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『夜は短し歩けよ乙女』感想|青春は妄想でできている。京都だからおこりえる物語

誰もが訪れてみたいと思う、京都。

古い町並み、歴史ある建造物、そこを歩くだけで不思議と愉快な気持ちになる場所。

日本だけれど、そこだけは、まるで別世界のような佇まい。

そう思うのは、きっと私だけではないはず。

天狗が酒を飲んでいようと妖怪が出ようと、大学が美青年に支配されていようと、京都だから、そんなこともあるのかもしれないと不思議と納得してしまう。

読み終えた私は、すぐに夏の飛行機を予約し、京都の夜を黒髪の乙女のように歩くと決意しました。

妄想と現実がぐるぐると巡る、京都の町を舞台にした青春恋愛ファンタジーです。

黒髪の乙女のセリフ、

こうして出逢ったのも、何かの御縁。

『夜は短し歩けよ乙女』もそんな風に思って、ぜひ読んでみてください。

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『夜は短し歩けよ乙女』の概要

出典:Amazon公式サイト

タイトル夜は短し歩けよ乙女
著者森見登美彦
出版社角川書店
出版日2006年11月29日
ジャンル青春恋愛ファンタジー

『夜は短し歩けよ乙女』は、2007年山本周五郎賞を受賞。

著者の森見登美彦さんは京都大学を卒業されているので、京都のことに詳しく、作品の舞台も京都であることがほとんどです。

妄想と現実を行ったり来たりするような、独特の世界観がとても不思議で面白い。

今作の主人公は、黒髪の乙女に恋をする、しがない大学生。

彼女に振り向いてもらうため、なるべく、かのじょの、めにとまる、の「ナカメ作戦」を実行する残念な青年です。

対する黒髪の乙女は、気の向くままに面白いことへ歩き続ける一風変わった女の子。

赤玉ポートワインを浴びるように飲み、古本市へ向かい、学園祭でも大活躍。

はたして青年は、好奇心旺盛な乙女の歩くスピードに追いつき、振り向いてもらうことができるのでしょうか。

2017年、湯浅政明監督によってアニメーション映画化された、現在も多くのファンを持つ作品です。

『夜は短し歩けよ乙女』のあらすじ

クラブのOBが結婚することになり、そのお祝いの席へ呼ばれた本名不明の青年。

もちろん目当ては、同じクラブの後輩である黒髪の乙女です。

二次会に行かず、夜の木屋町から先斗町界隈へ向かった乙女を、好機とばかりに追いかけます。

乙女、酒を飲んで夜を歩く

そんなこととはつゆ知らず、乙女はひとりでバーへ。

太平洋の海水が、全てラムであればよいのにと思うほどの、底なしの酒豪の乙女。

偶然出会った、錦鯉を育てているらしい東堂と酒を飲みます。

そんな、セクハラしてきた東堂を叱りつけたのは、凛々しい眉の背が高い女性、羽貫。

その連れの樋口と名のる男性は、色褪せた浴衣を着て、職業が天狗だという。

不思議なふたりに連れられ、関係のないサークルの宴に入り込み、タダ酒を楽しみます。

飲んでも飲んでも酔わず、無限に飲み続けることができる乙女は、金貸しの李白という人物と飲み比べをすることに。

しかも、セクハラ親父の東堂の借金を賭けて。乙女はとても人好きなのです。

不思議な三階建電車の中で、偽電気ブランと呼ばれるお酒を、にこにこ笑いながら呷ります。

見事勝利した乙女は、抱きついてきた東堂を、愛に満ちた通称おともだちパンチをふるい、撃退したのでした。

その間、乙女を追いかけていた青年は彼女とすれ違い……。

乙女、絵本を探して古本市を歩く

次に乙女が歩いているのは、糺ノ森で行われている下鴨納涼古本まつり

そこで再会した羽貫と樋口。古本市には神がいると教えられた乙女。

そして不意に、昔読んだ汽車の絵本を思い出します。

その名もラ・タ・タ・タム。

乙女は絵本の捜索を始め……。

一方、青年も乙女のために、ロマンチック・エンジンをフル稼働して絵本を捜索。

妖怪のような少年に振り回されたり、火鍋を食べたり。

絵本を乙女が見つけ、ようやく少し会話を交わすことができた青年でした。

乙女、主演女優をして学園祭を歩く

秋がきて、乙女は大学の学園祭を背中に緋鯉のぬいぐるみを背負って歩いています。

その頃、青年は、男にはもったいないほどの美貌の持ち主である学園祭事務局長に会いに。

韋駄天コタツという神出鬼没の連中。

偏屈王のゲリラ演劇。パンツ総番長という異名を持つパンツを穿き替えない男。

困った学生たちに手を焼く事務局長の姿を見ました。

そして何と、偏屈王の舞台には乙女の姿が。

乙女、風邪が流行る中、見舞いに歩く

世間は風邪の流行る冬。

風邪しらずの乙女は、これまで出会った人々のお見舞いに歩きます。

卵酒を作り、弱っている人を励まし……。

もちろん青年も風邪をひき、頭の中の多数の自分が議論を始める始末。

ようやく乙女は青年のもとへ。

現実か妄想か、京都の町を飛んで回る乙女と青年。

風邪が治り、ふたりが、喫茶店で待ち合わせをしているところで物語は幕を閉じます。

『夜は短し歩けよ乙女』を読んだ感想

