疎まれ、到底無理な任務を押し付けられた挙句辺境へ追いやられてしまいました。

しかしアーダムは類い稀なる魔術の才と悪辣な計略を駆使し、他国を乗っ取った末、蛇のジンニーアと組んで祖国に復讐を果たします。

物語に取り憑かれた人々の末路

自分を疎んじた父王を廃し、祖国の支配者に返り咲いたアーダム。

その野望と欲望はとどまるところを知らず、ジンニーアを師と仰いで魔術の真髄を極めた後は、魔物が跳梁跋扈する地下の洞窟を掘り進めて一大迷宮を築き上げました。

ところが、アーダムとジンニーアの蜜月には突然終止符が打たれました。ジンニーアに利用されていると気付いたアーダムが逆上し、彼女に歯向かったためです。

夜毎ズームルッドが紡ぐ荒唐無稽な物語は、聞き手に徹するアイユーブやイスマーイールすらも虜にし、次第に彼らの正気を失わせていきました……。

『アラビアの夜の種族』を読んだ感想

『アラビアの夜の種族』では、アーダムやサフィアーン、ファラーの胸躍る冒険が描かれます。

灼熱の太陽が輝く砂漠や、冒険者が集って発展した地下迷宮の描写には、そこで暮らす人々の息遣いまで感じられワクワクが止まりません。

剣と魔法の冒険活劇に注目

登場人物も文句なく魅力的です。

地下迷宮の最奥に封印されたアーダムと、彼を倒して名誉と姫を手に入れようと夢見る冒険者たちの戦いは手に汗握る大迫力。

アーダムは笑ってしまうほど強く、挑戦者をちぎっては投げちぎっては投げの無双が続きますが、地下迷宮に君臨するラスボスもかくやの彼が、ファラーとサフィアーンの共闘でジリジリ力を削られ追い詰められていく展開は、王道少年漫画のテンションでとても熱いです。

衝撃の結末がもたらす哀切な余韻

魅力的なキャラクターといえばもちろんアイユーブも忘れてはなりません。

終盤のどんでん返しで彼のとんでもない秘密が明かされるのですが、全てを知った時はため息しか出ませんでした。

万能の奴隷としてイスマーイールの信頼を得、一身に寵愛を享けたアイユーブもまた、黒幕に利用され歴史に翻弄された犠牲者でした。

そんな彼がラストで叫んだセリフには涙がこみ上げてきます。

エジプトの知られざる政治の現場

最後に挙げるおすすめポイントは、知られざるエジプトの政治形態です。

当時のエジプトは奴隷上がりの軍人や政治家が権力を持っており、国家への貢献や実力を認められれば、自分もまた奴隷を育てることができました。

その一方知事同士の権力争いも激化し、敵にスパイを送り込むのは日常茶飯事。

権謀術数が渦巻く政治の現場にハラハラしました。、

『アラビアの夜の種族』はどんな人におすすめ?

『アラビアの夜の種族』はこんな方におすすめです。

  • アラビアンナイトの世界観が好き
  • 剣と魔法の大冒険を堪能したい
  • エジプトの歴史に興味がある

世にファンタジー作品は多いですが、アラビアが舞台の小説は珍しいですよね。

本作はナポレオンの脅威が忍び寄るカイロの日常に、イスラムの文化や風俗を瑞々しく織り交ぜており、当時の空気を肌で感じることができます。

豊穣で饒舌な文体は癖と灰汁が強く、慣れるまで少し大変ですが、一旦免疫ができてしまえば文章に身を委ねるのが快感。

ズームルッドの語る物語の世界に、アイユーブたちと一緒に取り込まれてしまうような、極上の感覚を追体験できますよ。

おわりに

『アラビアの夜の種族』には物語に溺れる醍醐味が凝縮されています。

退屈な日常に嫌気がさしている人は、麻薬のような中毒性の虜になってしまうかもしれません。

また、本作では「騙しの美学」にも注目してください。

巧みな構成に仕掛けられたどんでん返しは、きっとあなたの度肝を抜きます。

どこまでが虚構で現実か、最終的な解釈が読者に委ねられるのも憎いです。

長いので最初は躊躇しますが、騙されたと思って読んでみてください。

後悔はさせません。

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