始めは、ファンタジーと意識せず読みました。

するとどうでしょう。現実の京都の世界なのに、どこかおかしい。

ふわふわしながら読み進めると、抜け出せないくらい、この世界にはまっていました。

京都だから、これくらい起きても不思議ではないな、と思い始めたらもう、この世界の仲間入り。

理想の京都

京都は他県からも憧れの存在です。

乙女が歩く京都の町は、実在する場所が多く出てきます。

先斗町や下鴨神社、京都大学に、今出川通にある喫茶店、進々堂。

物語の世界のような場所が、物語に登場するという奇跡。

実際に訪れたことがありますが、今にも乙女がひょこっと出てきそうなところばかりでした。

現実にある不思議な都を舞台にしたからこそ、この場所ならありえるかもしれないという心がうまれるのでしょう。

個性のやりたい放題

乙女と青年、このふたりがまず濃い人物です。

乙女は面白いものを求めて、歩き回り、可愛い顔してぐいぐいとグラスを傾けます。

彼女自体が面白すぎて、周りの人の面白いが、普通に感じるほど。

いやいや待てよ、と妄想の中から戻るのが、まあ大変。

乙女に恋する青年は、自分がまとものように思っている節がありますが、

残念で不憫で、けれども愉快な男です。

このふたりの世界に登場する人々は、会ったら3度見くらいはしたくなる面子ばかり。

大酒飲みの羽貫、空を飛ぶ天狗の樋口、願をかけてパンツを穿き替えないパンツ総番長、

女装が似合いすぎる学園祭事務局長、竜巻を起こすほどの風邪をひいた李白。

それぞれがやりたい放題。

しかし、乙女はそんな彼らを全く不思議に思いません。

どこから突っ込んでよいやらと思っているのが、馬鹿らしい。

それと同時に、彼らと実際に話してみたいと思わずにはいられなくなるのです。

飛び出す飛び出す、パワーワード

あらゆるところに、声に出して読みたくなる言葉が出てきます。

人生のためになる、とか、これは深い、とかそんなことは思いません。

気がつくと、何度もその言葉を繰り返しているのです。

唐突に逃げ出した自分は、彼女の目にどう映っているであろう。よほど理解不能のヘンテコ野郎と思われたに違いない。

「恥を知れ! しかるのち死ね!」

乙女のために絵本を探した青年は、立てた計画を恥じ、自分を罵倒します。

あまりの自意識に思わず爆笑。

私も、何か失敗をしたとき、心の中でこの言葉を呟いています。

「そんなにパンツを穿き替えないで、人類は生きていけるものでしょうか?」

「てきめんに病気になりました」

総番長は人なつこい笑みを浮かべました。「しかし、どっこい生きている」

乙女の尋ね方も、どこかずれていて面白いのですが、どっこい生きている、の言葉の威力に笑い転げました。

なんとくだらなく、想像力豊かなことでしょうか。

悩みなんて吹き飛んでしまいます。だって私たちは、いつでも、どっこい生きているのですから。

「その前に聞きたい。結末はどうなる。ハッピーエンドか? アンハッピーエンドか?」

パンツ総番長が口籠もったので、私はその胸をぐいと押した。

「分かったよ」

パンツ総番長は呻いた。「ハッピーエンドだ。誰もが赤面することうけあいだ」

「それでよし!」

乙女が偏屈王のゲリラ演劇をしていることを知って、青年は、相手役を買って出ます。

その結末を聞いた場面なのですが、会話のテンポが良すぎる。

誰もが赤面するハッピーエンド、純粋に見てみたい。

そして必死な青年を応援したくなります。

これほど愉快に空回りできる人生、きっと楽しいだろうなと本気で思いました。

『夜は短し歩けよ乙女』はどんな人におすすめ?

不思議な京都で起こったこの物語を読むなら、

  • ひそかに想いを寄せている人がいる
  • 京都へ行く予定がある
  • 現実を忘れて、不思議な体験がしたい

こんな人はぜひ、手に取ってみてください。

私は、読んでから京都へ行きたくて、居ても立っても居られなくなりました。

好きな人に想いを伝えられない人は、この物語の青年を見て、彼が頑張っているなら、と動き出せるかもしれません。

そして、読後は、地に足がつかないような、ふわふわとした愉快な気持ちに包まれることだと思います。

おわりに

私は、この作品を読んで、夏の京都へ。

下鴨納涼古本まつりへ行くためです。

あの場所で、乙女のように本を探して歩こう、と想像していました。

しかし、当日、雨天のため中止に。

ちくしょう、と青年のように地団駄を踏む私。

それでも、巡った京都は、想像以上に不思議で、心地良く、乙女がその辺を歩いているのではないかと何度も思いました。

御縁が合って訪れた京都、今思い出すと、何故だか、古本まつりを歩いたような気になっています。

こんな場所で、どういう本があって、という所まで想像できる。

現実なのか妄想なのか、作品の主人公のように不思議な体験をした私は、きっとまた京都の町を訪れることでしょう。

青春は、妄想の塊です。

そして、京都でしかありえないこの物語を、ぜひ一度読んでみてください。

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